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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第22話 西の街

 街に入るとその広さに驚かされる。事前に3番目の街よりも数倍広いとは聞いていたが実際目にすると圧巻だ。迷い人がどれくらいいるのかは分からないが、彼らをいれると間違いなく数万人の人が住んでいるだろう。


 城門から伸びている大きな通りに出している複数の屋台に顔を出すと、金よりも安全に泊まれるおすすめの宿を聞いた。彼らがそれならあそこだと口を揃えて言った宿に向かう。

 

 そこは通りから少し入った静かな場所にあり、周辺に飲み屋はない。宿に入る前に周囲を見たが彼のアンテナに引っかかりそうなのはなかった。


 入り口のエントランスに木彫りのプレートが掲げられており、そこには「ウエスタンホテル」と書かれている。


 幸いにも部屋が空いており、長期で借りることができた。1泊銀貨3枚、日本円に直すと15,000円とこの街では高級宿に位置付けられるが、それで安全を買うことができるのならと1ヶ月分前金で払って部屋を確保した。部屋は広く、ドアの施錠もしっかりしている。ベッドも綺麗でトイレとシャワーも水が流れることを確認した。


 ここなら大丈夫だろう。


 西の街での拠点ができた。


 シャワーを浴びて旅の疲れを取った彼は市内を歩いて街の様子をチェックする。街が大きいので地元の人も多いが、迷い人も多い。迷い人は皆外見が同じなので今年の迷い人かそれ以前の迷い人なのかが分からない。この街でまずは薬屋を探さないといけない。


 街を歩いていたジョージは1軒の薬屋を見つけて中に入った。主人が対応してくれたがそこはマーサのいる薬屋ではなかった。ただそこの主人がマーサがいる薬屋の場所を教えてくれた。お礼にとその場でポーションを買う。ポーションは1瓶銅貨5枚だ。2瓶買ってお礼を言って店を出た彼は教えられた場所を探しながら街の中を歩く。


 銅貨3枚だったポーションが同じ小瓶に入って銅貨5枚になっている。需要と供給のバランスなのかもしれない。


 主人に教えてもらった道を歩くこと10分、路地の中にその薬屋はあった。最初の店とは違ってここは通りに面していない。


「こんにちは」


 店に入って中に声をかけると、しばらくして奥から1人の女性が出てきた。年齢的に見ると彼女がトアンが言っていたマーサかもしれない。


「おや、迷い人かい。この薬屋に迷い人が来るのは珍しいね」


「こんにちは。俺はジョージ、今年の迷い人です。失礼ですけどマーサさんですか?」


「そうだよ。あたしがマーサだよ。ジョージと言ったね。ひょっとしてトアンからの預かり物を持ってきてくれたのかい?」


 探していた人が見つかった。しかも事前に連絡をしていた様で彼女からトアンの名前を出してきた。これで間違いない。


「はい。台地の上の街を出る前に頼まれまして。今日この街に着いたんですよ」


 ジョージはリュックの中からトアンから預かった麻袋と手紙を彼女に渡した。ありがとうと言って麻袋の中身を見てからその場で手紙に目を通したマーサ。手紙は何枚もあり、時間をかけゆっくり読んでいる。その間ジョージは店に置かれている薬品を見ていた。この店でもポーションは銅貨5枚で販売されている。


 しばらくしてからマーサが手紙から顔をあげた。


「ありがとう。助かったよ」


「いえいえ、お役に立てて良かったです」


 約束を果たせてホッとするジョージ。マーサは麻袋を足元に置くとジョージを見た」


「今日着いたって言ってるね。宿は決めたのかい?」


「ウエスタンホテルを取りました」


 そう言うとうんうんと大きく頷いてから言った。


「今もらったこの手紙の中に、ジョージにこの街についてしっかりとレクチャーをしてあげてくれと書いてあるんだ。台地を降りて1ヶ月以上もかけてこの街に来てくれてちゃんと品物を渡してくれた。しっかりとレクチャーしてあげるよ」


「それはありがたい」


 マーサはジョージを店の奥にある椅子に座らせた。自分も椅子に座るとこの街について話はじめた。


「まずこの街での宿だけど、ウエスタンホテルを取ったっと言ったね。大正解だよ。この街で一番安全なホテルだ。値段は高めだけど十分な見返りがあるよ」


「街に着いて、屋台をやっている地元民に安全なホテルを教えてくれと聞いたらほとんどの人がウエスタンホテルという名前を出したんでね」


 そう言うとなるほど、いい方法だよと言った。

 

「トアンからも聞いているとは思うけどこの街は広くて人が多い。私ら住民が数万人、迷い人も1万以上住んでいる。人が多いということはいろんな人がいると言うことだよ」


 ジョージは頷きながら聞いている。


「いろんな人というのは何も迷い人の事だけじゃない。ここに住んでいる住民の中にもいろんな人がいるということさ。もっと具体的に言うと迷い人から金をふんだくろうと思っている連中がいるということだよ」


