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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第15話


 ジョージは銅貨を1枚置いてビールのお代わりを頼んだ。


「この街にはどれくらいいる予定なんだい?」


「どうかな。最低でも1ヶ月はいると思う。金策もするし、ここから先の情報も集めないといけない。昼間、この街の南の端からの景色を見た。しっかり腰を据えて準備をしないとあとで苦労しそうだから」


「その通りだ。聞いているかも知れないが、ここから先はガラッと様子が変わる。中途半端な準備や予備知識無しで行くと苦労するだろう」


 お互い初対面だ顔合わせはこれくらいでいいだろう。2杯目のビールを飲んだジョージは席から立ち上がった。奥の4人はまだ座って身内で盛り上がっている。


「また来てもいいかな?」


「もちろん。迷い人は皆歓迎さ」


 ”ケープ”を出たジョージは宿に帰らずに通りを歩く。この街では飲み屋は一角のエリアに固まっている。目指す店は”ケープ”から数分で着いた。


 ”ナゴミ”と書かれているドアを開けるとここもカウンタースタイルのバーだ。カウンターの中には女性が1人立っていた。女性客が2人カウンターの中央に座っている。


「いいかな?」


「もちろん。お好きな場所にどうぞ」


 ジョージはここでも一番端のカウンターに座った。


「ビールいくら?」


「銅貨1枚」


 カウンターに銅貨を置くとグラスに入ったビールが置かれたケープとほぼ同じ量だ。街で値段と量を合わせているのかもしれない。


「今年の迷い人?」


 ジョージの前にグラスを置いた女性の店主が聞いてきた。黒髪で歳は30代の後半か。”ケット・シー”のジャスミンと同じくらいの年齢に見えるが女性の年齢の予想は難しい。

 

 ”ナゴミ”という店の名前からもしかしたら日本人かも知れないと思ったが、どうやら間違ってはなさそうだ。”ナゴミ”とは”なごみ”という日本語だろうと当たりをつけていたが正解だった様だ。


「そう。3日前にこの街に着いたんだよ。俺はジョージ。日本人だ」


 日本人というとカウンターの中央に座っていた2人の女性、そして店主の女性が一斉にジョージに目を向ける。


「ジョージってどんな字を書くの?」


 店主が聞いてきた。前の世界だと女性の店主はママと言うが、そう呼んで良いのかがわからない。


ゆずるという字と治める。明治の治だよ。それがどうしたのかな?」


 ジョージが言った漢字を自分の手の平に書いていた女性店主。


「なるほどね。私はアヤネ。ジョージと同じ日本人。そしてカウンターに座っている2人の女性も日本人よ」


 そういうと女性2人組が自己紹介してきた。ジョージと同じ今年の迷い人でルリとミサキだそうだ。偶然だがこの店で日本人が4人揃った。


「3日前に来たって随分とのんびりしているのね。早い人は3ヶ月ほど前にこの街に来ていたわよ。彼女達もこの街に来て1ヶ月は経っているわ」


「金策をしていた。今まで見つからなかったゲートがそう簡単に見つかるとも思えない。特に慌てる必要もないと思って金策と鍛錬に時間をかけているんだ」


「1人で動いているの?」


「そうだよ。気楽でいい」


「ねえ、南の端から台地の下を見た?」


 カウンターの中央に座ってる女性のうちのルリが聞いてきた。ジョージはそちらに顔を向けてもちろんと言った。


「あの広いエリアもソロで回るつもり?」


「そのつもりだよ。俺は最初の街と2番目の街で時間をかけて情報収集した。この街でもそうするつもりだが、この3日間で聞いた話では台地の下に降りると途端に治安が悪くなる。チームを組んだはいいが、身内に金銭を盗まれたり、最悪殺されることもあると聞いた。そんな心配をするくらいならソロの方がずっと気楽でいい」


 会話を聞いているアヤネはジョージというこの日本人が今まで見て来た迷い人とは雰囲気が違うと感じていた。事前に時間をかけて情報を集め、その中から最適解を見つけて行動するタイプかも知れない。何も考えずに前へ前へと進む無鉄砲な迷い人ではなさそうだ。気弱なタイプには見えない。芯は強そうだ。


「アヤネ、今ジョージが言った事、私たちも聞いているんだけど本当なの?」


 アヤネは彼女2人に顔を向けた。


「本当よ。流石に街の中で殺人はできない。やっちゃうと住民から総スカンを喰らってしまってその街では生きていけなくなる。他の街に行こうとしても住民は何も売ってくれない。何もなしで街を出てもポーション類や携帯食料もないと次の街に行くのは相当厳しい。街の中だと気にするのは盗み、恐喝のたぐいね。外に出るとなんでもありと思った方がいいわ」


