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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第39話 南の街

 南の門を出てしばらくは草原が続く。この草原はジョージが日々の鍛錬でサイや水牛を倒し、時に野営をしていた場所だ。見晴らしもよく歩いている限り近くに迷い人や魔獣の姿はない。そうは言っても油断をせず、常に周囲に気を配りながら南を目指して歩いていく。水牛、サイを倒しつつ1週間ほど歩くと森が近くに見えてきた。

 

 ここからは慎重に進む必要がある。事前に聞いている話では森の中は草原と同じサイと水牛の魔獣がいるというが、本当にそれだけなのか、新しい魔獣がいるかもしれない。元迷い人の言葉は参考にはするが100%鵜呑みをすると危険だ。彼らが持っている知識は最新のそれではない。


 森に入って直ぐの木の枝の上で野営をして夜を過ごしたジョージ。次の日から森の中を南を目指して進み出した。


 森の中にいる魔獣はサイと水牛で、これは平原にいたのと変わらない。倒しながら森の奥に進んでいく。一応歩きながら左右をチェックするがゲートらしきものは目に入ってこない。このエリアには無いと思っているが、それでも移動中に目に見える範囲をチェックしていく。果実があれば多めに獲って鞄に入れた。


 1週間で森を抜けた。木々の間を抜けると遠くに見ていた山々が今は目の前にはっきりと見えている。森を抜けた先は草原で、その先に山が聳えていた。あの山の先にジョージが目指す南の街がある。


 あの山を越えるルートが3つある。とりあえず3つのルートを確認する必要があるとジョージは考えていた。万が一真ん中のルートを通ってしまえば、それが理由でゲートが見つからないかもしれない。地元民の言い伝え、ジュジュのあの言葉もヒントであり、従った方がよいだろう。


 草原を抜けて山裾に近づくと、そこから山裾を東から西に向かって歩いていく。途中でサイや水牛を倒して進んでいくと1つ目の山へ伸びている道、街道を見つけた。周囲の景色を見てその場所を頭の中に入れる。


 3週間山裾を移動して3つのルートを見つけたジョージ。結局最初に見つけたのが東のルートだった。今彼は西のルートの入り口に立っている。目の前の道は緩やかに上りになっていて、道の左右は木々が生えている。奥に進めば木々は深くなり、魔獣が徘徊しているのだろう。この山の中にゲートがあるとして探すとなれば数年、いや10年単位で山を徘徊する必要があるだろう。それくらいに山は東西に長く、南北にも連なっている。

 

 この世界は広い、闇雲にゲートを探して動き回ると自分の生きている間に全部見ることは出来ない様になっている。となるとある程度エリアを絞り込んでそれに賭けるしかない。賭けが外れたらこの世界で朽ちていくだけだ。


 ジョージは南の街までのエリアにはゲートはないと決めているが、目の前にある東西に伸びている山々を見ると、ひょっとしたらこの山の中のどこかにあるんじゃないかと思ってしまう。


 周囲が安全なのを確認すると、ジョージはお腹に巻いているポーチの中にある魔法袋から木彫りの女神像を取り出した。その女神像を山に向けてみるが何も起こらない。


「よし、ここには無い」


 声に出して気合いを入れると西のルートを南、山の中に進みだした。


 山の中に入ると事前に聞いていた通り魔獣のサイズが森に比べて大きくなった。大型のサイ、水牛が襲ってくる。サイズが大きくなった分体力も増えており討伐の時間が少し長くなった。倒して取り出す魔石も大きい。それまでサイと水牛の魔石の買取価格は銅貨8枚だったが大きくなったので銅貨10枚、つまり銀貨1枚くらいにはなるかもしれない。この調子で倒していけば南の街に着く頃には結構な数が貯まるだろう。


 山に登り始めて2、3日はサイと水牛しか出会わなかったが4日目に初めて新しい魔獣と遭遇した。聞いていたゴリラに近い姿をしている魔獣だ。素早さはサイよりも少し遅いが体躯がでかくて体力が多い。


 最初は苦労して倒したが数体相手にすると敵の攻撃パターンも分かり、討伐時間が短くなった。ゴリラの魔石は森の中にいるサイや水牛よりも大きい。道は山と山との間を縫う様に奥に伸びているがその道の左右から結構な頻度で魔獣が襲ってくる。


