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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第21話

 翌日、アヤネの家で彼女が作った朝食を食べ終えると。出かける準備をする。


「無理はしないで。焦ってもいいことはないわよ」


「そうだな。気を付けるよ」


「木彫りの女神像がジョージをゲートに案内してくれるといいわね」


「それを期待しているんだ」


「頑張ってね」


「アヤネもな」



 彼女の見送りを受けて家を出たジョージは街の中を抜けて南門を出ると、東側にあるスロープを降りていく。


 九十九折りになっているスロープを1時間ほどかけて降りるとそこは草原になっていた。坂を降りていったのはジョージ1人だけだった。降りてから左右を見るとどちらも草原のずっと先に高い木が生えている森が見えている。


「行くか」


 そう呟くと西に向けて歩き出した。



 3つ目の街から西の街までは徒歩で40日ほどかかる。しばらくの間は元迷い人に会うこともないだろう。相手にするのはフィールドにいる魔獣だけだ。


  スロープを降りた先の草原にいるのは虎や熊と言った上の台地でも相手にしていた魔獣だ。3つ目の街の周囲でしっかりと鍛錬をしたこともあり問題なく倒しながら進んでいく。


 野営をした翌日、大きな森の中に入ると虎が固まって徘徊する様になった。2体、3体と固まっており、木々の間からジョージを見つけては襲いかかってくる。これらを倒しながら森の中を進んでいく。日が暮れると木の枝の上か崖の中の比較的安全な場所で夜を過ごす。食事は森の中ではそこにある果実の実を食べる。草原では持参している干しパンだ。


 複数体の虎が徘徊していた広い森を抜けると目の前には起伏がある草原がずっと向こうまで広がっていた。そこでジョージは今まで見た事がない魔獣を見ることになる。事前に聞いていた通りのサイとカバを合体させた様な魔獣だ。カバの身体とサイの顔だ。鼻の上に大きな角が伸びている。地球にいたサイよりも角は長い。あれに突かれたら良くて大怪我、まともに突かれたら身体を貫かれるだろう。聞いていた通り皮膚も硬そうだ。ジョージは自分でこの魔獣をサイと呼ぶことにする。


 幸いに固まっておらず、単体で徘徊している。見つかりにくいという装備の距離感を確認すると虎や熊と同じ距離だった。サイの魔獣はこちらに気がつくと突進してきた。確かに身体つきからは想像つかない速さだ。ジョージはギリギリまでその場に立ち、最後に左に動きながら右手に持っている片手剣を横に払った。サイの右側に大きな切り傷がつき、そこから血が流れだした。これなら倒せる。


 向きを変えたサイを同じ様に体を交わして片手剣を横に振ると剣で切られた裂け目が広がり、派手に血を吹き始める。それと同時に動きが悪くなってきた。角の突きに気をつけて体を左右に動かしながらその顔に切りつけていると大きなサイが草原の上に倒れた。すぐに魔石を取り出す。虎の魔石よりも大きい。事前情報でこれ1つで銅貨8枚の価値がある。


 大きなサイを危なげなく倒せたことで、ジョージは今までの鍛錬が間違っていなかったと思うと同時にこれでソロで移動できると確信する。あとは複数体を相手にするのに馴ればいい。今の戦闘の感触だと2体であれば同時に倒せるだろう。片手剣についている付帯効果、時々2倍のダメージ効果も今では10回振れば4回は発動するまでになっていた。


 広い草原を歩きながらサイを見つけると自ら近寄っては倒していくジョージ。魔石を魔法袋に収納しながら西を目指していく。サイとの戦闘にも慣れ、1体は問題なく、それも短時間で倒せる様になり、戦闘を重ねると2体、そして3体まではほぼ無傷で倒せる様になった。地味な鍛錬を続けてきたが、それがここにきて花を咲かせている。高価なサイの魔石もかなりの数を集めることができた。


 移動しながら左右を見ているがゲートらしき物は一切見えない。前方と左手にはひたすら草原が広がっていた。この辺りも過去から探索済みなのだろう。彼は右手に台地が見えるところを進んでいた。野営をする時は台地の側に移動し、その崖の中で比較的安全な場所を探してそこで仮眠をとる。翌日、再び草原に出て西を目指して歩いていく。