 アヤネの話を聞いているジョージ。ここまでは事前情報と同じだ。こうやって一つずつ情報の裏をとるのも生き延びる術だ。


「ジョージはそんなエリアにソロでいくんでしょ?」


 ミサキがカウンターに身を乗り出してきて言った。


「そうなる。なので俺は最初の街、その次の街でひたすらに郊外の魔獣を倒して金策をしながら、同時に戦闘技術を上げてきた。この街でもそうするつもりだ。しっかりと装備を整え、戦闘に慣れてから下に降りる。なので最低でも1ヶ月はこの街にいる予定だよ」


「この下にある街については何か知ってる?」


 アヤネが聞いてきた。


「裏はとっていないけど東、西、そして南方向にそれぞれ街がある。一番やばいのが東の街、一番ましなのは南の街だが、南の街に行くルートはタフだって話だ」


「その通りよ。なので女性の迷い人は10名近いチームを組んで一緒に西の街に移動することが多いわ。男性も西の街に行くのが多いかな。まず西に行ってそこで慣れるの。でも東に行く人も一定数いる。一番人が少ないのは南かな」


「どうして東に行くの?そんなヤバい街なのに?」


「東の街の先には洞窟群があるのよ。ものすごく多くの洞窟が崖にあるの。その中にゲートがあるかも知れないと考えるプレイヤーが東の街を起点にするの」


 これは新しい情報だ。アヤネによると西の街で台地の下の雰囲気に慣れてから東の街に”出張”して洞窟を探すというパターンが多いらしい。


「洞窟の中は一本道じゃなくて中に分岐があるんだな?」


 俺が聞くと顔をこちらに向けた。


「そう。なのでまだ見つかっていない洞窟、坑道があるかも知れない。それと洞窟の中にいる魔獣は外の魔獣に比べて弱いのよ。弱いんだけど魔石の買取価格は高い。洞窟に入ってゲートを探しながら金策にもなるのよね」


「なるほど。それでアヤネは東の街やその洞窟群に行ったことはあるのかい?」


「西の街から東の街に移動してそこを拠点に洞窟には数度行ったわ。もちろん1人じゃない。その当時の中が良かったチームで行ったの。東の街には1ヶ月ちょっと滞在して、それから西の街に戻ったの。西の街は基本森と草原と山。ゲートがあるとしたら森か山だよね。こっちは治安がまだマシだから腰を据えて活動をしている人が今でも多い」


 そう言ったあとで南は知らないのよとアヤネが言った。南に行かなかった、あるいは行けなかった事情があるのだろう。


 腰を据えて活動していると言っているが、そこで腰を据えるのではゲートは探せない。おそらく年上の迷い人で腰を据えているということは、ゲートを探すことを半分諦めている人たちなのだろう。


 ルリとミサキは私たちどうしようかな。なんて話をしている。俺は銅貨を1枚置いてビールのお代わりを頼んだ。彼女2人が身内の話を始めたのでアヤネが俺の前にくると聞いてきた。


「この街で元迷い人がやってる他の飲み屋には行った?」


「”ケープ”だろう?行った。トムソンと会ってきたよ」


「彼は友人と2人でチームを組んで活動していたらしいの。かなり南の方まで足を伸ばして探索していらそうだけど、ゲートを見つけることは出来なかった。そう聞いている」


「ありがとう。参考になったよ」


 ジョージは席を立った。ルリとミサキはまだカウンターに座っている。


「またお邪魔してもいいかな?」


「日本人を断るなんてしないわよ」


「助かった」


 彼はカウンターの2人組にも挨拶をすると店を出た。

 


 ジョージが3番目の街にやってきてから2週間が過ぎた。彼は毎日朝から夕方まで街の外で虎や熊の魔獣を相手に鍛錬をしている。2体の虎や熊の討伐時間がかなり短くなってきた。街に戻ってくるとあちこちを歩いて情報を集めている。


 ”ケープ”と”なごみ”には3日と空けずに通い、住民以外に同業者からも情報を集めた結果、この街に来る前よりもかなり詳細な情報を入手する事ができた。


 この3番目の街も治安が良い。街を歩いていても嫌な視線を感じる事がない。多くの迷い人がこの街までは通過点として考えていると言っていたのが本当だと実感する。彼らはここで武器と防具を買い換えるとそれで目的達成とばかりに台地を降りて次の街を目指して移動している様だ。


 ただ中にはどの街に行こうと迷っているのか、それとも一歩踏み出す勇気がないのか。一定数の迷い人も残ってる。彼らから見ればジョージも自分達のお仲間、決めかねている奴だと見られているかもしれない。

 

 ポーションの補充で薬屋に顔を出すが、いつも相手をするのは若いアルバイトの女子店員だ。一度は店主と話をしてみたいと思っているがなかなかその機会がなかった。


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