 ジョージは幸いにして装備系が優れているので、時間はかかっても倒せない事はないし、慣れて討伐時間も短くなったが、これが西か東の街で手に入る装備だったらソロでこの山越えをするのはかなり厳しいだろうと実感する。と同時にそれでもソロで山を越えて南の街まで出向いた迷い人達は相当の実力者だということになる。


 3週間近く過ぎた頃、それまで上りだった道が下りになった。それから5日後、魔獣を倒しながら山を下っていると少し開けた場所があり、そこに移動するとその場所から南のエリアが一望できた。


 山の先は草原になっていて、そのずっと先に城壁に囲まれた街が見える。あれが目的地の南の街だろう。見る限り山を降りてから1週間程草原を歩く必要がありそうだ。街の向こう、南側は草原の先に東西に大きな森があるのが見えていた。


 ジョージは相変わらずゴリラの魔獣を倒しながら山の中の木の上で野営をし、山を下っていた。ゴリラの魔石も相当数手に入れている。下っていくとゴリラに混じってサイと水牛が現れた。山越えはもうすぐ終わると理解した彼はそれらを倒しながら山を降りた。


 南の街へ行く途中の山をソロで走破したジョージ。この山越えを通じて戦闘能力がまた数段アップしていた。山の中で木々の間から襲いかかってくる魔獣。時には2体固まって襲ってきたこともあった。それらを躱し、倒しながら進んでいった結果、彼の剣の腕と身体の動かし方が東の街にいた時よりも鋭くなっている。


 強い敵と戦闘することでしか自分の技量は伸びない。街の周辺の楽な敵ばかりを相手にしている様ではソロで街から街へと移動することはできないだろう。


 山を降りると草原の先に城壁が見えている。この草原にいるのはサイと水牛だ。山の中のよりもサイズが小さくなり、以前街の外で相手をしていたサイズに戻った。ゴリラもいない。やっぱり山の中は魔獣の強さが上がる様だ。


 サイと水牛を倒しながら野営をし、草原を南の街に向かって歩き、街が近づくと魔獣がトカゲになった。その2日後、ジョージの目の前に南の街の入り口が見えた。


 彼が東の街を出てから4ヶ月近くが過ぎていた。

 東の街を出た時は、途中で元迷い人のクズ連中と会うかもしれないと思っていたが結局移動中に彼は誰とも会わなかった。


 

 南の街に入ってまず感じたのは街がピリピリとしていないということだ。東の街は街に入った時から殺伐とした雰囲気が漂っていたがここにはそれがない。西の街と比べてもこの南の街の方が雰囲気が落ち着いている。東、西、南の中では南の街が一番治安が良いと言っていたがジョージの肌感覚でもその通りだった。


 ただだからと言ってジョージはガードを下げることはしない。今までの街と同様に市内に入ると屋台をやっている地元民に一番安全でおすすめの宿を聞いた。


 ほとんど全ての地元民が勧めてきたのが”グラスランドホテル” 。草原のホテルという意味なのか。地元民によるとホテル代が一番高いし安全だという。ホテルグラスランドで犯罪が起きたという話を聞いたことがないと言っている。他の安いホテルだと窃盗はあるし、売春婦がホテルに入ってくるのでホテルだからと言って安心できないと言っている。


 売春婦が地元民かそれとも元迷い人、あるいは両方いるのかなのかは分からないが、宿泊客以外の人間がホテルを歩き回れるとなるとセキュリティは甘いのだろう。安全を金で買うと決めているジョージは地元民のアドバイスに従ってホテルグラスランドに足を向けた。


 ホテルは市の中心部から少し離れた場所にある4階建てのホテルだ。フロントで聞くと部屋があり、1泊銀貨6枚。日本円に換算すると約3万円する。


 西の街のウエスタンホテルが1泊銀貨3枚、東の街のサンライズホテルは1泊銀貨5枚、それよりも高いが安全のためだ。彼は1ヶ月分の部屋代を払って拠点を確保した。


 その後換金屋で道中で倒した魔獣の魔石を買い取ってもらうと金貨に20枚以上になった。白金貨にするかと聞かれたが断った。手持ちと合わせると30枚以上となり十分な活動資金を確保することができた。


 この街ではここから先の情報を入手する必要がある。今までと違って相談する相手が街の中にいない。治安が良いとはいえ悪落ちした元迷い人もいるはずだ。焦って動く前にじっくりと街の中を調べる必要がある。


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