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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第34話

 部屋で時間をつぶしたジョージは日が暮れて十分な時間が経ってからホテルを出て夜の街に繰り出した。


 飲み屋やレストランの数が多いせいか、それなりの数の迷い人達が通りを歩いている。

多くは2名以上だが、1人で歩いている者もいる。常に左右に目を配っている悪そうな連中も通りを歩いていた。好きあらば人様の物を盗もうとしているのだろう。ジョージにはわかる、やばい気配が出過ぎている。


 ジュジュから聞いたイエローナイフはすぐ見つかった。飲食店が集まっている一角にあった。


 ドアを開けるとここもカウンターだけの飲み屋だった。10席ほどのカウンターに4名の迷い人が座っている。見る限りアジア系や中東系はいない。皆30歳以上に見える。


「いらっしゃい」


 空いている席に座ると50代半ばくらいの男性が声をかけてきた。彼がデイビッドだろう。


「ジャパニーズのジョージかい?」


 自分が自己紹介する前にデイビッドから名前を呼ばれてびっくりする。


「そうだ。ジュジュから連絡があったのかな?」


 そう言うとその通りだという。

 ビールを頼むと銅貨3枚だ。


「イエローナイフにようこそ。俺はデイビッド。ここで19年間飲み屋を遣ってる」


 ビールグラスをジョージの前に置いたデイビッドが言った。礼を言ったジョージはビールを一口飲んでからマスターを見た。


「イエローナイフって変わった名前だな」


 聞くとカナダの北部にイエローナイフという地名の街があるそうだ。


「俺の故郷の街。ここと違って極寒の地さ」


「なるほど」


 カウンターにいる4人は2人組同士の様だ。時々笑い声が聞こえてくる。


「台地の上から直接この街に来たのか?それとも西の街からか?」


「西の街からだ」


「どこに泊まっているんだ?」


 カウンターの反対側の客に聞こえない声で聞いてきた。


「サンライズだよ」


「なるほど。ソロだって話はジュジュからも聞いている。腕が立つってことだな」


 ここでもそう言われる。新人の迷い人でこの街の最高級ホテルに泊まれる奴はまずいない。ソロで西の街から東の街にやって来られる、そして最高級ホテルに泊まれる。つまり強い魔獣をガンガン倒した結果、金を持っているということになり、腕が立つということになるそうだ。


「知っていると思うがこの街は治安が悪い。流石に街の中で殺し合いはないが、昼間にホテルの部屋に入って盗みを働く奴や、ひったくりは毎日の様にある。安宿に泊まってるやつは24時間気が抜けない。お前が泊まっているホテルは大丈夫だけどな。そして街の外は無法地帯だ」


「そうみたいだな。西の街から来る途中で出くわしたよ」


「何人いた?」


 そう聞いてきたのでジョージはその時の話をそのままデイビッドに言った。


「なるほど。新人の迷い人で6人を返り討ちか。腕が立つどころか凄腕だな」


「上の台地で言われたんだよ、腹を括れないのなら降りるなってな。俺は誰とも組む気はない。だから金策も兼ねて只管に強い魔獣を相手に鍛錬をした」


 ジョージの話を聞いているデイビッド。店に入って来た時から見ていたが、雰囲気がある。つまり新人らしくないと感じていた。聞くと西の街でも返り討ちにしている。こいつは今年の迷い人の中では別格の強さだろう。


「ジョージという黒髪の新人の迷い人にあんたの店を紹介した。行ったら面倒見てやってくれるかい?普通の迷い人とは違う雰囲気を持ってる子だよ」


 昼間にジュジュからそう聞いていたデイビッド。実際に会ってみると彼女が言っていたことが理解できる。ジャパニーズはあまり感情を表さないと聞いているが目の前の男もそうだ。淡々と人を殺した話をする。こう言う男はいざという時に強いというのは今までの経験で知っていた。