「ぼったくりの店があるって事かな?」


「ぼったくりまではいかないけど、高く売っている店があるんだよ。特にアイテムショップや服屋。これらは良心的な店ばかりじゃない。これを頭に入れておくといい。できれば複数店を回って値段を比較してから買った方がいいだろう」


 ぼったくりと言っても法外な値段設定はしておらず、せいぜい5割ほど高い値段をつけているということらしいが、それでもよその店よりも1.5倍も高く売っているので気をつけた方が良いとマーサが言った。これは彼女が言っている様に、複数の店を回って比較すれば回避できそうだ。


 彼女は次に良心的値段で美味しい料理を出すレストランの名前と場所をいくつか紹介してくれた。それをインプットする。


「あとはホテルで食べる事だね。ウエスタンホテルなら問題ない。周囲に気を使う必要もないだろう。味も良いらしいよ。何より一番安全だね。レストランで酒を飲んでも大丈夫だし」


 マーサによればウエスタンホテルを常宿にしているのはベテランの迷い人で、彼らはしっかりと外で魔獣を倒しながらゲートを探している連中だという。宿泊客の中にはやばい連中はいないと言っている。えらく断言してくるなと思っていたら彼女が言った。


「あそこのホテルのオーナーとは知り合いなんだよ。何かあれば教えてくれる」


「なるほど」


 どうやらマーサはただの薬屋ではなさそうだ。話を聞きながらジョージはそう思い始めていた。上の街にいたトアンにしてもそうだ。この世界に最初から住んでいるであろう住民はおとなしい人、言い換えると凡人ばかりではないということだ。 


 そう考えると一番最初の街であった屋台のおばちゃんもそうかも知れない。能力を隠して俺たち迷い人に接している可能性がある。


 ジョージは地元民を下に見るつもりはないし、今までそんな態度で接していないという自負がある。ただ他の迷い人はどうだろう。中には戦闘能力がないと言う理由だけで自分達の方が上の種族だと無意識のうちに思っている連中がいるかもしれない。


 ”スモーク”のスモーキーが言っていた言葉を思い出した。住民が言っていたあの言葉がヒントだったんじゃないかと。スモーキーは地元民を見下していなかった。だから彼らがヒントめいたことを教えてくれたのではないか。


 そう考えるとトアンが自分に荷物の託送を依頼してきたのも地元民からの評価が高いことがあるかもしれない。いずれにしてもこれからも絶対に下に見ることはせずにおこう。


 彼がそんなことを考えている間にもマーサは街の情報を教えてくれている。もちろんジョージは彼女の話を頷きながら聞いていた。


「飲み屋については元迷い人がやっている飲み屋と地元民がやっている飲み屋がある。どちらも迷い人歓迎となっているがやっぱり地元民がやっている店は地元民のための店なんだ。店に入れてはくれるが内心では歓迎されていないと思った方がいいよ」


「迷い人がやっている飲み屋に絞った方がトラブルがなさそうだ。ただ聞いた話だけど元迷い人の飲み屋の中にも色々あるという話だけど?」


 そう言うとマーサがその通りだよと即答してきた。


「この街に住んでいる迷い人の中にはゲートなるものを探すことを諦めて、街の周辺で魔獣を倒しながら生活をしている元迷い人が多くいる。そんな彼らの中に素行の良くない連中がいて、彼らと繋がっている飲み屋があるんだよ。溜まり場になってるね」


「その話は台地の上でも聞いていた。その素行の良くない連中が街の外で非道な行為をしているってね」


 ジョージが言うとそれも聞いているよと言うマーサ。住民は俺たち迷い人に対しては無関心、無関係な立場を装っている様に見えるが実際は彼らの情報網でかなり詳しい状況まで理解をしている様だ。


「”ホアリエン”という飲み屋がある。オーナーはリンという女性だよ。彼女の店に行って私の名前を出してごらん、この街の飲み屋について色々と教えてくれるだろう」


「元迷い人がやってる飲み屋だね」


「そのとおり。この西の街でもう10年以上飲み屋をやっている。冷たい言い方になるけどね、迷い人の面倒事は迷い人の中で収まりをつけてくれというのが地元民の思いさ」


 余計なことに巻き込むなということか。表面的には迷い人とうまくやっている様に見えるが本音の部分では俺たち迷い人と自分たちの間に見えない線を引いているのだろう。


 素行の悪い元迷い人も地元民から見れば面倒ごとだ。相談窓口は教えたからあとはそっちでやってくれと言うことだと理解する。こうしてストレートに言ってくれた方がこっちも助かる。


「分かった。当然といえば当然の話だよ。俺たちは所詮余所者だ。何の因果かこの世界にやって来てゲートを探すという使命を受けている。その目的のためにあちこちを移動しているが、元々からいた人たちにとっては関係のない話だ。俺たちがこの世界で偉そうにするのは筋違いだって俺も分かっているよ」


「そう言ってくれると少しは救われるよ」


 話が終わるとジョージはポーションを3つ買って銀貨1枚、銅貨5枚を渡した。


「まいどあり。しばらくこの街にいるんだろう?いつでも寄っておくれよ」


「ありがとう。そうさせてもらうよ」


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