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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第5話

 

 その後スモーキーは自分が知っている知識を惜しげもなくジョージに伝える。夜がふけていくが2人とも時間を忘れた様に話あっていた。スモーキーが話をし、ジョージが質問する。それに対してまたスモーキーが答える。認め合った者同士の会話だ。


「次の街まで約1ヶ月。そこから次の街もまた1ヶ月程かかるんだな」


「そうだ。それで100%そうだとは言い切れないが、今俺たちがいるここの街を含めてこの3つの街。その周辺は山の中も含めて相当の数の迷い人が調べている。調べ尽くしていると言ってもいいだろう。もちろん強い魔獣がいるエリアもチームを組んで乗り込んでいる。この3つの街では金策と自分自身の戦闘スキルのアップに絞った方が良いかもしれないな」


 そこにはゲートは無いだろうと言うスモーキー。


「ゲートの場所が移動する可能性は?」


「1年に1度は迷い人がやってくる。そうそうゲートの場所が移動するとは思えない。それなら完全に神の意地悪だ。そこまで性悪じゃないだろうと信じたい」


 そうでなくても広大な広さのこの世界だ。それはないだろうと言っている。


「分かった。でもそうなると今まで何十年もの間、延べ何万人という迷い人がこの世界でゲートを探してまだ見つかっていないというのはどう言うことなんだろう」


「それについては俺も考えたことがある。なあ、ジョージ。ゲートと聞いてお前はどんな形を想像した?」


 スモーキーがジョージに質問してきた。


「2本のポールが立っているとか、俺が住んでいた日本なら鳥居の様なものとか、とにかくその間や下を通り抜けられるものだ。女神もゲートを潜れば試練が終わると言っていた」


「俺もそうだ。ただ本当にその形をしてるのだろうか。もっと違う、思いもしない形をしているかも知れないぞ。或いはある角度から見るとそれがゲートに見えるとか。そう言うものの可能性もあるんじゃないか」


 思い込み、固定概念は捨てた方が良いというスモーキー。確かにゲートと言って思い出す形のものをこの世界で探す物だと無意識のうちに決めつけていた。


「あともう一つ、人工物じゃないという見た目をしている可能性もあるぞ」


「なるほど。それもあり得る話だ。自然の物に似せて作られているということだな」


 イギリスにストーンヘンジというのがある。石が積まれてその上に横に石が置かれている遺跡だ。見方によればゲートに見える。あんな風に自然の石に似せて作られているという可能性もあるということだ。


「あとは、俺が諦めた砂漠に面した街、それよりもさらに南のエリアのどこかにある」


 その可能性が最も高そうな気がする。


 ジョージのグラスが空になるとビールを継ぎ足してくるスモーキー。


「金はないぞ」


「これは俺の奢りさ、ところでジョージはこの世界で誰かと組んでゲートを探すつもりはないんだろう?」


「今のところはな。装備の件もあるし、ソロで動くつもりだよ。それにあんたから魔法袋ももらった。バレないためにはソロしかないよな」


 笑いながらそう言ったジョージ。


「チームを組んで動いている奴らも大勢いる。俺の時もいたよ。死ぬ前からの知り合いなんてのはここにはいない。あの洞窟で初めて会って一緒に組むかって始まったチームが多い。仲間割れ、喧嘩別れなんてしょっ中あった。チームを組んでるのはお互いがお互いを利用しようとして組んでる。最後の最後はそいつをほったらかして自分だけってのが多い」


 そう言ってからスモーキーは特にやばい連中の出身国をジョージに告げる。


「今言った国々の連中、100%そうだとは言わないがそれに近い数字くらいやばいのが多い。女もしかりだ」


「分かった。できるだけ接点を持たない様にする」


「日本人は人が良過ぎる。騙されやすいから気をつけろ。向こうから近づいてきたらかなりやばいと思っとけ。まぁジョージは自分でも捻くれ者だと自覚しているからいきなり騙されることはないだろうが。ただな、気をつけろ、お前の装備品狙いで殺しにくることもあるぞ」


 流石にそこまでは無いだろうと思っていたが、スモーキーの目は真剣だ。


「街の中で気を付けるのはスリ、強盗だ。宿に泊まっても部屋には何も置くな。そして街を出るとそこは無法地帯になる。殺人なんて日常茶飯事だと思った方がよい」


 スモーキーによると迷い人がこの世界で命を落とすケースは魔獣にやられる事が一番多いがその次に多いのが同じ人間にやられるケースだという。


「俺は何度もそう言う場面に遭遇している」


「やり返したのか?」


「もちろんだ。そうしないとこっちが殺される」


 当然だろうという表情で言っている。どうやら自分が思っていた以上にハードな世界の様だ。ジョージはほとんどの迷い人はゲートを探すことに必死で、周りなんて全く気にしていないと思っていた。自分の思いを話すとスモーキーは鼻で笑う。


「それが日本人のメンタリティだな。考えがヌルい、甘んだよ。例えばいい装備が売っているが金が足りない。俺やお前なら魔獣を倒して金策をして買おうって考えるだろう。周りの連中も皆自分と同じ考えをしていると信じている。でも中には金を持っている奴を殺してそいつから金を奪った方が手っ取り早い。そう考えている連中もいるんだよ。十分に気をつけろ」