「どれくらいいるつもりなんだ?」


「来たばかりで分からないけど、最低でも3ヶ月はいると思う。東の洞窟にも行ってみたいし。ある程度探索したら南に向かうつもりだよ」


「東の洞窟もソロで行くつもりか?」


 その言葉に頷くジョージ。


「やばいというのは聞いている。でもチームを組んでも仲間が信用できるかどうか分からない。俺にとってリスクは同じだよ」


 ただすぐに出向く気はないと言うジョージ。まずは街の周辺でしっかりと鍛錬をしつつ、この街の空気をしっかりと感じ取ることが先決だと思っている。


「それから南の街を目指すのか?」


「そのつもりだ。ゲートを見つけるにはあちこち動き回らないとな」


「ジョージ、お前はこの3つの街があるエリアにゲートがあると思っているのか?」


 その問いに首を左右に振る。


「あればとっくに見つかってるはずだよ。ここはまだ鍛錬するエリア。そう思っている。いや割り切っていると言った方がいいかな。何せこの世界はかなり広いって話だから」


 カウンターの反対側にいる4人には聞こえない声で話をする2人。デイビッドもジョージの言葉に頷いている。


「あんたは南の街のさらに先まで行ったのかい?」


「行った。南に行けばいくほど難易度が上がる。ただライバルは少なくなる」


 難易度が上がる。険しい山があるのか、川が流れているのか、いずれにしても間違いなく魔獣は強くなるだろう。


「俺と同期の迷い人はこの街にも来ているんだろう?」


「そう聞いている。ただ多くはない。大抵は西の街にいるはずだ」


 西の山を探索している者が多いんじゃないかというデイビッド。結局スタートダッシュをして先に台地を降りたとしても、この西の街か東の街で横一線になる。ジョージは西の街ではほんの限られたエリアしかいなかったが、あの街の他のエリアに自分と同じく今年の迷い人達がいたのだろう。あの街をベースにゲートを探している連中もいるはずだ。


 そう考えると自分が台地の上でしっかりと基礎鍛錬をして力をつけてから下に降りてきたのは正解だったのだろう。少なくとも今まで大きな苦労はしていない。


 店には他にも客がいる。今日は初日でもあるし、余り込み入った話はしない方が良いだろうと判断したジョージは椅子から立ち上がった。


「スタイルは人それぞれだ。3ヶ月いるのならまた顔出してくれよ」


「助かる。予備知識なしで新しい飲み屋に行きたいとは思ってないんでね。ここに来ても良いというのならそれが一番だよ」


 店を出た時は人通りが減っていた。街の中にはあちこちに街灯があり路地や通りを照らしているので大きな通りを歩いている分には薄暗くもなく不安にはならない。ただこの夜遅い時間でも2、3人固まって歩いている迷い人はいる。彼らはどこかのバーで飲んだ帰りなのか、あるいは酔った迷い人を狙っているのかは分からない。ただジョージには誰も話かけてこない。


 当人は気づいていないが、ジョージは今までの鍛錬、および数度にわたる悪党退治を経験していることで只者ではない雰囲気を漂わせていた。


 歩いているとジョージに鋭い視線を送ってくるプレイヤーもいるが、彼が視線を返すと向こうが視線を外すことが多い。当人は睨んでいるのではなく視線の主を見返しているだけだが、相手から見ればその視線が想像以上の迫力があるので、たじろいでしまうのだ。


 西の街の夜よりも雰囲気が悪いのを肌で感じながら飲み屋が固まっている通りを歩いていると一軒のバーの扉が開いて3人組の男性が店から出てきた。彼らと目が合うと一人の黒人の表情が変わる。


「よう、兄弟」


「やあ、アイク、久しぶりだな」


 台地の上、3番目の街で分かれて以来の再会だ。近寄ってきたアイクとハグをする。


「ジョージもこっちに来たんだな。西の街から来たのかい?」


「そうだ。そっちもか?西の街では合わなかったが」


「俺も西の街にいたんだけど3ヶ月前にこっちに移動してきた。そこにいる2人とチームを組んでるんだよ」


 そう言って少し離れたところに立っている2人を呼んだ。


「紹介するよ、ジャパニーズのジョージだ。ソロで動いてる凄腕だぜ」


 2人がジョージに近づくと握手を求めてくる。白人と黒人だ。白人がコロンビア人のキキ、黒人はブラジル人のブルーノ。聞くと皆今年の迷い人だ。3ヶ月前にこの街に来てこの3人でチームを組んで洞窟をメインにして活動しているらしい。


「アイクが今言ってたがソロで動いてるのか?」


 キキが言った。


「そうだ。この世界に来て誰とも組んでない」


「西の街からここまでもソロで移動してきたのか。半端ないな」


 ブルーノが感心した声を出した。


「こいつは根性が座ってるぜ、なぁ兄弟」


「今のところはな。この先は分からんさ」


「東の洞窟には行ったのかい?」


「いや、また来たばかりなのでね。とりあえず街の周辺で鍛錬してからだな」


「やばいのがあちこちにいる、気を抜くなよ。まぁソロで東の街からここまできたジョージだから大丈夫だとは思うが」


「ありがとう。気を付ける」


 またなと3人と別れた。

 チームを組んで活動すれば安全だろうが、ジョージは装備品のこともありこの先もソロだ。なので人一倍鍛錬をし、強くなって自分を守らないといけない。


 東の洞窟は街の外以上に無法地帯と思った方がいいだろう。しっかり準備をしないとやられる。ジョージは気合を入れ直した。


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