オレンジのあの子
………よ、養子ですか。誘拐されてきちゃったけど、フェンリルが親では人間の街ではやっていけないとかでしょうか?
………いえ、私次第だと言いましたね。
森にいるだけならきっと必要はないでしょう。街に行くならの話です。
この問への返事は無理でしょう。ディアさんとレイさんが居ますからね!私には十分過ぎます!
獣の親と人間の親どっちも居てもいい…………。この言葉はちょっと揺らぎました。
野生では…あの森では鉄の加工も瓶の加工も素材がないのです。
…つまり、薬草やお野菜になる植物はあっても、調理器具が作れないし、薬を作っても容器がないから保存出来ないんです。
大きな葉でもあれば包み焼きとかも出来そうですがそれもありません。
唯一食べてた木の実。栄養価があるのでしょう、生で食べても平気なうえに焼いても美味しいと鑑定にありました。これだけでお野菜全般を賄っているのです。
正直……飽きてきていたので、人間の物には凄く目移りします。
もし、本当に人間の街に7年後出てきたら知識がないのは…。
いえ、知識はナビさんにいろいろ聞いたのでそういえば頭に入ってますね。
ふむ?……人間の親の意味は?
あっ!身分証明ですかね?!
お馴染みから教えてもらった小説とかでも、ナビさんの説明にも、冒険者ギルドなるものに身分証を作りに行く。
と、言う話が出てきました。
もし、ギルドなどで登録してしまえばフェンリルのいる森なんて、上位ランクの位置でないと入る許可がないでしょう。
……。……称号のフェンリルの守護者で入れる気がします。
うーん。ううーーん。
「……ふふっ、考えてくれているのですね。ありがとうございます。」
あっ、ランドルフさんに抱っこされたままなのを忘れていました。
「………サイスはほかって置いて、少し長いお話をしてもいいですか?」
ランドルフさんは抱えたままの私をサイスのいたベッドへと下ろしてくれます。
その隣へと座り、お話を始めました。
ランドルフさんのお母様が自分の子供である赤ちゃんをお父様に殺されそうになったのを阻止したことから始り。
…その赤ちゃんを守ったために亡くなったこと。
消息を絶ったのがフェンリルのいる森(古き森って呼ばれてるらしい)で。そこでお母様のご遺体だけ発見されたこと。
赤ちゃんはお母様とは全く別の髪色をしていたことなど淡々と話してくれました。
…………かなり重い話なのですが、なぜ私にその話を?
「……サイスがあなたを鑑定したのですが。」
なんと!な、ナビさんのおかげで大丈夫でしたよね?
………ん?ならなんで名前呼ばれないんでしょう?
「母のその事件は3年前の話なのです。リルは3歳ですよね。」
………ふむふむ、そうですね。
……………………………………んん?
「赤ちゃんの髪色は夕陽のようであったと。」
………………おんや?神様の所で会った子に繋がるのでしょうか?
ふわふわした軽いウェーブのかかったあの女の子が同じ3歳だったとは………どこにいるのだろうと、思っていたんですよ。
まさか、亡くなってませんよね?!!
確かにナビさん居ればサポートして頂くことは少ないと思っていましたが!!
「あなたのように。」
…………。…………………。…………………はい?
私………黒髪黒目。………ふと、肩まで伸びていた髪を見ます。
きれいなオレンジ色で軽いウェーブがかかっています。
……………………ずっと会わないから不思議だったんです。ナビゲートしてくれるはずの子なのに3年たったって現れないんですから。
そりゃ、来ませんよね。
オレンジ色の女の子は自分だったようです。
あの方のご紹介は私の体を決めるお話だったのですね?!
あぁ、………全く気付きませんでした。
…と、言うか。その流れはランドルフさんの妹様、私かも知れないんですか?!
私は自分を指差し首を傾げてみます。…しゃべれない設定でもうしばらく通します。
ディアさんの許可なく変なことしちゃメ!なのです。
「僕はそう考えています。…妹としては父の件で無理でしょう。ならばせめて、僕の子として傍にいてほしいとそう思ったのです。」
ランドルフさんは悲しそうな顔をします。
「母の忘れ形見、もう放れなどしたくい。フェンリルの下にも……本来なら返したくはない。」
……なんといったらいいのか。
「ですが、それはあなたの意思を無視した行為になります。……ですから、せめてもの繋がりを…2番目の父としてくれませんか?」
「んなもん、フェンリル殺しゃあいいじゃねぇか。」
追って来ないとみるや、戻ってきたサイスが開けた廊下のドアにもたれ掛かっていました。
「サイス!なんてことを言うんです!!」
「俺が殺ってやるよ!いい案じゃねぇか!!それでランドルフのもんだろう。そしたら、俺にだって使わせてくれるよなぁ!」
ニヤリと笑ったサイスはその言葉を言い捨て廊下へ出て行きます。
………そんな事絶対にさせません!
わたしは右手を挙げサイスのいる方向へ振ります。
ゴンっ!!
場所指定結界です!
指定した場所に板が出る程度の結界ですが、道を塞ぐによい結界なのです。
私は走りサイスの下へ向かいます。
ドアが開いたままだったため廊下へ出ます。すると、矢が飛んできました。1、2本程度だったのですいっと避けてサイスへと視線を向けます。
「………何だよ化け物。俺に文句があんのか?」
どこに持っていたのか弓を構えたサイスが、私へとそれを向けて聞きます。
動いたら射つ気なのでしょう。
射たれても避ける自信あります!でも、転移されれば追い付ける訳がないのです。サイスを睨む私の前にランドルフさんが庇うようにして入ります。
〈愛されし子よ。帰る気はないのか?〉
「《すっごく帰りたいけど私転移使えないし、使えるのその人間さんしか知らないし………》」
〈ほう、確かに使える事を言っておらなんだなぁ。〉
「《ディアさん呼んじゃったら今日来るって迎えの人が困っちゃうだろうし。………ん?使えるの?》」
〈我とあやつは使えるな。〉
…………って、いつの間にかお隣にいらっしゃいます木の精霊様ー!
あやつってディアさんですかね!
なーんだ、呼んだ方がよかったのですね!
〈2人共連れてさっさと戻るぞ?モエ。〉
「《はーい!お願いしまーす!》」
ふふん。戻れればこっちのもんです!
みんなが居れば怖くなんかないんですからね!
ん?2人?ちょっと精霊さん!ランドルフさんたちも行っちゃうんですか?!