「分かった」


 スモーキーは他にも移動中の食料事情についてもしっかりとレクチャーする。


「森や山に入ると果実が実っている木がある。この世界の果実は基本どれも食える。もちろん美味いのもあれば、そうでないのもある。ただどれも水分が多い。移動が長くなっても飢え死にすることはないだろう。一番困るのが草原なんだよ、果実の木がほとんど生えていない」


 気がついたら真夜中をずいぶんと過ぎていた。


「お前ならやってくれそうな気がする。頑張れよ、そして気をつけろ」


「分かった。色々助かったよ。ありがとう」


 最後にカウンター越しに握手をした2人。ジョージはもう一度礼を言って”スモーク”を後にした。


 夜は随分と更けていたが宿の部屋に戻ったジョージの頭は冷めていた。さっきのバーでのスモーキーとの話を思い出す。


 自分に人殺しができるか?いや、出来るか、じゃないな。やらないといけないんだ。でないとこっちがやられる。迷い人同士が殺し合いをしていることは神の代理も知っているはずだ。それでもこのエリアに呼び続ける意図は何なのだろう。


 そもそも能力なんて必要なのだろうか。そう考えるとあの空間で先に天に召された600名ちょっとの人の方が幸せだったのかもしれない。でももう遅い。自分は自分の意思でこの世界に来た。そうであればこの世界で自分がやれる事を精一杯やるしかない。


 ジョージはベストのポケットから紙切れを取り出した。それは彼がこの街の複数の住民から聞いた情報を基にして作成した地図だ。地図には今自分がいる街と目的地となる次の街、その間の大雑把な魔獣の生息エリアが書かれている。


 道と道とを繋ぐ街道らしきものは一応あるそうだがそのルートが100%安全かと言えばそうではない。熊や虎が生息するエリアのすぐ近くを通ることになる。そう考えると最初から街道を外して移動した方が良いかもしれない。スモーキーが言っていた盗賊もどきの迷い人の連中を避ける意味でもそっちの方がいいだろう。その結果次の街への到着が数日遅れても構わない。


 次に今の自分の実力はどれくらいなのかを把握する必要がある。トカゲまで倒しているがその先にいる熊、虎に対して自分は対応できるのか。1体なら倒せるのかどうか。街道は通らないが一度熊、できれば虎とは対峙しておいた方が良いかもしれない。最悪は逃げると言うことにしてもそのルートの確認も必要だ。


 そうなるとこの辺りまでは普通に進んでここから周囲を見て逃げられそうなら大型の熊と戦闘してみるか。


 地図を見ながら考えているジョージ。しばらく地図を見ていたがそれをベストのポケットに戻すとベッドで横になった。


 ある程度は行き当たりばったりになるだろう。詳細を詰めてもその通りにいかない方が多い。大筋だけ決めておけばいい。それよりも少しでも眠ろう。



 翌朝、目が覚めたジョージは部屋に何もないのを確認すると宿をチェックアウトした。次の街へと続いている南門とは反対の北門に移動するといつもの屋台のおばさんがすでに店を開けていた。


「おはよう。2本くれるかい?」


「毎度あり。今日も外で敵を倒すのかい?」


 そう言って串焼きを2本渡してくる。代金を払って2本の串焼きを受け取るとジョージはおばさんを見た。


「これからちょっと次の街に行ってくるよ」


 おばさんは一瞬動きを止めてジョージを見つめてきたが、すぐに身体を動かしながら言った。


「そうかい。道中気をつけて行きなよ。またこの街に来ることがあったら顔をを出しておくれよ」


「分かった。じゃあ行ってくるよ」


 串焼き持っていない方の手を挙げて挨拶をしたジョージ、通りを歩いている間に2本の串焼きを食べ終えると、


「さてと、行くか」


 そう呟いて南門から外に出て行った。



 ジョージが街から出て行ってから1時間ほど経った頃、髭を生やしている白人が屋台に近づくと言った。


「2本くれ」


「はいよ。おや、マスター、今日はえらく早いね」


「早起きしたんでな。ところで今朝、黒髪、黒い瞳の迷い人は来たかい?」


 おばさんから2串焼きを2本受け取ったスモーキーが言った。


「小1時間ほど前になるかね、これから次の街に行くって串焼きを2本買って南門に向かって歩いていったよ」


 おばさんはスモーキーから受け取った代金を箱に入れながら言った。


「そうかい」


「あの子は私が今まで見てきた子達とはちょっと違うね」


 肉を焼いている手を止めておばさんが言った。スモーキーは彼女の顔を見る。


「あんたもそう思ったか」


「澄んだ目をしてた。迷い人でギラギラとした目をしてない人は珍しい。あんた以来じゃないのかね」


「あいつなら俺ができなかったことを成し遂げるかもしれない」


「ほう、あんたがそこまで言うのは初めてじゃないかい。私も多くの迷い人をあんたの店に紹介したけどそこまで言ったことなかったよね」


「その通り。俺が初めて認めた迷い人だ」


「なら期待できるんじゃないの」


「そうだな。すごく楽しみだよ」


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