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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第35話

 ジョージが東の街に来て1ヶ月が過ぎた。泊まっているサンライズホテルはさらに滞在を1ヶ月延長している。


 彼は街の南側の草原地帯に生息しているサイや水牛の魔獣を相手にずっと南に進んで野営をしながら鍛錬を続けている。南のエリアは魔獣が強いこともあり悪落ちした迷い人に会うことがない。2泊3日で草原で活動をしては東の街に戻ってくる。そこでジュジュの薬屋で薬品を補充し、イエローナイフに顔を出していた。


 この日、夕刻に東の街に戻ってきた彼は換金を済ませるとジュジュの薬屋に顔を出した。


「外での鍛錬は順調かい?」


 ジョージが買ったポーション類を袋に入れて手渡しすと聞いてきた。


「そうだね。ポーションは相変わらず飲んでいるけどね」


「身体が資本だろう?無理するんじゃないよ」


「ありがとう」


 デイビッドの飲み屋に顔を出す前にレストランで夕食を摂ろうと一旦ホテルの部屋に戻りシャワーを浴びたジョージは1階のレストランに顔を出した。テーブルは6割方埋まっている。1ヶ月も住むと顔見知りが多くなる。向こうが手を上げてくるとそれに手を返して応えながら、レストランの中で空いているテーブルに向かって歩いていると途中のテーブルから声がかかった。


「よかったら一緒に食べない?」


 顔を向けると女性の二人組だ。顔と名前だけは知っている。

 イタリア人のアデリーナとアメリカ人のメアリー、どちらも6年目のベテランの迷い人だ。


「いいのかい?」


「私たちもさっきここに来てオーダーした所なのよ」


「なるほど」


 近づいてきたレストランの女性給仕に料理を注文するとアデリーナが話かけてきた。


「ジョージはどこで鍛錬してるの?」


「南の草原。サイと水牛相手に野営しながらやってるよ」


「ソロで?」


 メアリーがちょっと驚いた声を出した。


「そう。俺はずっとソロなんだよ」


「ソロで野営ってきつそうね」


「でも西の街からここに来るまで毎日野営だったし、慣れたらなんとかなるもんだよ。そっちは?」


「私たちも南でやってるけど朝出て夕方に街に戻ってくるの」


「東の洞窟は?」


「もちろん行ってるわよ。あそこに行く時は他の女性だけのチームと一緒に行くの」


「その人達はここに泊まってないんだ」


「彼女達はイースタンホテルに泊まってるわ」


「なるほど」


 イースタンホテルはこの街で2番目に良いと言われているホテルだ。そこに2人のチームメイトが宿泊しているのだと教えてくれた。


「ジョージは東の洞窟には行ったの?」


「いや。まだなんだよ。でもそろそろ行こうかなと考えている」


 料理が運ばれてきた。会話が一旦中断し、それぞれの料理がテーブルにおかれると食事をしながら話を続ける。


「あそこがやばいってのは知っているよね?」


 フォークを手に持ったままアデリーナが聞いてきた。隣でマリアも食事の手を止めてジョージを見ている。


「もちろん。街の外以上に洞窟の中は無法地帯だってな。襲ってきたら返り討ちにするだけだよ」


 ジョージが新人の迷い人というのはこのホテルに宿泊している他の迷い人の連中も知っている、さらにチャンやマッケインが「若いが腕が立ちそうだ」と言った発言も皆知っている。迷い人の中でも腕が上位の連中は仲間を年数では見ない。年数だけは多いがたいしたことがない迷い人は多くいる。


 この世界に飛ばされてからずっとソロで活動し、台地から西の街におり、そこから東の街まで移動してきた。それを聞くだけで腕が立つということが証明されている。そうであっても東の洞窟は魔窟だ。


「洞窟に入って奥に行くといくつも分岐があるの、その先に行けば行くほど人気が無くなる。連中は気付かれない様に背後からついていって奥に行ったところで襲いかかってくるのよ。噂じゃ彼らは一部の洞窟の中を縄張りにしていて、その中にある坑道は熟知してるって話」


 アデリーナが言った。


「中は暗いのかい?」


「洞窟の中は壁や床、天井に苔が生えていてそれが24時間光ってるのよ。なので暗くか暗くないかと聞かれたら暗くないわね。何というかバーやラウンジの間接照明みたいな感じよ。それよりもずっと明るいわ」


