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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第40話

 部屋に入ってシャワーを浴び、下着を着替えたジョージ。夕刻だったこともあり1階のレストランに降りていく。ここも今までのホテルと同じで客室は2階から4階、1階にはフロントとレストラン、ラウンジがあり、いずれも宿泊者専用となっている。安全を金で買う。これが生き延びる鉄則だとスモーキーらから聞いている彼はそれを忠実に守っている。


 このホテルのレストランも宿泊客専用にしていることでセキュリティは守れるが、客は増えない。その分部屋代を高くしているのだろうが、宿泊する者から見れば安全なホテルという評価になる。


 1階のレストランは半分ほどの入りだった。ジョージが空いているテーブルに座ろうとすると奥に座っている二人組が手を挙げてきた。顔をそちらに向けると西の街にいたレイモンドとギャツビーだ。手を挙げて彼らに応えながらそのテーブルに近づいた。


「いつ来たんだ?」


「今日だよ」


 勧められて彼らと同じテーブルに座る。2人の前にはすでに料理が置かれていた。このレストランの名物だというのでジョージも同じ物をオーダーする。


 給仕が下がるとお互いの近況報告になった。2人は西の街からこの南の街に移動をし、1年近く腰を据えて周辺を探索している。普段はお互いソロで活動をしているが、同じ宿に泊まっているのでこうしてたまに一緒に食事をすることがあり、そのタイミングでジョージがやってきたのだという。


「1人で北の山を越えてきたんだろう?」


「ゴリラみたいな魔獣もソロで倒してきたのか?」


 レイモンドとギャツビーが交互に聞いてきた。


「もちろん。山の中に入るとしょっちゅう出会ったよ」


「あの山の中にゲートがあると思うか?」


 レイモンドが言った。


「あってもおかしくない。そんな雰囲気だよな」


 ジョージが言うと2人が頷いた。彼らによると、それなりの数の迷い人達があの山にあるとあたりをつけて山の中を歩き回っているそうだ。


 自分が怪しいと思う場所を探索する事に対してはジョージは当然だろうと思っている。


「2人は違うのかい?」


「お前と同じ考えだよ。あるとすれば南の森の先のエリアのどこかじゃないかと見ている」


 この南のエリアまでは苦労はするが困難とまではいかない。つまり多くの迷い人がやって来られる場所だ。そういう場所にゲートがあるとは思えない。ジョージはそう思っているし、目の前の2人も同じ考えだ。


 この南の街までの情報は多少なりとも事前に入手することができたが、そこから先の情報がない。ジョージが言うとレイモンドとギャツビーの2人が顔を見合わせてから言った。


「この街に来た迷い人はざっくりと2つのグループに分かれる。1つは自分たちが越えてきた山の中を探索するグループだ。そしてもう1つは南の森の中を探すグループだ」


「なるほど」


「ジョージも直ぐに分かるだろうが、街の南にある森は今までの森よりも深く、そして徘徊している魔獣の数も多い」


 この街から南の森までは2日ほど。2人によると魔獣はゴリラ以外に虎もいる。今までの虎よりも強いそうだ。


「この街はここからさらに南に進む拠点となる街だ。なんとかこの街までたどり着いたという技量ではここから南、森を抜ける事はできないと言われている」


 レイモンドがそう言って、ギャツビーと2人でその理由をジョージに説明する。


 この街から南にある森には自分達がゴリラや虎と呼んでいる魔獣がおり、その強さが越えてきた山のそれらよりも強くなっている。さらにこの2種類以外に夜行性の真っ黒な四つ足の動物、レイモンドはあえて言うとすれば黒豹だと言っているが、その黒豹に似た魔獣が夜の森を徘徊している。


「こいつは木に登れるんだよ」


「なるほど。木の枝の上での野営が安心じゃなくなるんだな」


「その通り。ただ黒豹は数が少ない。出会わずに森を抜けることもある。ただ出会ったらそこでジ・エンドだ」


 2人が言うにはここから先は迷い人としての戦闘能力に加えて運が必要になってくるのだと。森を抜けるには1週間から10日かかる。不眠不休で進める距離ではない。


「今までもっと南の街に行った迷い人は運と実力の両方があったってことか」


「そうなるな。しかも中にはそこからまたこのエリアまで戻ってきている迷い人もいる。強運の持ち主だろう」


 ”スモーク”のスモーキーや”ローズ”のゲイリー、そして”ケープ”のトムソンらがそれに該当する。ジョージが言うとその通りだと言う2人。


「今言った3人以外にも戻ってきている迷い人はいる。彼らは黒豹に会っていないか、仲間がそいつに食われている間に逃げ伸びた連中だ」


 その言葉を聞いたジョージが目を見開いた。チームメンバーを犠牲にしてその間に逃げたのか。彼の表情を見たギャツビーが言った。


「いつの頃からか、この街にはチームとして南の森を通る場合、仲間が黒豹に襲われても助けないという不文律ができている。犠牲が1人で終わるからな。他の連中はその間に逃げる。皆それを納得、理解してチームを組んで南を目指す。仲間と一緒に行動しても黒豹に食われるのは俺じゃない。皆そう信じているのさ」


