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殺したいほど憎いのに、好きになりそう  作者: 味噌村 幸太郎
第十三章 ブラック校則

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モテる女


 クソ……ねーちゃん先生が俺のブラジャーをそのまま持って来たから、クラス全員に派手な下着を見られてしまった。

 普段なら大騒ぎする男子も、サイズの大きなブラジャーを見て黙り込んでいた。

 元男の俺だから分かる。あいつら全員、今晩のおかずにするつもりだ……鬼塚以外は。

 あいつはこういう時、真面目だから頬を赤くして視線を逸らしていたし。



 おかげで気分が下がったけど、無事に可愛いブラジャーを回収できたし、家に帰るとしよう。

 優子ちゃんと一緒に帰ろうとしたが、彼女はまだ教師たちに今回の対応が許せないから職員室に抗議へ行くそうだ。

 「先に帰っていて」と言われた。


「私の藍ちゃんの下着をそのまま持ってくるなんて許せない!」

「……」


 なんで、いつも優子ちゃんは俺を私物化しようとするのだろう?

 

  ※


 中学校からの帰り道、坂道を下っていくと途中で小さな小屋が目に入る。

 無人の野菜販売所らしい。いつも学校の行き帰りに見るのだが、この野菜を万引きされるという不安は無いのだろうか?

 細い道を歩いていると、独特な香りが漂ってくる。


 博多ラーメンよりも更に味と匂いが濃ゆくなった”さつまラーメン”のお店だ。

 噂じゃ真島中学校に通っている生徒の両親が経営しているらしい。

 それなら、その生徒と仲良くなれば、俺も学校帰りに一杯おごってもらえるのだろうか?

 指をくわえて店の中を眺めていたら、お腹が「ぐう~」と鳴ってしまう。

 無性にとんこつラーメンが食べたくなってきたな。家に帰ったらインスタントラーメンを三袋お湯にぶち込んで、ついでにウインナーを6本ぐらい追加するかな。


 そう思って旧三号線の道路に出ると、左側からおかっぱ頭の男の子がランドセルを背負って、こちらへ駆け寄ってきた。


「あ、藍お姉ちゃ~ん!」

「翔平くん?」


 鬼塚の弟、翔平くんだ。

 この前は年明けに俺がスーパーでブラジャーを買おうとした時に出会ったから、鬼塚に止められたもんな。

 久しぶりに会ったから、翔平くんは嬉しそうに色んなことを話してくれた。


「小学校でさ、音楽発表会があってね。僕のクラスが優勝したんだよ!」

「そっか~ 良かったねぇ」

「そう言えば、この前お兄ちゃんと”梶木(かじき)のタイエー”で遊んでいたら、藍お姉ちゃんを見かけたけど。お兄ちゃんが『今はダメだ』って怒るんだよ。なんでだと思う?」

「う、う~ん。翔平くんがもっと大きくなったら分かるかな……」

「そっか……僕が大きくなればわかるんだね? あと、藍お姉ちゃんになら、このこと話してもいいかな?」


 さっきまで楽しそうに笑って話していたのに、急に翔平くんの顔が暗くなる。

 なにか悩み事のようだ。


「いいよ。翔平くんとの話だもん、お姉ちゃんはお友達でしょ? 秘密も守るよ」

「ほ、本当? お兄ちゃんにも話さないでくれる?」

「もちろんだよ」

「あ、あのね……最近の僕はとてもおかしいんだ。去年、藍お姉ちゃんが僕をトラックから助けてくれたでしょ?」

「うん、お友達だから助けるのは普通だよ」

「違うんだ! 藍お姉ちゃんにだけ、今の僕はおかしくなるんだよ!」

「?」


 このあと詳しく、翔平くんの話を聞いたのだが……。

 どうやら今年の初めぐらいに”夢精”が起きたらしい。しかも、その夢の内容が寄りにもよって”相手”が俺だということだ。


「夢の中で僕は赤ちゃんみたいに藍お姉ちゃんの大きな胸のなかで抱っこされていて……僕の頭を撫でてくれるんだ! それ以来、毎日同じ夢を見るんだ! もちろん、お兄ちゃんにも相談したよ。そしたら『二度とそんな夢を見るなって!』て頭を叩かれたんだよ!」

「……えっとねぇ、別にそんな気にすることじゃないと思うよ。男の子なら誰もが通る道だし」

「嘘だっ! いつも優しいお兄ちゃんが僕の頭をあんなに強く叩いたんだよ! 僕はよっぽど悪いことをして、おかしくなったんだよ!」


 鬼塚のやつ、ちゃんと翔平くんに性教育してやれよ。

 それにしても、翔平くんの初めてが俺だとはな……もしかして兄弟揃って藍ちゃんに惚れているのか?

 勘弁してくれ。色々としんどい。

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