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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第47話

 しばらく誰も言葉を発しなかった。


「もういいか?」


 ジョセフが言うとレイモンドがジョージとギャツビーを見てもう大丈夫か?と聞いてきた。


「最後にもう1つ教えてくれ。黒豹は結局地面に降りなかったのか?」


「俺はすぐ逃げ出したから確信はないが降りていない気がする。物が落ちる音がしなかったからな」


 レイモンドがギャツビーに顔を向けた。


「ギャツビーはないか?」


 ギャツビーは無いと言った。レイモンドは2人から顔をジョセフに向けた。


「色々ありがとう。それであんたはこれからどうするんだ?」


「とりあえずこの街で新しいチームを探す。南に行くことを諦めた訳じゃないからな」


 ジョセフはジョージとギャツビーに挨拶をすると先に門の中に入って言った。残った3人も門の中に入る。


「ホテルのレストランで話をするか」


「それがいいだろう」


 レイモンドとギャツビーのやりとりを聞いて頷いているジョージ。飲み屋で話をする内容じゃない。3人は市内を歩いて常宿にしているグラスランドホテルに戻ると1階にあるレストランに入った。ここは24時間オープンしている。3人ともジョセフに会う前に食事を済ませていたのでコーヒーを注文する。遅い時間帯ということもありレストランに他に客はいない。


「ジョージは森の中で一晩過ごしたんだろう?彼の話を聞いてどう思った?」


 ギャツビーが言った。彼はレイモンドからジョージが森の中で野営をしたという話を聞いていた。聞いた時は心底驚いていた。まさかそこまでやる奴がいるとは思っていなかった。


「まず森に入って2日目に襲われたと聞いてびっくりした。もっと森の奥にいるんじゃないかと思ってたよ。2人が襲われた理由は話し声を聞かれたからだろう」


 ジョージはついさっきのジョセフとのやり取りを思い出しながら話をする。話し声を聞かれたというジョージの言葉にレイモンドとギャツビーも頷いている。


「夜の森で声を出すのは愚の骨頂だ。何も考えてない」


 ギャツビーが吐き捨てる様に言っているがその通りだ。魔獣が徘徊している森の中の夜では音を消し、存在をできるだけ隠すのが鉄則だ。


「それまでの森だと、木の上まで上がってくる魔獣がいなかった。油断したんだろうがベテランがやる行為じゃない」


 レイモンドも言っている。6年目の迷い人がやる事じゃない。


「話は戻るが、ジョージが言っていた様に2日目で襲われたってのは俺もびっくりしたよ。つまり森の中に黒豹がいないエリア、安全地帯はないと考えた方が良いってことだ」


「そうなる。なんとなく森の中央部、つまり4日目とか5日目がやばいだろうと思っていたけどそうじゃない。森に入ったら安全な場所がないってことだ」


 そう言ったギャツビーがジョージにお前は野営の時は何に気をつけていたんだ?と聞いてきた。


「場所だよ。野営をする場所が全てだろうと思った。なのでまだ明るかったけど周囲の木の太い枝と絡まっていない木を見つけたのでその木の枝で一晩過ごした」


「確かに場所選びが重要だな」


「周りから飛び移ってこられない木を見つけるのがポイントになりそうだ」


 ジョージの言葉にレイモンドとギャツビーも同意している。


「あとは声を出さないのは当たり前だけど、動きもできるだけ少なくする様に心がけたよ。闇と同化すると言ったら言い過ぎかもわからないけど、それくらいの気持ちでいた」


 ジョージは要は自分がここにいることを悟られない様にする。そのためにはどうしたらいいかということを考えて動いたと言っている。


 森の抜けるのは運だ。長い間そう言われ続けていた。実際森を通り抜けた迷い人は皆「運が良かった」と言っている。


 確かに運はあるだろうが、運を引き寄せる準備も必要だ。完全に運頼りにせずに準備できることはしっかりとやる。その上で後は運任せ。事前準備をせずに100%運頼りにするのは博打と一緒だとジョージは考えていた。それを話すと2人もその通りだと言う。


