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勇者達 4


聖セレスティア歴1991年

10の月 9日 曇り


帝都王城前中央広場


王族や貴族達の為に高く陣が建てられズラリと着席が終わり静まり返っている


皇帝や皇妃は落ち着いた顔を装っているが横の皇子の2人からは青褪めた表情の焦燥感が伝わる。


妹と思われる皇女2人は涙を隠せない。


中心にジュンイチのオブジェを乗せた火炙り用の処刑台と


断頭台が横に設置されている。


広場には帝都市民が多数集まりその成り行きを見守るかのように処刑台に注目が集まる

執行は昼の0時丁度である。


時刻は11時30分 勇者タイキは陣の隅に無表情に立っている


口元はブツブツと独り言を言っているが。。。


(大丈夫か、ほっとけばそのまま後追って自殺しそうな雰囲気じゃないか)


賢者セイヤは陣の上には上がらず一般市民の中にあった。服は図書館司書の服しか持っておらず


この場には若干の違和感を醸(かも)していた。


【後に大陸唯一の3Sランクの冒険者パーティ・異空の旅団】

【それを率いるのがこの賢者セイヤであり、また『大王の左手』の当事者となる彼である】


セイヤは帝都図書館でこの星アンゴルモアやムー帝国の歴史に文化を調べるのと同時に


図書館館長ビルギット・カタストロフ(93歳)を師に賢者としての指導も受けていた


豊かで真っ白な髭を膝まで伸ばした彼は見るからに魔法使いなイメージだが


若い頃は帝国大魔法使いとして帝国直属の幹部だった人物である、


引退して魔力も以前ほどではないが魔法の知識は彼の右に出る者はいない。


セイヤはその性格からえらくビルギットに気に入られ余すことなくその知識を教えられた。


結果、魔法の実力では今では使える者がいなくなった空中浮遊や空間転移もセイヤは


使えるようになっていたのである。


そしてタイキ達ほどではないにしろレベルは倍の63にまでなっていた。


賢者セイヤ、ステータスこそ違うが彼もまた間違いなく勇者なのだ。


(人の処刑を公開するなんて悪趣味すぎる)


セイヤはここが地球の常識は通用しない事を分かってはいるが


それでも知った人物が黙って処刑されるのを見ていられなかった。


(何か他に道は無いのか?僕に出来る事は何か無いのか?)最後まで模索するのだった。


正直な所あまりクラスメートの2人の事は意識していない、同情するつもりもなかった。


仲が良かった方ではなく・・・というか友達も少なかったのだ。


だから彼らは自己責任なのだと割り切っていた。


ただ自分達を召喚した皇女が黙って処刑される理不尽さに納得がいかなかった。


そして同じ陣に上がるのを拒否し市民と共に事態を見つめますと人混みの中に入っていったのだ。


市民のなかには黄金のマントをしたエルフが所々に合計5人位いて目を引いた。


マントには龍の紋章が描かれている


ムー帝国に於いて龍の紋章は大神殿側の人間を意味しており

如何なる場合であれ彼らに手を出す事は許されない。


同時に彼らが大神殿の名に恥じる行為を行った場合は

セレスティアの名を汚す行為と見做され人より遥かに重い罪が与えられる。


(彼らに話しても、、、無駄なんだよなぁ)


セイヤは人混みの中を分け入って歩いていく。


(どうしようもないのか。。。)


勿論自分のスキルを使って助け出そうとか逃がす事など色々考えもした。


しかしこれは大神殿への人類側が決めた贖罪なのだ


誰も好き好んで処刑を望んでる人間はいないのだ。


これを中断させれば恐らく大神殿から人類へ審判や粛清が来るだろう事はセイヤにも予想出来たのだ。


人混みを抜け普段は商店街で賑わう脇道への入り口に出た。


そこは普段とは違ってガランとした空間が出来ていた、ここからも広場は見渡すことが出来る。


しかしセイヤはそこで信じられない者を見る。


最初は自分しか居なかったはず。


それは瞬きをした瞬間いきなりセイヤの目の前に現れた。


黄金のコートを羽織ってこの世の者と思えないように輪郭が白金に光り全体がぼやけて見える


身長は180㎝位はあろうかと思われる長身の女性。


西洋風の顔は鼻筋が通って透き通るように凛々しく金色の眼が人ならざる雰囲気を醸している


ボリューム感ある金髪は腰まで伸び、絶対的な貫禄と覇者とも思われる雰囲気にセイヤは息を飲んだ


頭には白銀のティアラが着用されてその左右にはデザインされた角が長く伸びている。


要所要所に如何にも高そうな宝石が散らばっていた。


彼女の目線は広場の処刑台を真っすぐ向いている。その横顔にセイヤは時を忘れ見惚れた。


「・・・なんて・・美しいんだ・・」


無意識に声が出てしまった。


地球ではアイドルやモデルといった美人の類はテレビで見慣れているが、それらとは全くの別次元の美だった。


思わず見とれたまま棒立ちのセイヤにその女性が声に気付いて視線を向け目が合った。


「なんじゃ異界人、儂が見えるのか?」


上から見降ろす形のまま声を掛けられた。


「あ、ごめんなさいっ!」


セイヤは思わず口から漏れた言葉と視線が合った恥ずかしさに真っ赤になって思わず俯き頭を下げ謝るのだった。


そう、実はセイヤも女性には全く免疫が無かったのである!


