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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第12話

 2人の話は続く。


「この台地から降りた下のエリアになると魔獣の種類が変わる。広大なエリアになるので今まで以上に強い魔獣が徘徊するエリアも出てくる」


 街の周囲はここと一緒でトカゲ、虎、熊だが街から遠くなると、水牛の様な魔獣がいる。自分たちが知っている水牛よりもずっと大きくて鋭い角をを持っている。さらに見たこともない大型の魔獣が徘徊している。


「敢えて言えばサイとカバを合体させたものになるかな。硬い皮膚に大きな牙。草原を走る速度は速いの。身体も大きいから威圧感はすごいわよ」


「俺のこの装備でいけるのかな?」


「ジョージの装備はかなり先の街で手に入るレベルのものだ。台地から降りてしばらくはそれを上回る装備を売っている街はないぞ」


 スモーキーが言っていた情報と同じだ。


「となるとソロで十分に動けるってことだな」


 ジョージが言うとそうなると2人が言った。魔獣だけではなく、もし誰かが襲ってきてもこっちの装備の方が上だから対処できるということだ。


「ジョージはそのリュックとポーチ以外に何か他のものは持ってる?」


 微妙な言い回しでジャスミンが聞いてきた。


 ジョージはポーチの中から皮と布でできた頑丈な袋を取り出した。それを見た2人の目が見開いた。と同時に2人が身を乗り出してくる。


「どこでそれを?」


「それも神の代理からもらったのか?」


 同時に聞いてきた2人。


「これが何だか知っているんだ」


「もちろんだ。人が持っているのを見せてもらったことがある」


「私も」


「これは神の代理からじゃなくて、”スモーク”のスモーキーが安く売ってくれたんだよ。2つ持っているから小さい方を売ってやるってな」


 その言葉を聞いて納得した表情になる2人。


「スモーキーもジョージが今までの迷い人とは違うと気がついたんだな」


「そうなるわね、でないと魔法袋を売るなんてことはしないわよ」


 2人によるとジョージは持っているのはスモーキーが言っていた通り魔法袋の小になる。ただ小でも買うとなると白金貨3枚はすると言った。大になると5枚以上だろうと言っている。


「それでも滅多に売り物が出ないのよ。スモーキーはそれをどこで買ったか言ってた?」


「いや、武器と防具、腕輪については教えてくれたけど、これについては彼は購入場所は言っていない」


「それが買えるというか手にいれるチャンスがあるのはずっと南のエリアにある街だ」


 ジョージによると魔法袋は砂漠の前の街よりも手前、北側にある街でごく稀に売り物が出るらしい。


「お二人は持ってるのかい?」


 ジョージの言葉に2人は首を左右に振った。


「私はそれが手に入るエリアまで行けていないの」


「俺はそのエリアには行ったがその時には売り物がなかった」


 相当なレアアイテムということになる。スモーキーは南の砂漠の手前まで行ったと言うと納得した顔になる。相当の実力者でないとソロでそこまで行けないそうだ。


「聞いている話だけど、道中がいやらしい魔獣のオンパレードらしいわ」


「あそこまでソロで行ける奴はそうはいない。大抵はチームで移動する。それでも簡単じゃない」


 そんな話をした後でゲイリーがジョージに顔を向けた。


「ジョージ、絶対に魔法袋を持っていることを知られるなよ。持っているのが知られると間違いなく命を狙われるぞ。特に街の外では十分気をつけろ」


「分かった」


「それがあると本当に移動が便利になる。先にいくと野営前提での探索になるので大抵は大荷物で移動をするの。荷物が多いと不慮の事故に遭遇する確率も上がる。ゲイリーが言っているけど、できるだけ街の外では人との接触をさけた方がいいわ。そういう意味ではダミーのリュックを背負っているのは正解よ」


 ジャスミンの話を頷きながら聞いているジョージ。


「ジョージ」

 

 ゲイリーが改まった口調で言った。


「台地の上にある3つの街は言わば通過する街だ。ただ、そこを過ぎて下に降りた広大なエリアにある街はそうじゃない」


 さっき言ったことだと思いながらも黙って聞いているジョージ。


「台地の下にある大抵の街には今年やってきた迷い人だけじゃなくて、去年以前にこの世界にやってきた迷い人も大勢いるぞ」


「なるほど。そういうことか。迷い人の数が一気に増えるんだな」


「その通りだ。しかも彼らの全てが好意的じゃない。金銭狙いやアイテム狙いの奴らも多い。向こうから近づいてきたら注意しろ」


 台地の街は通過点、下に降りてからはそれぞれ街を拠点にして活動をしてる者もいれば、彼らを食い物にしようと考えている奴もいる。台地の下に降りてからは無法地帯と思っていた方がよいだろう。かなりのハードモードになりそうだ。


