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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第29話

 ジョージは山の中で2日を過ごしてから山を降りてきた。途中で何度か迷い人の連中を見たがお互いに声はかけ合わない。ここでは全員がライバルだ。誰よりも早く俺が見つけてやる。それだけを考えて山の中を探しているのだろう。山といっても1つじゃない、連峰というか同じくらいの高さの山が連なっている。ただジョージはここには無いと決め打ちをしているので1つの山をざっくりと探しただけだ。


 山を降り、森の中で1泊したジョージが西の街に戻ってきたのは街を出てから5日目の夕刻だった。長期で取っているいるウエスタンホテルの部屋に入ると、部屋の中をチェックしてからシャワーを浴び、下着を着替えた彼は1階にあるレストランに顔を出した。レストランに入るとテーブルに座っている迷い人達がジョージに視線を向ける。その中の1人、いや2人が手を上げた。レイモンドとギャツビーだ。


 勧められるままに彼らと同じテーブルに座ったジョージ。やってきた女性給仕に料理を注文した後でレイモンドが口を開いた。


「返り討ちにしてきた様だな」


「分かるのか?」

 

 ジョージが言うとレイモンドとギャツビーの2人が頷く。


「分かる。人を殺した奴は雰囲気が変わるんだ。経験者から見ればすぐに分かる」


「目つきが変わり、表情が締まる。そして全体の雰囲気が変わる」


 レイモンドに続いてギャツビーが言った。


「なるほど」


「相手は何人だった?」


「3人だ」


「教えてくれるか」


 聞かれるままに西の森で襲われた時の話をする。最後に3人を倒してしばらくしてから身体が震え出して暫くの間震えが止まらなかったよと正直に言った。


「誰でも最初はそうだ。俺もレイモンドもそうだった」


「そう。俺の場合は暫く夢にも出てきた」


 目の前に座っている2人は4年目、5年目の迷い人でソロで動くことができる技量がある。そしてレイモンドがUSA、ギャツビーがアイルランドだ。言い方は悪いが日本よりも死が身近にある国だ。その国に住んでいる連中ですら最初は身体が震えたと言っている。それを聞いてジョージは少し気持ちが落ち着いた。


 運ばれてきた料理を食べてもしっかりと味を感じることができる。


 自分を襲ってきた3人組の顔つきを聞かれたのでそれを言うとやっぱりなと頷いている2人。


「人種差別をしている訳ではないが、統計上そっち系の奴らにやばい奴が多いんだ」


 ギャツビーが言った。


「ジョージも地球にいた時にニュースで見ただろう。海上でタンカーやコンテナ船を襲う奴がいたり、国連の補給物資を運んでいる車を襲ったりしている奴らがいたことを。それと同じ様なことをこの世界でもやってるんだよ。20歳過ぎまでそんな事をしたり、していなくてもすぐ近くで見て育ってきた奴らがこの世界に来て急に聖人君子になるとは思えない」


 レイモンドの言葉にジョージも頷く。人間は生まれ育った環境、それも子供から大人になる時に育った環境が将来に影響を与える。小さい頃のそんな日常を見ていた奴らは、世間とはそういうものだと思って育ってきている。レイモンドが言う通りそんな奴らが急に心変わりをするとは思えない。


「基本は放置、無視だ。ただ向かってきたらぶちのめす。それだけだ」


「レイモンドの言う通りだな」


 人を諌めた今なら言える。



「ところで初めて西の山の中に行ったんだろう?どうだった?」


 ギャツビーが違う話題を振ってきた。


「あの中にあると信じてこの街に腰を据えて探している奴らの気持ちが少し分かった気がしたよ」


 ジョージが言うとそれだけで納得した表情になる2人。


「まともにあの山の中を探すとなるとそれだけで数年、いやもっとかかるだろう。言い訳として十分に成り立つ」


「その通りだ」


 この2人もあのエリアには無いと思っている、同時にこの街に腰を据えてあの山々ばかり探している迷い人を軽蔑しているのが分かる。


「ジョージはどうするんだ?」


「山じゃなくて草原でもう少し鍛錬をするつもりだよ。しっかり鍛錬してから東の街に出向く予定だ」


「俺たちはあと数か月ここで鍛錬をしてから南の街に向かう。移動だけだが2人でチームを組んでいくんだよ。お前もどうだ?」


 草原の移動、途中の山の強い魔獣。これらを相手にしながら南に移動するにはチームを組んでいた方が楽だというのは分かる。現地についたら解散だ。


「さっきも言ったけど、俺は次は東に向かうよ」

 