 こんな調子で20日間以上、広大な草原地帯を歩いていたジョージの前方に再び森が見えてきた。台地から降りて30日以上が過ぎていた。この森からは魔獣以外に人間にも注意が必要だろうと気合を入れ直す。


 森に入ると生息しているのが虎や熊の魔獣になった。ジョージに取っては全く問題のない相手となる。彼はできるだけ戦闘を避けながら常に周囲に気を配る。魔獣の気配よりも人間の気配を探りながら森の中を慎重に進んでいく。


 森に入って7日目、前方に気配を感じた彼は太い木の幹に隠れてそちらを伺った。その場でじっとしていると男の悲鳴、そしてその向こうから複数の足音が聞こえてきた。大木の影から顔を出してみると、1人の迷い人が逃げている背後から4人の迷い人が追いかけてきている。


「た、助けてくれ!」


「おらっ、逃すなよ」


「分かってるって、へへ。獲物は逃さねぇよ」


「殺してやるよ」


「いやだ、死にたくない」


「心配するなって、楽に殺してやるぜ」


 ジョージが見ていると逃げている男に追いついた男が片手剣で背後から切りつけた。大きな叫び声をあげてその場で倒れ込む男。少し遅れて追いついた3人が倒れ込んだ男に剣を振るっている。


 しばらくすると泣き叫んでいた男の声が消えた。4人の男達がその場にしゃがみ込んでいる。おそらく彼の装備品を漁っているのだろう。数分後、立ち上がると殺した男をそのままにして西の街の方に早足で駆けていった。


 一部始終を木の陰から見ていたジョージ。4人の男達が去ってしばらくしてから殺人現場に近づくと、そこには絶命している若い男の死体だけがあった。武器や荷物はない。死体からはまだ赤い血が流れ続けている。


「酷いことをしやがる」


 周囲を警戒してからその場で土を掘り、男の死体を埋めてやる。魔獣に食われるのは忍びない。土の中に埋めてその身体に周囲の土を被せるとジョージはそこで手を合わした。


「成仏しろよ」


 魔獣にやられるのならまだしも、味方だと思っていた同じ人間に殺されるのは無念極まりないだろう。ゲートを探すと言う命題、ミッションを遂行すべくこの世界にやってきた人間を別の人間が殺す。殺す側の人間も最初はゲートを探してやろうという気持ちがあったんだろうが、どこかで歯車が狂ってしまって追い剥ぎにまで身を落としている。


 名も知らぬ男の埋葬を終えたジョージはしばらくその場に佇んでいた。


 それにしても女神はこの世界の様子は知っているはずだ。悪落ちした迷い人が他の迷い人を殺しているのを知らないはずがない。毎日の様に人間が人間を殺しているのをどこかで見ているはずだ。それでも何十年もの間、毎年2,000名もの20代の若者を毎年この世界に送り込んでくる。


 その目的、真意は何なのだ?


 この世界は人間の醜さを試す実験場なのか?それとも他に何か目的があって見て見ぬフリをしているのか。


 周囲を見て何の気配も無いことを確認したジョージは魔法袋から木彫りの女神像を取り出してそれを握るとその顔をじっと見た。


「あんたの狙いは一体何なんだ?」


 しばらく女神像を見ていた彼はそれを魔法袋の中に戻した。

 

 迷い人を埋葬し、再び森の中を歩き出してから数時間後、再び人の気配を感じたジョージ。木の陰から見ると5人の迷い人がポーションを飲みながら虎を相手にしていた。


 見ているとチームの様だ。ポーションを飲みながら1頭の虎を相手にしている。ジョージがソロで倒す時間よりもずっと時間をかけて倒すと魔石を取り出してカバンに入れるとジョージがいる方向とは反対の方向に移動していった。


 今見たのは”まとも”というか”普通の”迷い人達だろう。ただ今年の迷い人かそれ以前にこの世界に来た人たちかどうかは分からない。


 「玉石混交だな」


 そう呟いて再び歩き出したジョージは翌日の朝に森を抜けた。森の中の虎は彼に取っては良い金策相手となっていた。魔法袋の中にはサイと虎の魔石が大量に入っている。


 森を抜けると草原になり、トカゲが現れ出した。街は近いと思っているとその日の夕刻、歩いている彼の前に高い城壁が見えてきた。


 台地に降りて39日目の昼ごろ、ジョージは西の街の門を潜った。


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