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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第23話

 マーサの薬局を出たジョージはそのまま街を歩いてみたが、街が広いので半日歩いた程度では全貌は掴めない。それでも少しは土地勘ができたところで彼はウエスタンホテルに戻った。


 西の街についた初日だということや、マーサのアドバイスもありこの日の夕食はホテルのレストランで食べることにする。


 彼は魔法袋を持っているので常に全ての装備品を持ち歩いていて部屋には何も置いていない。今もリュックを手に持って1階にあるレストランに降りると1人でテーブルに座って料理を食べていた。周囲にはちらほらと迷い人の姿が見えるがマーサが言っていた様に30前後に見える男女が多い。2人、3人と固まって食事をしている迷い人もいるが、ジョージと同じく1人で食べている迷い人もいる。


 ベテランの迷い人がホテルのレストランで食事を摂っているのはここの料理が美味いという理由だけではなく、ここが一番安全、気を張り詰めなくても良いレストランだからという見方もできる。そう考えるとマーサの話と辻褄があう。


 ホテルの外、安全と言われている市内のレストランで食べたとしても、無意識のうちに緊張を強いられている可能性はある。外で強い魔獣と死闘を繰り返して戻ってきて、本来ならリラックスできる街の中がそうではないとしたら四六時中緊張状態になる。それを避けるためにはここが一番良いという判断をしているのかもしれない。いずれにしてもしばらくここで過ごしている間にそのあたりの様子も分かってくるだろう。


 結局食事中、誰とも話さずに食事を終えたジョージは部屋に戻って早めに休むことにした。



 翌日、ジョージは別の門、南門と呼ばれている門から外にでた。彼が入ってきた門は東門で、北門と西門と全部で4つの門がある。朝、屋台で聞いたら魔石を換金してくれる店は東西南北のそれぞれの門からそう遠くない場所にあるそうだ。昨日は東門から入ってきたジョージだが街の大きさに圧倒され、換金屋を見逃していた。門の外に出る前に換金をしてかなりの金額を手に入れた。結果的に人がほとんどいない時間帯に大金を得たことで周囲から注目を浴びることもない。今の所持金でホテルに3ヶ月住んでも全く問題がないほどだ。


 南門は外に出ると広大な草原が広がっている。20分程歩くと視界にサイの魔獣の姿が見えた。虎の姿はない。


「ここはいきなりサイがいるエリアか。稼ぐのにいい場所じゃないかな」


 ジョージはサイを相手に鍛錬を始めた。奥に移動しながら草原にいるサイを片手剣で倒していく。しばらくすると少し離れた場所で同じ様にサイを倒す迷い人を見かける様になった。ソロもいれば3人で倒している人たちもいる。見ている限り彼らはまともな迷い人だ。適度な距離を開けて、獲物が被らない様に気を遣いながら戦闘している。


 朝から3時間ほど草原でサイを倒したジョージは一旦街に戻ると換金をしてからホテルのレストランに入って昼食を取る。午後は市内を歩いて街の様子を探るつもりだ。


 1人で食べていた昼食が終わるタイミングで1人の男性の迷い人が近づいてきた。気配を感じて顔を上げて男性を見る。自分よりは年上、30代前半の金髪の男性だ。日焼けをしたがっしりとした体躯をしている。


「座ってもいいかい?」


「どうぞ」


 テーブルの向かいの席を勧めた。


「飯を食い終わったと思って声を掛けさせてもらった。俺はギャツビー。32歳、迷い人になって4年目だ、出身はアイルランドさ」


「俺はジョージ、25歳の日本人だ。今年の迷い人だよ」


 2人はコーヒーを頼んだ。このホテルではコーヒーが飲める。


「急に声を掛けて悪かったな。若いのが1人で飯を食ってる。しかもこのホテルでだ。気になったんでな」


「俺はこのホテルに部屋を借りている。ここで食べるのはここが一番安全だと聞いたからだよ」


 相手が年上でも先輩でも関係ないとばかりに普通の口調で話かけるジョージ。先にこの世界に来たから、自分よりも広い範囲を捜索しているからだというのは関係ない。未だにゲートを見つけられていない時点で皆同じだ。


 ラフな口調で話かけたジョージだが、ギャツビーはそれについて何も言わなかった。


「若いのにやりそうだな。情報を集めた上でこのホテルを選んだのだろう。ジョージの言う通りだ。このホテルが西の街で一番安全な場所なのさ、自分に根性がなくてゲートを探すことを諦め、他のやつらの命や金を狙うクズ野郎もこの中には入れない」