「なるほど。イメージしたよ」


 今度はジョージが2人に質問をする。


「南の街には行ったのかい?」


「まだね。西で3年、ここでは2年弱くらいかしら」


 マリアが答えた。彼女達2人はそろそろ行こうかという話をしているがチームを組んでいる他の2人の中の1人が躊躇っているのだと言った。


「今まで6年近くの間ゲートを探しているけど未だ見つかっていない。もっと探したいという人と本当なゲートなんて無いんじゃないかと半分諦めが入ってくる人が出るのが6、7年目なのよ」


「その話は聞いたことがある。この世界は広い。探している間に年を取ってしまってそれでも見つからなかったら、自分は一体何をやってたんだろうとなる。だから早々に見切りをつけて残りの人生をこの世界で楽しもうとする迷い人が出てくるってな」


 ジョージが言うと2人ともその通りだと言った。


「悪落ちするんじゃないの。飲み屋さんをやったり店をやったりしながら暮らしてもいいんじゃないかって考えるのよ」


 イースタンホテルに泊まっている2人のうち1人がそんな考えになりつつあるらしく、皆で西の街に移動してそこで腰を据えないかと言っているそうだ。腰を据えるのならまだ治安がマシな西の街になるのは分かる。ただジョージが聞いている話だと南の街が一番治安がマシだという話だ。


「その通り。なのでとりあえず南の街に行ってみようよと今彼女たちを説得中よ」


 目の前の2人はまだ探索をギブアップする気はなくて、あちこち移動してゲートを探したいと思っている。ただ女性だけのチームは狙われやすく、経験上4名以上、それもそこそこ経験があって腕が立つ4名以上を揃える必要がある。


 チームで動いていると最初は良いとしても時間が経つとそれぞれの考えが変わってきて意見がまとまらなくなることがある。今目の前の2人はまさにその状況の真っ只中だ。


「この街の飲み屋、バーは行ってるの?」


 1軒だけ行っていると言うとどこか聞いてもいい?とメアリーが言った。


「イエローストーン」

 

 ジョージが言うと2人が顔を合わせてデイビッドの所ねと言った。有名な店の様だ。


「いい店を見つけたわね。デイビッドのお店は女性が1人でも安心していける数少ない店の1つよ。当人が凄腕の迷い人だったというのが知れ渡っている。タチの悪い連中は顔を出さない」


 彼女達によるとデイビッドは今でも外でサイを1人で倒しているという。


「彼は今55歳。それでも時々街の外でソロでサイを倒している。この街に長くいる迷い人はそのことを知っているの、だから手を出さないのよ」


 一種のデモンストレーションみたいなものか。俺に手を出すと返り討ちにあうぞと言うことを言葉ではなく日々の態度、活動で示している。そう言うやり方もこの東の街で生き延びていく1つの方法なのだろう。


 ホテルのレストランには入れ替わり立ち替わりいろんな迷い人がやってくる。そんな中で3人は料理を食べ終え、今はコーヒーを飲みながら話しをしていた。


 テーブルに座っていて周りを見るとレストランで食事を終えた迷い人の多くはそのまま部屋がある階段を上がっていき、外に出る人が少ない。


「皆自分の体調、予定を考慮して飲んだり部屋で休んだりするのよ。この街で1年も過ごせば生活していくリズムというかペースがわかるわ」


 ジョージの視線に気がついたアデリーナが言った。1つの街で長くいれば自分の動きやしペースを掴める。ただジョージは今のところ1つの街でそこまで長くいようとは考えていない。南の街までのエリアにはゲートはないだろうと思っている。あるとすればその先だ。もちろん目の前の2人に話すこともない。


「毎日外で酒を飲んでる奴はアル中か本気でゲートを探す気がない奴、どっちも無能だよ。西の街でそう言っていた人がいた」


 西の街でレイモンドが言っていた言葉を思い出して口にする。


「それは真理ね。この街にもその無能ってのが結構いるわよ」


 メアリーが言うと隣でアデリーナも頷いている。


「ところで今日はジョージは飲みに行くの?」


 アデリーナが話題を変えて聞いてきた。


「デイビッドのところに顔を出そうかなとは思ってる」


 そう言うと2人顔を見合わせてからジョージを見る。


「それって明日でもいいでしょ?今日は私達と部屋で飲まない?」


 しばらくの間があってアデリーナが言った。彼女達は2人で広めの部屋を1部屋借りているそうだ。1人ずつ2つの部屋を借りるよりも安くなると言っている。


「部屋ならリラックスできるでしょ?」


「なるほど。それは悪くない話しだ」


 女には気をつけろとゲイリーが言っていたのを思い出したが、このホテルの住人なら問題ないだろう。それに彼女達は今でも現役の迷い人だ。金のためではないのはジョージにっもわかる


 ジョージは彼女達と一緒にレストランを出た。


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