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異世界で【ゲート】を探せ  作者: 花屋敷


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第11話

「まずジョージが今までの迷い人と違うという話だ」


 3人の前にには酒の入ったグラスが置かれている。ジャスミンが1杯目は店の奢り、サービスだと言った。


「この世界に来た迷い人ってのは大きく分けると2種類いるんだ。1つはゲートを探す事しか考えない。人より先に見つける、それだけを考えていて遮二無二前に進む事だけを考えている奴らだ。俺はこれに該当する。そしてもう1つはこの世界のシステム、やり方に馴染めない奴らだ。ジャスミンはおそらくこっちだろう。そんな人は来た時からよくいえば達観している、悪くいえば諦めている。とりあえず探してはみるけど自分たちじゃ無理だろうなと思い込んでいる」


「その通りよ。この前ジョージに言った通り。あの空間で天に召された方が良かったと思ったって言ったでしょ?」


「確かに」


 ジョージが頷いてビールを口に運ぶ。


「ジャスミンは付き合っていた男に引っ張られてあちこちを探索したが、そうでない人達、やり方に馴染めない奴らはだいたい4つ目、5つ目の街でゲートを探すことを諦めてしまう。その後はどこかの街で店をしたり、あるいは街の周辺の魔獣を倒して生計を立てながら年を食っていく。俺が今まで見てきた迷い人はガンガン行くやつか、諦める奴かのどちらかだった。ただジョージお前は違った」


「俺は違うのか?」


「そうだ。お前はゲートを見つけるという強い意志を持っている。ただ一方で急いでいない。最初の街やこの街でしっかりと金策をし、街の住民や俺たちから情報を取ろうとしている。同時に街の外で魔獣を倒しながら戦闘技術を向上させる鍛錬もする。そんな奴は見たことがない。普通なら最初の街やこの街はできるだけ早く通り抜けたいと思うはずだ。先に行けば装備も良くなる。それから戦闘に慣れたらいいんじゃないかってな」


 そこまで言ってゲイリーはグラスの酒をぐいっと飲んだ。ジャスミンが2杯目から有料よと笑いながら言って酒を注いだ。


「迷い人の中でソロで活動している奴は多くいる。ただな、そんな奴らでも街から街への移動は何人か集まってチームを組むんだ。即席のチームだけどな。あとは街の外で魔獣を倒している時にも即席のチームを組んで強敵を倒すこともある。ただジョージ、お前は誰とも組んだことない。そう言っていたよな」


「その通り。この世界に来てから誰かと組んだ事は一度もないし、これからも組む事は考えていない」

 

 ジョージは頷いてからそう言った。


「私の様にこの世界に馴染めないと思った人でも、移動の時は即席のチームを組んで移動したわ。その方が安全だからよ。ジョージは何かソロに対するこだわりでもあるの?」


 ジャスミンがジョージのグラスに酒を継ぎ足してから聞いてきた。


「ある」


 ジョージはスモーキーに話をしたのと同じ話、空間から洞窟での出来事を2人に話した。黙って聞いていた2人はジョージの話が終わるとしばらく何も言わなかった。


「そんな訳で俺は周りと違う装備を持っている。性能についても今話をした様に初期装備やこの街で売っている装備とは雲泥の差がある。腕輪もある。俺の装備を奪おうと襲ってくる奴らがいるかもしれない。ゲートを探す以外に余計なことに気を使いたくない。なのでソロなんだよ」


「これは驚いた」


 やっと声を絞入り出したゲイリー。ジャスミンは驚愕した表情のままだ。ジョージは腰に巻いているポーチから素早さの上がる腕輪を取り出すとカウンターの上に置いた。それをじっと見ていた2人。顔を挙げるとゲイリーが言った。


「納得したよ。ジョージが他の迷い人と違うという俺の感覚が正しかった、その理由が分かったよ」


「それにしても最初のあの空間、洞窟でよくそこまで出来たわね」


 落ち着いたのかようやくジャスミンが声を出した。


「性格が捻くれている。物事を素直に捉えることができない。この性格があの場面では助かったよ」


 言いながら腕輪をポーチに戻す。


「ミーシャは知ってるのかい?」


「いや、彼女には言っていない。彼女は迷い人ではないしな。武器や防具のことは一切話してないよ。この事実を知っているのはここにいる2人と最初の街の”スモーク”のマスターのスモーキーの3人だけだ」


「今日こうして3人で話をして正解だったかも知れないな。ジャスミン、こいつならゲートを見つけるかもしれんぞ」


「そうね。私もそんな気がしてきた」


「よし、それならよりしっかりとレクチャーしてやろう」


 2人の元迷い人によるレクチャーが始まった。


「まずは次の街の情報だ。ここから南にある次の街までは1ヶ月程度。途中にいる魔獣も虎と熊、トカゲと変わらない。強さはも同じ程度だ。なのでジョージなら問題なく移動できるだろう」


