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36.5話 ミオ(ZERO)  37話 蛍真


自分の精神世界の中で人化したセレンはケーシンの作った部屋に戻ってきた


しかし入り口の壁からドアが消えていた。


「え?」


すぐ横にドアが作られておりそこから部屋に入ったが既にケーシンの姿は無かった


中を見渡すとドアは2つに増えており最初からあったドアも内側には合った。


「このドアは?」


ガチャリ☆


そのドアを開け中に入ると全く同じ部屋がそこにあった。


そこには椅子に座ったままのケーシンがまるで魂の抜けた人形のようにあった。


「ケーシン!」


セレンはすぐにケーシンを抱きしめるがその異常にすぐ気づいた。


そしてすぐにその先にあるドアに異様な気配を察知した


(信じられない、こんなことがあり得るの???)


そのドアは別宇宙(パラレルワールド)へと続く扉となっていたのだ


神種であり神龍のセレンは起こりえた可能性を探っていく。


「しかし。。。」


誕生したばかりの宇宙は神でさへ手出しできない。その全体に創造主の力が行渡るまでは。


時空間が安定せず他者の介入を一切許さない宇宙なのだ。


しかしセレンは躊躇う事無くドアを開けその新たな宇宙に飛びこんだ。


空白の世界の先に真っ黒に膨張続ける宇宙を捉える


その宇宙は広がりと共に奥に奥に離れていき速度が増している。


巨大な神龍の姿となり全身を魔素で覆って光速のスピードで飛ぶ。


やがて神種の想速を超え宇宙の外にたどり着いた時は付くはずのない傷が鱗に入り傷だらけとなっていた。


光を超える摩擦熱が全身を覆った魔素を突破して外側の鱗にまで影響を及ぼしたのだった。


しかしその宇宙の空間全体からケーシンの気配を感じるセレン


その気配はドンドン希薄になっていく。


「ケーーーシーーーーーーーーーーーン!!」


セレンは宇宙の中心を目指し縦横無尽に飛び続け同時に左手に全神経を集中しケーシンの気配を集めていく。


丸い気の様な塊がセレンの左手に少しづつ集まっていくのだった。


◇◇◇◇◇◇


「俺を呼ぶ声が聞こえる・・・あの龍は、、、あぁあの声は・・セレンさんだ」


「凄いな・・さすが神龍様だ・・・・」


「わざわざ探しに来てくれたんだ、、こんな俺の為に、、、勿体ないですよ」


意識が宇宙と同化しケーシンは意識が朦朧となり眠気があるが眠れないまるで微睡(まどろみ)の中に沈んだ状態だった。


そういえば昔こんな感じで過ごした日々があった気がするけど、もう思いだせない、、、な


感覚が広がっていく様に自分の意志でも如何しようもなくなっていた。


それから、原子から光の粒子にまで霧散していた俺の意志、魂はセレンの手の中に集まり、はっきりと眼を覚ましていく。


どれくらいの時が経ったのだろう


「!セレンさんボロボロじゃないか!やめて!!これは俺が選んだ道だ」


左手から感じたセレンさんの姿はエメラルド色の鱗に大小の亀裂が入り魔素がかなり薄くなっている


俺は左手に納まっていく光の玉の中にいた。玉となった俺はまるで雪だるまのように飛び散った俺の意志を吸い寄せている


「ケーシンはこの宇宙の創造主になることを望んでいたの?」


「・・・でも・・俺は神様たちの意志を理解したんです」


「それはケーシンが本当に望んだ意志ですか?」


「えっ?」


全身ボロボロな神龍。。。


セレンさんにそう言われてハッとした。


その時、急速に意識が覚醒していった


流れのままに受け入れていたがそう言われてみれば


(すべては仕組まれていたこと)なんだ。


今更だがそこに何か違和感を覚えた。


俺の記憶を一緒に見て、知ってくれている神龍セレンさんの言葉は重かった。


何か重大な見落としがある!