 ギャツビーがこれはこの南の街に昔からあるルールみたいなものだと言った。


「なるほど」


 当人が納得をし、腹を括ってるのならジョージはそれについては異論も何もない。レイモンドによれば、その腹を括れない迷い人はこの街に住み着いたり、ずっと北の山を探しているそうだ。


 レイモンドとギャツビーは1年近くここにいる。あと半年か1年したら南に出向く予定だという。


「普段はお互いソロで北の山を探索したり草原でサイや水牛を倒して金策をしている。ただ南の森を抜ける時は2人でチームを組んで行こうって話をしているんだよ。生半可な技量では森を抜けるのは厳しいからな。ここでじっくり時間をかけている」


 南の森とはそれほどまでに踏破の難易度が高いのか。

 3人は料理を食べ終えて今はコーヒーを飲みながら会話を続けていた。

「ジョージはソロで南の森に挑戦するんだろう?」


「そのつもりだよ。なので俺もここでしっかりと鍛錬をするつもりだ。ところで南の森の先はどうなってるんだ?」


 ジョージが問うとしばらくの間があってからレイモンドが言った。


「俺たちも実際見た訳じゃないが、聞いている限りだと森を抜けるとまた下に降りるそうだ。つまり俺たちが今いるこの場所も台地の上だってことになる」


「森には川が流れていて、最後はこの台地の上から次の陸地に向かって滝になっているって話だ」


 レイモンドに続いてギャツビーが言った。大きな台地が来たから南に続いている。日本で言う段々畑、棚田みたいなものだな。ただ1つ1つの棚田の規模がとてつもなく大きくて広い。


「この街にも悪落ちした連中がいるんだろう?」


「いるが西や東に比べるとずっと少ない。せいぜい安宿に泊まっている迷い人の部屋に侵入して置いてある荷物をかっさらうくらいだ」


「街の外を見ても分かるだろう?周囲が草原だ。北の森に行くには1週間近くかかる。南の森へは2日の行程だが魔獣が強い。人を襲う前に自分達が魔獣に襲われる可能性があるから南の森には出向かない」


 なるほどと頷いているとギャツビーがジョージを見て言った。


「この街の武器屋と防具屋で手に入るのは西や東と同じ装備だ。これは知ってるな」


 それは事前に聞いていたので知っている。黙って頷いていると彼が続けて言った。


「ただ、それ以外にアイテム屋で攻撃の腕輪ってのが売っている。南に行くのならそれを買った方が良いぞ」


 ギャツビーが言うとレイモンドも南に行くのなら必須になると言った。もちろん2人とも購入している。聞くと力の腕輪は攻撃力+10、武器の一撃のダメージが+10増える。+10でざっくり3%から5%ほどアップするイメージだと言う2人。


 2人によるとアイテム屋では攻撃力+5、+10の2種類の腕輪が売っているそうだが、装備品で自分を強くするのは生き残る為には必要だ。買うのなら当然一番性能が良い腕輪だ。


 今のダメージアップの割合を基に計算すると、ジョージが持っている素早さ+40の腕輪だと15%前後アップという計算になる。彼はそれ以外に装備にも素早さの効果がついているので実質50%近い。3体の虎を避けながら倒せるのはそれほど素早さが上がっているからだ。今の装備に加えて攻撃力+10の腕輪を身につけると魔獣の討伐が楽になるのは間違いない。


「腕輪は金貨5枚だ。高いがそれに見合う価値はあるぞ」


「ありがとう。明日にでも早速アイテム屋で買ってくるよ」


 長い間レストランで話をした3人。レイモンドとギャツビーと別れたジョージはホテルの自分の部屋に戻ると木彫りの女神像を取り出してテーブルの上に置いた。


「ここからが本番だ。この街で強い相手と鍛錬をして今以上に強くなったら、俺は南の森を抜けて次の街を目指す。そうなったらいよいよあんたの出番だ。頼むぞ」


 そう言って木彫りの女神像を魔法袋の中に戻した。


 とりあえず明日一番でアイテム屋、それから街の周辺でサイと水牛を倒し、街に戻ったら市内の様子を見てみよう。


 長旅の疲れもあり方針を決めたジョージはベッドに横にあるとすぐに眠りについた。


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