 これは自分で集めた情報の通りだ。ただこうやって複数のルートから情報を得てそれを擦り合わせるのが大事だと理解している。


「この3番目の街までのエリアではゲートを探す必要はないだろう。過去からかなり多くの迷い人達が調査し尽くしている場所だ」


「そうね、次の街までは言わば準備期間と思ってもいいわね。本格的なゲート探しはそこから先よ」


 二人はそこには無いと決めつけている口調で話をしている。


「調べ尽くしたというのはわかる。ただ本格的なゲート探しがそこから先だと言うのはどういう事なんだい?」


 ジョージが言うと2人が顔を見合わせた。


「いずれ分かるから教えてやろう。最初の街、そしてこの街、次の街、この3つの街は台地の上にある街だ」


「なるほど、台地の上、高台にあるのか」


「そうだ。なのでしらみつぶしに探すことが比較的容易なんだよ、その3番目の街の南の端は台地の端にある。そこから南を見た時に多くの奴がその広さに驚くんだ」


 3番目の南の端から見ると台地の先に広がっている広大な土地には草原や森や川、そしてそのずっと先に山々が聳え立っているのが目に入ってくる。そのどこかに、あるいは更にその先のどこかにあるゲートを探すというミッションだが、生きている間にこんなエリアを全部を探す事ができるのだろうかという気持ちになるのだという。


「それくらいに広い、ものすごく広い」


「3番目の街までは皆同じルートを進むの。でもそこからは決まったルートはない。南、西、東と皆バラバラになるわ」


「台地の下に降りても街はあるんだよな」


「ある。三方向どこにいってもそれぞれ草原の中に街がある。西の街、東の街、南も街とな。ただしどの街もそれまでの3つの街と比べると雰囲気がガラッと変わる。治安が悪い街も出てくる。」


「どうして?」


「さっきも言ったが3番目の街から南を見ると広大な土地が広がっている。最初はその広いエリアの中をあちこち走り回ってゲートを探すが、そのうちにゲートを探すことをギブアップする奴が出てくるんだよ」


「諦める。ということか?」


「そうだ。この世界が想像以上に広いことに気がついて、自分はこれから何年、何十年もずっとこんなことをやり続けないといけないのか。と自問自答する。そして自分には見つけられない、絶対に無理だと決めつけてしまう奴が出てくる。意思の弱い奴は自分は意味のない事、無駄な事をやっているんじゃないかと悩み出すんだ」


 ゲイリーの話を黙って聞いているジョージ。


「台地の下に降りてしばらくゲート探しをした後で諦める人は多いわ。私も彼がいなかったらもっと早くに諦めていたでしょう。迷い人の心を打ち砕くほどに広いわ」


 ジャスミンがゲイリーの言葉をフォローした。


「ゲートを探すことを諦めちまう。諦めるのはいいが、引き続きこの世界で生きていかなければならない。ゲートを探すことを諦めた多くの迷い人は自分の食い扶持を稼ぐために、商売をしたり、あるいは街の周辺の魔獣を倒して魔石を金に変える生活をする。ただ中にはそれすらせずに人の金を当てにして生きていこうとする奴らが出てくるんだよ」


 やばい奴がいると言う話もスモーキーが言っていたのと同じだ。


「そしてその流れがその先でも続くんだ。先に行けばまた街がある。そこにもギブアップした連中が街に住み着いている。いい奴も悪い奴も両方な」


「あんた達、そして最初の街にいるスモーキーもその広い土地からまたこちらに戻ってきたというわけか」


 ジョージが言うとその通りだと頷く2人。


「3番目の街、台地の上から南を見た俺は逆に闘志に火がついた。やってやろうじゃないかってな。そしてそれから19年間、1人であちこち動き回った。ただ俺にはツキ、運がなかった。年も40を越えた。潮時だと思ったのさ。次の街にいるトムソンもそうだと聞いている」


「私もよ。彼が魔獣に倒されて死んじゃった時、たまたま同じ街にいた女性5人組がいたの。彼女達がわざわざ私を台地の上の3番目の街経由でこの街まで護衛してくれたの。そうじゃなかったら帰れなかった」


 2人ともゲートを探すのを諦めた時、店をやるのならこの台地の上にある3つの街のどれかにしようと決めたのだと言う。稼ぐのなら台地の下のエリアだ。ただジャスミンは恋人が死んだエリアには住みたくなかった。


「治安も悪いしね。お金よりものんびりしたいと思ってこの街に来たのよ」


「俺もだ。もう疲れていた。金は持っている、あくせく働くのはごめんだと思ってこの街に腰を据えた」


「よく分かった。次の街まではまあよいとして、そこから先は魔獣以外にも仲間にも気をつける必要があるということだ」


「その通りだ。もちろん中にはいい奴もいる。ちゃんと見極めないと取り返しがつかなくなる」


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