あぁ俺の悪い癖だ、魔神になってもこの性格は変わらないらしい。


まさに、蟻の一穴でダム崩壊・・である


俺は自分の意志で散り散りになっていた魂の残滓の残りを一気に玉となった自分に宇宙から収束させていく


左手の玉が光って神龍の全身を包み込んでいく。


光は傷を修復し急速に癒していく。


しかしそれは意に反した【創造主の力】だ。。。


神種の回復というものは長い時間をかけた人々の祈りと本体の自己修復しかないのである


魔神であろうと神種の回復など不可能なのだ。


「俺は、、、、セレンさんと一緒にいたいです・・・・」


何か長い夢を見ていたかのような感覚から俺は言った。


そしてこのまま、この宇宙から出て帰ろうとした時だった


「!!」


信じられない事に気配が消えない


この宇宙に自分が。。。まだ俺の気配が残ってる


自分の魂の残滓は全てこの玉に統合しているはずなのに。。。


考える俺を持ったままの神龍セレンの前にあれが表れた。


「・・・帰るのですか?」


それは薄赤く光った塊、今は人の形をして儚くぼやけた感じに見える。


「ZERO」


俺は玉の状態でそう呟いた。


それを見つめたセレンさんがハッとして小さく呟いた。


「この魂はケーシンの子供・・・娘さんですよ」


「!!」

頭が真っ白になった、いや今は頭もないし光の玉と化してはいるのだが。。


(俺は独身なのだ)

(隠し子を作った覚えもない)


そんな俺をセレンさんの目がジッと見つめる


(やめて~そんな目で俺を見ないで~俺は無実だーーー涙)


「本来の人生を歩んでいれば生まれた魂です」


セレンさんは寂しそうにそういった。。。


「!!」


衝撃だった。


こんな姿でなかったら涙流して泣いたかもしれない。。。


神様達の試練に合わず普通の人生を歩んでいれば誰と結婚しようと生まれる筈だった運命の自分の娘だそうだ。。。


ZEROと言うのは名前すら付けられぬ魂って意味か。


「いいよ。。。私、残るよ」

俺達をみたZEROはそう言うとスーっと宇宙の空間に消えていこうとした


それは悲しすぎるだろうと。


考えてみれば、この娘は俺がそんな試練に巻き込まなければ人として生まれ人間として人生を歩めたんだ


たった一人でまた創造主の代わりなんてひど過ぎるだろうが。。。俺は歯がゆさに震えるだけだった


(可愛そすぎるだろ!!)


「ケーシン!!彼女に名を与えて下さい!」


俺はハッとして「ミオ!ZEROお前の名前はミオだ!!」


何も考えず咄嗟に閃いた名前を叫んだ。


その瞬間消えていこうとした人型の赤い光に人の顔がボンヤリと浮かび少し笑ったように見えた。


まるで最後の光を放ったかのように。。。


「ケーシン決断してください!」

「チャンスは一度、今この瞬間しかありません、この宇宙とこの魂どちらを選びますか!?」


「!!!」


「ミオーーーーーーーーーーッ!」


刹那、神龍の姿が一瞬更に巨大化しそのミオを含めた空間そのものをパクリと飲み込んでしまった。


その瞬間この宇宙がまるで違う雰囲気に、音を立てて不穏な状態になったのが分かった。


意思なき宇宙はこんなにも脆いものなのか!?


元の大きさに戻った神龍セレンさんはそのまま俺を左手に抱え反転と同時に宇宙の外を目指した。


確かにそれしかないのだろう。


最悪一つの宇宙の崩壊が俺の頭を過ぎる。。。。


それでも俺は自分の為にこれ以上犠牲者を出すわけにはいかないのだと自分に言い聞かせた。


そんな中、俺の頭の中で思考が急速に加速していく


それは魔神としての覚醒なのか?それともこの宇宙の創造主として備わった権能なのか?