「あと、女に気をつけろ。台地の下に降りてからだが、自分から誘ってくる女はほとんどが金目当てだと思った方がいい」


 ゲイリーが言うとジャスミンが笑った。


「彼の言う通りだと思っていていた方がいいわ」


 迷い人の女性の中には身体を売って生活費を稼いでいる迷い人もいる。身体を売り、対価を得るという商売なら問題ないが、中には身体を売ると言って近づき、男の部屋に入ったところで隠れていた仲間が部屋に入ってきて身ぐるみ剥いでいく連中もいるらしい。


「街の中であまり派手に暴れると住民が追い出しにかかる。なので街の中で気を付けるのはスリや強盗だ。面倒を避ける意味でも街の宿は高いところに泊まった方がいい」


 おおよその理解ができた。事前に想像していたよりもハードな世界だ。ただ、そんな中でもゲートを探して世界中を走り回っている迷い人が多くいる。そいつらは同じ迷い人でも意思が強く、そして剣の技量も高いのだろう。そうでないと生き残れない。


 まずは次の街でしっかりと技量を高めよう。時間はかかってもいい。自分が強くなることが生き残るために最も必要なことだ。


 ジョージが言うと、その通りだと2人が言った。


「次の街に行ったら”ケープ”に顔をだすといい。トムソンならまた新しい情報を教えてくれるだろう」


「ありがとう。一介の迷い人の俺にここまで説明してもらって感謝している」


「最初に言ったがジョージ、お前は今まで見た迷い人とは違う。お前ならゲートを見つける気がしているんだ」


「私もそう。ジョージなら初めてゲートを見つけた迷い人になれるかもしれない。そう思っているから応援するのよ」


「俺たちは途中で挫折した。挫折したがゲートが本当にあるのか。誰かそれを見つけて欲しいとずっと思っている。ジョージ、お前ならやり遂げるかもしれない。俺たちは少しだけその手助けをしているだけだ。最後は自分自身が頑張るしかない」


「ゲイリーの言う通り。頑張ってね。でも無理は禁物よ」


 夜遅くまでケット・シーで3人で話をした。

 翌日から3日間、外で虎やクマを倒し、得た魔石を換金し、遠出の準備をするジョージ。金貨は20数枚になり、十分な資金が確保できた。食料と水も十分な量を魔法袋に収納している。



 出発の前日の夕刻、この日も外で魔獣を倒したジョージは換金を終えるとその足でミーシャの薬屋に顔を出した。この街にいた迷い人のほとんどが既に街を出ており、今街にいるのは50名もいないだろう。同じ格好をしている迷い人を見ることが本当に少なくなった。換金屋も開店休業状態だった。薬屋に入るとミーシャが椅子に座っていた。


「明日この街を出て次の街に向かうよ」


 挨拶をした後でジョージが言った。


「いよいよだね」


「そういうこと。この街でしっかりと鍛錬できたよ」


 彼はポーション、毒消しなどを買い込む。例によって丈夫な麻袋に薬品を詰めてくれるミーシャ。


「ソロだから薬品は必須だしね」


 麻袋を受け取ったジョージがお金を払いながら言った。


「ジョージにはたっぷりと儲けさせてもらったよ」


 ミーシャがそう言って笑った。


「そうだ、ちょっと待ってな」


 麻袋をジョージに渡した彼女は店の奥に消えていった。数分で戻ってきた彼女の手には30センチほどの長さの木彫りの彫刻が握られている。


「邪魔にならないのなら道中のお守りにこれを持っていきな」


 受け取ってそれを見たジョージが目を大きく見開いた。これはどう見ても神の代理の顔をした女性をモデルにした彫刻だ。自分が最初の洞窟の奥で話をした神の代理と瓜二つだ。髪の長さも同じ。木彫りとは思えないほど精巧に彫られている。それにしても何で彼女の木彫りの彫刻がここにあるんだ?


「これはミーシャが自分で作った、彫ったのかい?」


 そう言うと彼女は首を横に振った。


「祖父が街の外に出た時に拾ったって聞いてるよ」


「大事なものじゃないの?」


「大丈夫だよ。家の奥でずっと眠っていたものだから。ジョージが持った方がご利益がありそうだろう?」


「ありがとう」


 女神の木彫り像をリュックの中に入れた。


「気をつけていくんだよ。ジョージ、あんたは今までの迷い人とは違う。何が違うか言えと言われたら困るんだが。あんたは自分が信じる道を進めばいい。そうすればきっといいことがあるよ」


「わかった。お世話になりました。ミーシャもお元気で」


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