「ジョセフとの話では黒豹が木に住んでいるのかどうかまでは分からなかったな」


「そこまで期待するのは無理だろう」


 この世界は地球とは全く違う世界だ。地球での常識を持ち込んでも意味がない。なので黒豹が木に住んで生活している可能性についても十分にあり得るというのがここにいる3人の意見だ。しかも相手は魔獣と呼ばれれる種族だ。外見が似ているから行動パターンが同じであることはない。


「ジョージはどうするんだ?」


「俺の実力だと今すぐ森を越えるのは難しい。森の中で野営をしながら鍛錬をするつもりだよ」


 レイモンドとギャツビーももう少し鍛錬してからになるだろうと言っている。ジョージがアイテムショップのハロルドの話をすると彼らも知っていた。


「今の+10がどれだけのアップになるのかは分からないが、いずれにしても迷い人には必須の腕輪になるだろう。南に移動するのはそれを手に入れてからだろうな」


 その言葉に頷いているジョージ。彼は装備においてすでに周囲よりも優れている。それに加えて腕輪で強化することがこの先のエリアでゲートを探す上で必要だと考えている。


 武器と防具が変わらないとなると、他の装備で強化できるのであれば強化するのはこの街からさらに南を目指す迷い人からみれば当然の発想になる。ただそう考える迷い人ばかりじゃない。南の街にいる迷い人の中にはこの街が限界だと考えているものもいる。そんな彼らからすると腕輪は金額との見合いと考えるかもしれない。それがなくても森や山の魔獣を倒せるのだから。



 ジョセフと会った翌日からジョージは再び南の草原を越えた先にある森の中で鍛錬をし、時に野営をする。毎回森の中にある異なる大木の枝の上で一睡もせず夜通し周囲をしていた。


 この日も森の中で野営をしていたジョージ。彼は毎回森の中の異なる場所で野営をしている。真っ暗な闇の中、大きな木の幹に背中を預け、伸びている太い枝に足を伸ばした格好で、時折吹く風で葉が擦れる音を聞いている。彼が座っている枝は地面から3メートル程の高さにある太い枝だ


 真っ暗な森の中で静かに座っていると突然彼のお腹のあたりが震え出した。最初は何が起こったのか分からなかった。しばらくして気がついて腰に巻いているポーチを開けると木彫りの女神像が振動している。こんなことは初めてだ。異常事態だと判断した彼はすぐにその場で立ちあがった。

 

 剣を持って周囲をゆっくりと見る。


 いた! ジョージが立っている木の枝から斜め右上の枝で光る2つの目。黒豹だ。ジョージがいる木ではなく、近くにある木から伸びている枝の上にいる。奴がいる枝からここまで3メートル。ジャンプしてくるのか、それともしてこないのか。


 ジョージは下腹に力を入れて光る目を睨み返す。じっと見ていると黒豹がその身体を沈めたのが見えた。跳躍する、そう思った瞬間黒豹がジョージのいる枝に向かって跳躍してきた。ガサガサと音がしたときには目の前に黒豹がいた。ジョージは相手がジャンプした瞬間に身体を左に動かし、向こうの枝の上からこちらに飛んできた黒豹に横から剣を振った。


 時々2倍のダメージが発動し、腹を切られた黒豹はジョージが立っていた木の枝に着地することができず、そのまま地面に落ちた。すぐにジョージも木の枝から地面に降りると倒れいてる黒豹に止めを刺した。魔石を取り出すとすぐにその場から駆け出した。


 死体を狙って他の魔獣がやってくるかもしれない。その場を離れた彼は夜の森の中を走りながら目についた大木に登った。周囲を見てとりあえず敵の気配がないとポーチの中から木彫りの女神像を取り出した。さっきは振動したが今はいつもの木彫り像だ。


「助かったよ」


 ジョージはしばらくそれを見ていたがポーチに戻すと枝に座って周囲を警戒する。


 翌日森から出たジョージは草原を横切って南の街に戻ってきた。


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