俺はセレンさんの手の中に玉と化して落ち着いている。


それは壊れようとするこの宇宙からの離脱であるはずなのに


まるで自分の家を置き去りにするような自分でも分け解らない感情が芽生えて来たのだ。


それは自分でもまだやったことのない分身を自分の意志とは関係なく玉が勝手に分裂を始めたのだ


まさに細胞分裂であり手に持たれた玉はそのまま二つの玉となったが


分裂したもう一つの玉は手の外側に現れ宇宙に投げ出された。


それは宇宙に吸い込まれるように光速で飛ぶセレンさんの遥か後方に一瞬で置き去りとなった。


その時まるで自分が消えていきそうな心細さが魂の全身を襲った。。。



必死で飛翔するセレンさんがこの事に気付いているかは分からないが


それでもどこか安心している俺がいる、少なくとも宇宙の崩壊は防げたと思えた


何故なら・・・・・・・


宇宙(そこ)が静けさを取り戻していたんだ。




俺は自分に出来る事を考えセレンさんの飛ぶ方向へドアを引き寄せるイメージを送った。


セレンさんを虹色の光が包んでいく。


想念世界に繋がるイメージは一瞬でセレンさんを転移させていく


なんども何度も~


辺りの宇宙空間が希薄になり白っぽい空間となった時


遠くに長方形の小さいドアの形が光って見えた


帰って来たのだ。。。ドアの前でセレンさんは人化しノブを回した。


俺は光の玉の状態でセレンさんに続いて一緒に入り


目の前の自分の体に入ろうとした。


だが瞬間体が拒絶反応を起こし弾かれた


何故!!


それは魔神の力そのもの、また現在は創造主の権能まで備えている


このまま体に戻れば肉体が暴走し一気に魔神体に変質して部屋ごとぶっ壊しかねないのだ。


俺はその玉の状態を保ったまま自分の額に納まるイメージした


そこで起こったのは玉となった自身の反物質化現象だ。


眉間から丸い光となった自分が内側に沈んでいくが玉自体は別存在として眉間の裏側に鎮座したようだ。


同時に自分の意識が脳内に戻ったのが感じられた


「は、、ははは」


目を開けた時、角が歪に変化していたが他は体に異常はないようだ。


目の前にはセレンさんが心配そうに座って俺を覗き込んでいた。。。


俺はいつの間にか椅子から倒れセレンさんが横に座って見守ってくれていた。


「ただいまです・・・セレンさん」


「お帰りなさい( ◠ ◠ )」

俺はその時のセレンさんの笑顔を生涯忘れる事は無いだろうと思った。。。





遥か・・・遠い宇宙の果てでこの世界(パラレルワールド)から2柱の存在が消えた。


本来生まれる筈だった魂を連れて。。。


私は・・・蛍真


私が・・・変わる事は無い。


魔神となった私の中にあっても消え去ったはずの蟠(わだかま)りは簡単に消える事は無かった。


思い起こせば痛みや苦痛を感じていたらトリップした時点で魂は魔素に耐えられずリセットされ掻き消えていただろう。


元々の私の願いは痛みや苦痛からの逃避だった・・・


それこそが神様達の思惑通りの願い。


私は選択したつもりでも最初からそれを願わされていたのだ。


なら魔神とまで変貌するに至った魂は何処でそれを救ってやることが出来るのか。


ならば私は用意されたこの宇宙を利用しよう。


誰でもない、この私がそれを行う・・・例え神だろうが私の邪魔は・・・・させない!


そして私はこの宇宙に溶け込んで文字通り創造主となった。


ただ意識すればどのような形にせよ具現化も可能なのだ。


そして時間の流れすらここでは私の意志のままだ。


元々時間のない世界に作った世界だ。時間の流れも私の意志通りのスピードになる


ただ流石に逆行は不可能だったが、それを気付いた私は時間を進めていった。


玉の形だった意識体がこの世界に光の粒子となって拡散して肉体も精神体といった実態は既にない。


だがこの世界に私は厳然と存在している。


瞬き一つの感覚で一千年が経過していく。


生まれる星雲、恒星系、惑星、衛星


その中には地球の様な星もたくさんできた。


その一千年毎の間に私の意に反する種族の隆盛も凄かった


人間、魔人、獣人、亜人、爬虫類人


動物も魔獣もそれは様々な物が生まれ死んでいった。


私は最初の内は慣れないままに目に留まった星々に介入した。


何故なら人間へと進化する哺乳類は圧倒的に弱いのだ


爬虫類や両生類等は環境さえ整っていれば圧倒的に強く進化も早い


その中では哺乳類は進化する余地すら与えられない


いわゆる爬虫類人(レプティリアン)が支配者になる星が圧倒的に多かった。


しかし彼らの生活習慣をみて私はそれを許す事が出来なかった


彼らは卵から生まれ一定の数に達すると発達し孵卵器のような施設で大量繁殖していく


その栄養素は哺乳類である、人間は家畜だ。


その扱いと処分方法は。。。。


私はその種族を許さない、絶滅の一択である!