しかも相手は究極の女神とも言える人化したセレスティアだった!


それはレベル1の勇者が突然最終ダンジョンでラスボスを前にしたのと同じぐらいのインパクトであった!


「おかしいのう?分神体の儂が人に見えるわけないのじゃが?」


「お主、特殊な権能を持つ魔人か何かか?」


セレスティアは微動だにせず無表情のままジロリと視線をセイヤに落とした。


「い、、いえぼ、ぼくは、いや、わわたしは、け賢者のセイヤといいまう」


・・・嚙みまくりである。。。


セイヤは心底自分が情けないと思った、早くこの場から逃げだしたい、恥ずかしすぎる感覚に包まれるのだが。


同時に稲妻に打たれたように直感が閃き理解する、この女性が恐らく神龍セレスティアなのだと。


どういう経緯か知らないがこれが運命ならばとセイヤは腹を括った。


「セレスティア様、どうか皇女をお助け下さい!」

「僕達を召喚した皇女に罪はありません!」


セイヤはその場で正座し手を付いて顔をセレスティアに向け懇願した。


「これは人種が判断を下した贖罪じゃろう?異界人が儂に覆(くつがえ)せと言うのか?」


セレスティアは冷たく問いた。


「いいえ、これは僕の贖罪です!代わりに僕の命では代償にはなりませんか!?」

「異世界人の僕達のせいでこの国の皇女が犠牲になるのは納得いきません!」


本心だった、どっちにしてもこのままじゃ不信感から帝国からもやがて見放される。

皇女が処刑される原因を作ったのは自分達異世界人なのだ

セイヤは必至で頼む。、、その真剣な目はセレスティアに届くのか?


誰かが責任を取らなければいけない。

ジュンイチは当事者だがそれを放置した罪は僕にもあるんだ。


「・・・ふむ。」


「・・・・・・」


その時ちょうど正午の鐘が打たれた。


断頭台に首を乗せられた皇女に括り付けられた刃の縄が切って落とされた。


刹那待っていたかのようにタイキが飛び出した。


タイキはまだ17歳なのだ、結局、皇女の為に一緒に死んでやる事しか思いつく事が出来なかった。


だがそれでいいとも思った。


教皇が自分に言った「自分の意志を優先しなさい」その意味が分かった気がした。


落とされた首が落下する前に自分が抱えその後自分も剣で自らの首を落とす覚悟だった。


しかしバッと駆け出した瞬間、広場全体に恐ろしい程の磁場が発生し辺りが真っ白な光に包まれた。


断頭台の刃は縄が切れた瞬間に光の粒子と化して一瞬で搔き消えた


集まっていた市民全てが立っていられなくなりその場にしゃがみ込んだ。


それは陣の上の皇族や王族、貴族達も例外ではなく座ったままの椅子の上にも強力な重力が伸し掛かる


声にならない悲鳴が辺りに響き騒然とする中、市民達は恐る恐る顔を上げ


その光の出所らしいところにいる賢者セイヤと黄金のコートに身を包んだ一人の女性に目を向けた。


それはまさに神龍セレスティアの女神の姿による降臨である。


セレスティアはその瞬間、分神体に本体が転移し実体化した。


その際に磁場が乱れ周囲の魔素が暴走し空白の空間を広場に作り出した。


その場にいたエルフ達は慌ててセレスティアの元に駆け寄り膝まずいた


そして


「我らが主、神龍セレスティア様のご降臨である」

「一同そのまま伏して控え、無礼なきよう心得よ!」


一人の女性エルフの叫び声が広場に響き渡る


陣の上の皇帝や貴族達も慌てて椅子から降りてその場で平伏した。


それは神龍セレスティアの龍の姿しか伝承で知らない皇帝を始めとする帝都市民からすれば


女神の姿のセレスティアの降臨はまさに世界がひっくり返るほどの衝撃であった


しかし龍の紋章を持つエルフの言葉に偽りはあり得ないのである。


「あれは最早、魂が壊れておるわ」


その場でセレスティアが右手をジュンイチのオブジェへ向けた


火炙り台にあったオブジェはその処刑台ごと青白い炎に包まれジュンイチは魂ごと原子分解され無に帰していった。


そして


「儂がセレスティアじゃ!今回の人種の贖罪を受けた」

「異界人、賢者セイヤに感謝するのじゃな!」


覇者の風格を帯びた声が広場に響き渡る。


そして黄金の光に包まれセイヤを引き連れ消えさったのだった。


その後騒然とした広場は大騒ぎとなった。


たちまちそのニュースは大陸全土の国々にニュースとなって駆け巡ったという。


助けられた皇女は側まで来ていたタイキの想いを見抜いており


何やら熱い雰囲気が出来上がったが・・・それはまた別の話である。


◇◇◇◇◇


「・・・と、いうような事があって儂はその異界人のセイヤから地球の事に付いて


いろいろ聞きだしたんじゃ。」


「ごめん、ちょっと何言ってるかわからない。」


グラスを口に当てジト目でセレスティアを見つめるセレンだった。

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