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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第19話

「これを見てくれるかな」


 話題を変え、ジョージは魔法袋を取り出した。その中身を出そうとする前ににトムソンが魔法袋に鋭い視線を送る。


「魔法袋だな。どこで手に入れた?それも女神が与えてくれたのか?」


 今までの話の流れだとそう考えるのが普通だ。

 ジョージは違うと首を左右に振った。


「これは最初の街でスモーキーが売ってくれた。当人は大を持っているというので小を安く売ってくれたんだよ」


「なるほど」


「トムソンに見てもらおうと思ったのは魔法袋じゃない、その中に入っているこれだよ」


 そう言って女神の木彫り像を取り出してカウンターに置いた。トムソンはそれに顔を近づけるとじっと見る。


「よくできているな。お前が作ったのか?」

 

 そう言って顔を上げるとジョージを見る。


「その前に教えてくれるかな。最初に空間の歪みと呼ばれている場所に飛ばされた時のことを覚えている?」


「飛ばされた時のこと?もちろん鮮明に覚えているよ」


 トムソンが当時のことを話した。それはジョージがつい最近聞いた言葉と同じ内容だ。


「さっき俺が洞窟の奥の小部屋に入った話をしただろう?その時にそこで話をしたのは最初に脳内に聞こえてきた神の代理と言った女性の人物だった。その女性がこの木彫り像の女性と瓜二つなんだよ」


 そう言うとトムソンのが目を見開いた。


「つまり、俺たちが聞いてた声の主である神の代理ってのは、実は代理じゃなくて神そのもの。そしてその姿がこれだと言うのだな」


 そう言ったトムソンはまだ驚愕の表情をしている。ジョージは頷くとこれを手に入れた経緯を彼にした。


「2つ目の街の薬屋のミーシャ。覚えている。ポーションを買うために何度か店に顔を出したよ。当時は可愛い女の子だった。そうか、彼女からもらったのか」


 彼女から聞いた話をそのままトムソンにする。


「彼女の祖父というとどうだろう、迷い人がこの世界に現れ出した時期と同じか」


「多分」


「つまり、どう言う理由かは分からないが神はこの世界でゲートを探すヒントとなる物を置いていたということになるのかな」


 ゲイリーは道標と言った、トムソンも今この話を聞いてすぐにヒントと言った。実際にこの世界を動き回った強者2人が同じ様なことを言ったことから見ても、この女神の木彫り像がゲート探しにおいて重要な役割を果たしそうだとジョージは確信する。


「2つ目の街のゲイリーとジャスミンもそう言っていた。ただ、まだこれが本当に意味を持つものかどうかがわからない。でも持っていることでこの先何かが起こる様な気がする」


 トムソンはその通りだろうと言ったあとで魔法袋とこの女神の木彫り像は絶対に他の迷い人には見せるなと言った。これもゲイリー、ジャスミンと同じ意見だ。


「もちろん、これは迷い人にとっては垂涎のアイテムだ。殺してでも手に入れたいと思う奴が多いだろう」


「その通りだ」


 翌日からジョージの鍛錬の強度があがった。自分は下のエリアで時間をかけたり、余計なことに時間を避けたくない。そのためには自分が強くなるしかない。


 トムソン、ゲイリー、ジャスミン、スモーキーが口を揃えて言っていたが、襲ってきた仲間を返り討ちにする気持ち、技量がないととてもじゃないがゲート探しなんて出来ない。今でも人殺しには抵抗はあるが、それ以上に自分のやりたいことを阻害してくる相手に対しては、それが魔獣はもちろんだが、相手が人間であっても、どちらに対しても強い気持ちで対応する必要があるとジョージは気合いを入れた。腹を括るしかない。


 虎を3体相手にする。避けながら攻撃をする戦闘に加えて短時間で3体を倒す戦闘もする。朝から夕方までひたすらに虎を相手に戦闘を続けた。おかげで戦闘の技術はもちろんだが魔石を持ち込んで換金することで金策にもなる。


 3番目の街にいる迷い人は数える程少なくなっていた。彼らはジョージの様に鍛錬をしているのか、それとも台地の下に降りていく決心がついていないのかは分からない。


「今残っている迷い人で鍛錬をしているのはジョージくらいだよ。他の迷い人は下に降りていくのを躊躇っている連中だね」


 ポーションの補充で薬屋を訪ねた時、すっかり顔見知りになっているトアンが言った。長い経験でそれがわかるのだという。定期的にポーションを買っていく迷い人は外で鍛錬をしているからで、それ以外の人はポーションを補充していない、つまり外に出ていないか街の近くでウサギやトカゲを相手にしてちまちまと金策をしていることになる。