隕石を降らせ絶滅させたり、怒りにまかせ惑星ごと破壊もした。


既に私は何百何千億もの爬虫類人に限らず私の怒りに触れた様々な人間を含めた亜人、魔人、種族を創造主権限で


命や魂すら滅っしていった。


だが・・・だから何だというのだ、私は創造主だ文句があるか。。。である。


この世界(パラレルワールド)の持ち主は私だ、私が作り私が管理する世界だ。


私に文句を言う存在はその瞬間に永劫の地獄をその魂に刻み付けてやる。。。


創造主である私は自身の内に繰り返される地獄の全てを受け入れねばならなかった。


何もせず自然に任せるのもまた自己責任なのだ。


目を背ける事も出来ない、耳を塞ぐことも出来ない、それは弱者が一方的に蹂躙される世界だ。


何時の世界も勝者が歴史を作る、その陰で泣き叫び無情に生きたまま魂を壊される者を誰が救えるのか?


悍ましいなんて言葉で片付けられない現実が私の中で繰り返される


やがてその流れが分かるようになるのだ、ならばそうなる前に私は創造主として審判を下す。


悲劇は起こる前に対象を消滅させる、恐らくそれは創造主でないと理解できない事だろう。


この世界では絶対に覆る事の出来ない唯一絶対の理がある。


それは私が死ねばこの宇宙も死ぬ事という事、宇宙は永遠ではない・・・誕生があれば消滅もあるのだ。


宇宙は偶然や自然に存在する物ではない。意思を持って存在しているのだ。


最早、私に寿命という概念はない、殺されるか自死しない限り死ねないがそれは不可能なのだ。


よって自分が何もしなければ永遠に魂の安らぎを齎すことは出来ないという事だ


だから私は躊躇しない、意見を云う者も存在しないし言わせもしない。。。


私は黎明の時を繰り返し、始まりを繰り返す中で死力を尽くし理想の世界を齎すため


魔神の力を行使していった。


雷と闇の権能は創造主の力を借りて凄まじく天地を裂いていった。



それから私は100億年ほど繰り返した世界の果てに時の変化を感じた。


この宇宙に散らばる星々の中に神のランクにまで達した者達が表れはじめたのだ。


彼らは私を創造主として崇めた。


不思議な気分だが、ならばあとは彼らに任せればいいのか?


私は既に人の姿を持っていない、だが意識すれば人型に具現化する事は出来る


私は全てを見て来た、しかしそれらを知ってはいても既に記憶はしていない。


云うなれば自分のパソコンにデーターとして大記憶容量のハードディスクに保存して普段は探さねば


見つけられないというのと一緒だ。


やがて彼ら神々はこの世界の安定と発展の為に異世界から


世界の異なる者を次元を渡らせ転移や転生をさせていった。



安定と落ち着きを築き始めていく世界・・・新たな流れが作られ始めたのだ。


あぁ・・・ひょっとしたら、私はもう、安心して休むことが許されるのだろうか?


私の前に数多の神々が並ぶ、私は彼らに一つだけを命じた


この世界において他者を思いやれぬ騒音で人を苦しめる人間や組織体に対しては絶対の地獄を与えるようにと。。。


決して行為を忘れさせる事無く、逃がす事なく、創造主命令として厳として罰せ。。。と。


彼らは平伏し創造主の言葉を胸に刻んでいくのが分かる。。。


あぁそうか・・・これで私の旅も終わるのかも知れない。。。


ケーシン・・やがて君にもこの気持ちが伝わる時が来るだろうか。。。


そしてこの思いのままこの宇宙と一体化していく感覚に初めて安らぎを感じながら具現化していた姿は


本当の意味で薄くなっていく。


そこには55歳の蛍真の姿、やや初老と化して安らかに微笑んだままの姿がだんだんと消えていく


それを側で見ていた神々は崇敬の念を持って静かに見守っていた・・いつまでも。。。


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