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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第十三章 ブラック校則

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転生しても学ばない


 翔平くんの悩みとは、男子なら誰もが通る道。夢精のことだった。

 インターネットも普及していない90年代じゃ、手軽に自分の悩みを検索することもできない。

 だから身近な人に頼るしかなかった……。


 俺は元男だから別に夢の中でどう扱われようと気にしないけど。

 そのことで罪悪感を抱いているなら、元男の先輩として翔平くんを安心させてあげたい。


「翔平くん。夢のことなんて、お姉ちゃんは気にしないよ」


 そう言って、彼の小さな肩に優しく触れてみる。

 すると、翔平くんは瞳を輝かせて笑った。


「ほ、本当!? 藍お姉ちゃんは怒らないの?」

「うん、怒らないし翔平くんが毎晩見ちゃう夢も嫌じゃないよ。お兄ちゃんが怒ったのは知らないけど……」

「良かったぁ~ じゃあ、これからも夢の中で藍お姉ちゃんと遊んでも良いんだね?」


 彼の問いに俺が「もちろん」と答えようとした瞬間、背後から人の気配を感じた。


「ダメに決まってんだろ! このクソガキがっ!」


 俺が答えるよりも先に、背後にいた人物が怒鳴り声を上げる。

 恐る恐る後ろを振り返ってみる俺と同じセーラー服を着た女の子、優子ちゃんだった。

 没収されたブラジャーの件で職員室へ抗議に行っていたんだっけ。


「え、優子お姉ちゃんだよね……?」

「そんなことはどうでもいいんだよっ! 私の藍ちゃんで毎晩シコるなって言ってんの!?」

「し、シコる……? なにそれ?」


 ヤバい、無知な翔平くんじゃ、言葉の意味もやり方も理解していない。

 逆に”やおい”文化で育った優子ちゃんの方が、そういう知識は豊富なんだ。


「藍ちゃんが許しても、私は絶対許さないからね! どうせ今も藍ちゃんの優しさにつけこんで、胸を触ろうとしたり、お尻を撫でようとか思ってんでしょ!?」

「思ってないよ……なんで、僕が藍お姉ちゃんの身体を触ろうとするの?」

「男なんて皆そういう汚い生き物なんだよっ! シコるなら、道端に落ちてるエロ本でも探して勝手にやってな!」

「ひ、酷いよ。優子お姉ちゃん……僕はそんなこと考えてないのに。お兄ちゃんみたいに僕を怒るんだね! もう誰にも相談なんかしないよぉ~!」


 いきなり現れた優子ちゃんから、激しく罵倒されたため、翔平くんは恐怖から泣き出してしまった。

 そして俺に背中を向けると、そのまま走って逃げていく。

 かわいそうに……。


「フンッ! これだから男は信用できないのよね! あんな風に泣いているけど、どうせ帰ってセーラー服姿の藍ちゃんを思い出しながら、シコりまくるのよ! 藍ちゃんの長くて艶のある美しい髪、甘い香り。華奢な体型なのに豊満なバスト。見た目しか、見てないクソガキね」

「……」


 なんかそこまで詳しく表現できる優子ちゃんの方が危険だと思う。

 

 ~それから、一ヶ月後~


 3学期が始まって以来、下校時間になると校門の辺りに不審者が現れるようになった。

 スーツ姿の若い男性が3人ほど不気味な笑顔で立っている。学校関係者ではないようだ。

 絶対に学校の中へ入らないから。


「学校、おつかれ~! これ、もらってくれるかな?」


 そう言って、大量のコピー用紙を俺と優子ちゃんに渡して来た。

 俺はなんのことだか分からないので、とりあえず受け取ってあげたが、隣りにいた優子ちゃんは「いりません」と冷たく断っていた。

 

「藍ちゃん、別にそんな”過去問”とか受け取らなくても良いのに……」

「へ? 過去問ってなんのこと?」

「この辺の塾がやってるセールスだよ。私は家庭教師がついてるからいらないもん。藍ちゃんだって学年で一番の成績だから、必要ないでしょ?」

「え……ごめん。言っている意味がわかんないんだけど」

「もう、藍ちゃんったらしっかりしてよ! 来週から学年末テストでしょ?」


 ウソだろ!? この一か月間、家でも学校でも寝て食っての繰り返しで何もしてないよ!


「そ、その……学年末テストが悪い子たちはどうなるの?」

「内申点に響くでしょ。高校受験にも関わるから、大事な試験だよねぇ」

「へ、へぇ~ そうなんだぁ……」


 数日で試験勉強とか、無理だよな。

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