 ジョージが言うと2人は分かったと言ってそれ以上何も言ってこない。ソロであろうが、チームを組んでいようが、ゲートを探すという目的は同じでも手段、過程は人それぞれだ。お互いに必要以上に関与しない。


 話がこの街の飲み屋の話になった。聞いているとギャツビーも”ミヤビ”には顔を出してるそうだ。ただ彼に”ミヤビ”を紹介した店はジョージとは別の店だった。


「ミヤビ以外にどこに行った?」


 レイモンドがジョージに顔を向けて聞いた。


「”ホアリエン”。ミヤビの店はそこのリンから教えてもらったよ。俺が行ったのはこの2軒だけだ」


 ジョージが言うとあの店かという2人。


「ホアリエンも安全な飲み屋だ。あそこも一見さんお断りに近い店だな」


 西の街が治安がマシと入ってもそれは東の街に比べてマシというレベルで街が安全という訳じゃない。そんな中で飲み屋をやっていくのは相当な覚悟が必要だ。


「2軒とも元迷い人の女性がやってる店だ。ミヤビはともかくホアリエンは看板を出している。よくやってるよな」


 ジョージが言うとホアリエンのリンは腕が立つという評判が流れているらしい。


「彼女は短剣使いなんだよ。バーの様な狭いスペースだと片手剣よりも短剣の方がずっと使いやすい。実際何度か店の中で暴れた客を短剣で相手をしたそうだ。それ以来リンには手を出すなと言うことになっている。犯罪者に成り下がったクズ連中もあの店には行かない。リンの前で話をするとそれが普通の迷い人に広まるのを知っているからな」


 リンは自分の実力を見せつけて今の地位を気づいた。みやびがそうなるのはまだ先だろう。いずれにしてもジョージはずっとこの西の街に居続けるつもりはない。2軒の飲み屋とマーサの薬屋。この街にいる分にはこの3軒で十分にことが足りそうだ。


 食事が終わるとレイモンドもギャツビーも外に出ずに部屋に戻るそうだ。ジョージも山から帰ったばかりなので今日は外出する気はない。


「毎日外で酒を飲んでる奴はアル中か本気でゲートを探す気がない奴、俺から見ればどっちも臆病者で無能だよ」


 レストランでの別れ際にレイモンドがばっさりと言い切っていた。


 部屋に戻ったジョージ、部屋の中をチェックして変化がないことを確認するとベッドの上にどすんと腰を下ろした。


 さて、これからどう動くか。


 西の山はとりあえず見た。ゲートを探すという行為は西の山の中での動きと同じで、魔獣を倒しながら道なき道を歩き、大きな木や岩や小山の裏をしらみつぶしに見ていくのだろう。どこに行こうが基本の動きは変わらない。木か岩か壁か、その程度の違いだ。そしてどこにも魔獣と悪者がいると思った方が良い。


 ジョージは頭の中でこれからの自分の計画、大雑把な予定を組んでみる。この西の街であと1、2ヶ月鍛錬をし、そこから80日近くをかけて東の街に移動。そこで3、4ヶ月滞在し、それから2ヶ月強かけて南の街に移動。


 南の街に到達するのは今から1年から1年半後になる。この世界に来てから計算すると2年から2年半後だ。自分は27、8歳になっている。そこから先はまだ情報がほとんどない。南の街に着いた時点で考えれば良いだろう。


 リュックの中に入れてある魔法袋に手を入れて木彫りの女神像を取り出した彼はそれを部屋の机の上に置いた。毎日最低一度はこの女神像を取り出しているが、今のところ変化はない。


 無神論者のジョージは日本では毎日祈るという習慣がなかった。日本にいた時も神社にお参りするのは初詣くらいだ。ただこの世界に来てこの女神像を手に入れてからは日に1度は手を合わせている。手を合わせた後、しばらくの間女神像を見ていたが、手に取ると再び魔法袋に戻した。


 南の街に着いた時にこの像がどう言う反応をするか、しないのか。それまでは自分の勘を大事にして動いてみよう。東西の街で時間を食うのが得策とは思えない。ここはあくまで自己鍛錬の場であり、盗賊を返り討ちにする経験を積むエリアだ。


 彼は自分が人を諌めたことはすっかり脳裏から消えていた。


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