 台地の下に降りるのなら虎や熊を倒せないと厳しい。もちろんソロで倒す必要はなく、チームを組んで倒せれば問題ないのだが、それでも虎や熊を相手にするとなるとポーションが必須となり、丸1日戦闘すればいくつかポーションを消費する。そのポーションを買いにこない、あるいはその頻度が非常に少ないとなれば虎や熊の魔獣を相手にしていないと分かると言うトアン。


「それでジョージはいつまでこの街にいる予定なのかな?」


「あと1週間程ですね。かなり仕上がってきたと言う感覚があるので」


「そうなると私が稼げるのもあと1週間ということだね」


 トアンが笑いながら言った。


 迷い人が少なくなれば当然ながら飲み屋の客も減る。ここ数日、”ナゴミ”も”ケープ”もジョージが顔を出しても他に客がいない。


「鍛錬は順調?」


 ビールのお代わりを置いたアヤネが聞いた。


「あと1週間程で次の街に移動しようと思っている」


「どの街に行くかは決めたの?」


 他に客がいないので、ビールを置いたアヤネはカウンターを挟んでジョージの前に立っていた。


「西の街から始めようと思っているんだ」


「どうして?」


「アヤネも言っていただろう?慣れるためだよ」


 台地の下に降りてどの街に行こうか、最初の目的地をどこにするのか。ジョージは最初は東の街に行くつもりだったが、鍛錬をしている途中で最初の目的地を西の街に変更した。アヤネやトムソン、そしてその前の街のゲイリーやジャスミンの話を総合すると、台地の下は治安が悪く、特に東の街の治安が良くない。


 日々の鍛錬と装備でソロでもやっていける自信はあるが、それでも治安が悪い、その悪い程度は実際に肌で感じるしかない。


 自分の想像以上に治安が悪かった場合に取り返しのつかない事になるかもしれず、まずは西の街で慣れることがいいだろうという判断をする。西の街に行けば新しい情報も手に入るし、その中には東の街の情報もあるだろう。また西の街で苦労する様であればとてもじゃないが東の街でソロで活動なんてできない。


 まずは西の街に行って、そこで情報を集めつつ、さらに強い魔獣を相手にして自分の技量、戦闘スキルを上げようと考えたジョージ。


「いいんじゃないかな。雰囲気や治安の悪さの程度なんて個人で受け止め方が違うだろうし。実際にその場に行かないと分からない事ってあるわよ」


「その通りなんだよな」


「ジョージは装備もいい、滅多なことにはならないとは思うけどそれでも卑怯な手を使ってくる元迷い人はいる。気をつけてね」


「ありがとう。それでアヤネに見てもらいたいものがあるんだ」


 ポーチから魔法袋を取り出した。その時には何も言わなかったが、その袋の中から木彫り像を取り出したのを見て目を見開いた。


「その袋は何?」


「これは魔法袋」


「これも女神からもらったの?」


 アヤネは魔法袋を見るのは初めてらしい。言葉としては知っているが実際に持っている人を見たことがなかったそうだ。


「これは最初の街の飲み屋”スモーク”のスモーキーが安く売ってくれたんだよ。大と小を持っているってね。小さい方を俺に売ってくれた」


「そうなんだ。それがあると移動が便利になるわよね」


「その通り、ただだからと言って手ぶらで移動していると勘繰られる。いつも背中に背負っているリュックをダミーにしているんだ。というか、アヤネに見せたかったのは魔法袋じゃなくてこの木彫りの女神像なんだよ。トムソンには見せた」


 洞窟の中での話をすると再び目を見開くアヤネ。


「神の代理じゃなくて女神そのものだったのね」


「トムソンはこの女神像がゲートを探すヒントになるかもしれないと言っている。今のところは何も変わらないが下のエリアに行ったら何か変化があるかもしれない」


 アヤネはジョージが初めてこの店にきてからずっと彼を見ていた。今までの迷い人と違うなと思っていたら予想通りだった。特別な装備をし、街の住民から女神とそっくりの木彫りの像を手に入れている。彼女は昼間に街の中でトムソンと話をすることがあるが、彼もジョージは今まで見てきた迷い人には全くいないタイプだと言っている。長年ここで酒場をしているトムソンは人を見る目がある。その彼がそう言っているのを聞いて自分の感覚が間違っていなかったのだと知った。


「あいつならやり遂げそうな気がするよ」


 トムソンはそう言っていた。今こうやって目の前で話を聞くと確かに彼ならやり遂げそうだ。アヤネはビールのおかわりを注ぎながら言った。


「ジョージならゲートを見つけるかもしれないね」


「だといいけどね」


「あとどれくらいこの街にいる予定?」


「どうだろう、1週間くらいかな。だいぶ仕上がってきたという感覚はあるんだよ」


 ジョージが言うとアヤネが1週間かと呟いた。


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