 軽蔑しきった言い方だが、それが普通だろう。


「見た限りソロでやろうとしているのかい?」


「その通り、誰とも組む気はないよ」


「相当自信があるってことだ。でないと南の草原でソロであのでかい魔獣を早く倒せない」


 そう言ってコーヒーカップを口に運んだ。ジョージは向かいに座っているギャツビーをじっと見る。


「見てたのか?」


「目に入ってきたと言ってくれるか。午前中、俺も草原にいたんだよ。ジョージが先にやっていたからな。いい腕してると思って見てたんだよ」


 装備の違いには気がついていない様だ。いや、わからない。見る限りそれなりに経験がありそうな雰囲気だ。この世界に来て4年、まだこのエリアにいてもおかしくはない。


「ギャツビーは他の街には行ったのかい?俺は台地の下じゃこの街が初めてだ」


「俺は28でこの世界に来た。上の台地からこっちに降りてきて最初に東の街に行ったんだよ。そこで2年過ごした。こっちに移動してから1年半ちょっとさ」


「最初に東の街に行ったのか。聞いている話じゃ一番治安が悪いって話だけど?」


 ギャツビーはその通りだと頷いてから言った。


「台地の上で3人でチームを組んだのさ。どうせなら治安の悪い場所に行こうぜとなってな。それにあっちには洞窟がある。ひょっとしたら見つかっていない洞窟があるかもしれない。そう考えて東に出向いた」


 腕に自信のある連中が集まったのだという。東の街に行くと絡まれたらしいが全て返り討ちにして殺してきたんだと淡々と話をしてくる。


「あいつらは街の中では武器を振り回さない。街の外で襲いかかってくるんだよ。それは事前に聞いていたからな。俺たちはわざと街を出るとバラバラになって誘き寄せたんだ」


 3人が少し離れた場所で魔獣を相手にすると3、4人の盗人連中が1人に襲いかかってくるそうだ。短時間なら4人でも耐えられる。その間に残りの2人が集まって4人を殺したらしい。指笛を吹くのが合図だったのさと言うギャツビー。


 皆それぞれ策を練りながら盗賊らを相手にしている。


「チームは東の街で解散した。1人は南に行くといい、もう1人はもう少し東の街で頑張ると言う。俺は西の街に行くと言った。円満に解散したんだよ」


「じゃあ今はソロなんだな」


「その通り。ここででかいサイみたいな魔獣を相手にして金策をしたり、時に周辺の探索をしている。西門から外に出ると森があってその先が山になっている。草原で金策をしたり、数日間山にこもってウロウロしてゲートを探している」


 過去何年も探してきて見つからないが、それでも自分の目で確認しないと気が済まない性格なのだというギャツビー。いろんな考え方があって当然なのでジョージは何も言わない。


 ギャツビーによればこの街、東の街、そして南の街で売っている装備はどれも同じだそうだ。西の街の武器と防具についてはジョージも実際に店に出向いて確認している。


 武器(攻撃力+25) 金貨1枚。

 攻撃用セット(攻撃力+10) 金貨1枚 

 回避用セット(素早さ+10) 金貨1枚


 当然ジョージの装備の方が上だ。

 この3つの街に巣食っている元迷い人の盗賊や盗人連中もこの装備でいるということだ。会わないにこしたことはないが、会ったとしても対処できるだろう。


 ギャツビーと別れたジョージは昼から1人で西の街の中をぶらぶらと歩きながら地理を覚えていく。歩いていると飲み屋が固まっている一角を見つけた。泊まっているホテルからだと徒歩で10分程の距離にある。


 その中を歩いていると”ホアリエン”という看板を見つけた。ここがマーサが言っている元迷い人がやってる飲み屋だな。


 場所を覚えた彼はそのあとも飲み屋街を歩く。”モスク”なんて言うふざけた名前をつけている飲み屋の看板を見つけた。モスクで酒を飲むのかと思わず苦笑してしまう。


 その後も歩いていると昼間からやっている飲み屋がある。「OPEN」の看板がドアに掲げられている。店の名前は”サハラ” ドアが閉じられていて中の様子を伺う事はできないが、アフリカ系のマスターかもしれない。


 午後の時間一通り歩いたジョージは屋台で串焼きを買うとそのままホテルに戻った。串焼きは最初の街のあのおばちゃんのタレを上回るタレには出会えていない。


「あの串焼きは最高に美味かったな」


 串焼きを食べ終えると夜に備えて仮眠をとった。


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