意味わかんない。
「朝から何よ? って、え?」
玄関の扉を開けると、弟のワーンク――だけではなく、漁師のオーゴの二人が立っていた。
「ラツハ、何かあった?」
後ろからキーリも顔を出してきた。
「弟さんと、昨日の漁師さん?」
キーリが出てきたことで、表情が険しくなるワーンクとオーゴ。
「で、何の用なの?」
私が訊ねると、ワーンクが一歩前に出てきてこちらを指差して言う。
「ね、姉さんを返せ!」
「「へ?」」
私とキーリの声が重なる。
「本当はオーゴさんと結婚するはずだったのに、姉さんを騙して無理矢理結婚するなんてズルいぞ!」
「オーゴと結婚するなんてありえないし、騙されてもないんだけど、どうしちゃったのワーンク?」
「オーゴ兄がそう言ってた!」
「オーゴ? そんなこと言ったの?」
「お前に結婚相手が現れる訳無いだろ! 騙されてるに決まってる!」
「いやだから、女神様の託宣だし。
まあ、私に結婚相手が現れないのはそうかもしれないけど、だからってオーゴと結婚するとか絶対無いんだけど?」
オーゴは何を訳の分からないことを言ってるんだろう?
そしてそれに騙されるなんてうちの弟くんは大丈夫だろうか?
この村の未来を託さなきゃならないんだけど、この子に任せたらマズいかもしれない。
「姉さんはオーゴ兄のことが好きだって」
「誰がそんなことを?」
「オーゴ兄だけど」
どういうこと? どうなってるの?
「オーゴ? 何でそんな事をワーンクに吹き込んだの?」
「お前みたいな女と結婚してやれる男なんて、オレくらいしかいねえだろうが」
「私に結婚相手がいないとしても、なんでオーゴと結婚するの?」
「お前はオレのことが、その、好き、なんだろうが」
「いや、全然」
どう考えればそうなる?
「は? 一緒に話したり遊んだりしてただろう?」
「オーゴが勝手に来てただけじゃない?」
「そんなことねえだろうが」
うーん。どうしよう。意味わかんない。
「ラツハ」
「うん?」
キーリが声を抑えて話しかけてきた。
「うちの母さんの話だと、酷い言葉をかけるとか、イタズラをするとか、嫌がらせをすることでしか、好意を表せない男がいるんだって」
「うん? それはどういうこと?」
「つまり、オーゴさん? は、ラツハのことが好きだってこと」
「え?」
オーゴが? 私のことを? そんな風に想ってたの? えええ? そうなの?
「オーゴは私のこと好きなの?」
「は? ちげえーよ!」
「違うってよ? キーリ」
「恥ずかしくて素直になれないんだと思うよ」
「そうなの? オーゴ」
「いや、その、だから」
しどろもどろなオーゴ。
あの姿からすると、本当に私のことが好きらしい。
あんなに嫌がらせとかしてきて、好きとか言われても嬉しくもないしなんなら引く。
「そんなことより!」
さっきまで目を泳がせていたオーゴの態度が変わり、キーリを指差して叫ぶ。
「オレと勝負しろ!」
宣戦布告されたキーリは、突然の事態にぽかんとしている。
「オレが勝ったらラツハはオレのもんだ!!」
「いや無理だから」
「お前は黙ってろ!」
「私のことだし黙らないけど」
「う、うるせぇ!」
「うるさくても何でもいいけど、私とキーリは女神様の託宣で結婚することになったから、オーゴのものにはならないよ?」
「女神とやらの言いなりでいいのかよ!?」
「うん」
「おかしいだろうが!」
「おかしいかはわかんないけど……おかしいとしても、オーゴとは結婚したくないし」
「うるせぇうるせぇ! いいから勝負だ!」
うわー。話にならなくてめんどくさー。
「キーリ、受けなくていいよ。めんどくさい」
「うん」
「男のくせに逃げるのか!?」
「男のくせに素直に好きって言えない人には言われたくないけどね」
昨日からキーリは、オーゴへの当たりが強い気がする。
「いいから勝負しろ! しねえって言うならラツハはオレがもらっていく!」
「だから、私が嫌なんだって」
「男同士の勝負に入ってくんな!」
はぁ。
「俺が勝ったら、二度とラツハに酷い言葉を使わないって約束してくれますか?」
「キーリ? こんなヤツのことはほっといていいよ」
「ラツハには悪いけど、放っておいたらいつまでもわめいてそうで面倒そうだし」
まあそれはそうだろうけど……。
「オーゴ、だっけ? 勝負はいいけど何で勝負するつもり?」
キーリの昨日の力からすれば、オーゴに勝ち目は無いか。
「勝負の内容だぁ? それはだな、ええと……」
何も考えてないんかい。
「じゃあ、魚を獲ってくる勝負だ!」




