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勇者達 3


(殺される!)


ジュンイチは初めて死を意識した。


昔からクラスでは親分気質で持ち前の腕力で仕切る方だった

当たり前の常識や御託並べる奴でも自分が机をドンと叩けばみんな黙る


納得いかない話には力押しで筋を通す

クラブは柔道部で黒帯だ。

弱い者いじめは許さない正義感も人一倍強かった


下手な知識よりも物理的な強さに憧れがあった

クラブ活動でも人一倍基礎体力作りに努力した。

仲間意識も強いほうだ。

剣技はこっちで初めて習ったが割と相性も良くて向いてるのかもと思った。


RPGゲームもタイキから誘われ嵌まりもしたし

裏ワザや効率のいい攻略を考えるのも好きだった。


しかし今回は先走りが過ぎたのだ!時間停止スキルに有頂天になり過ぎた

モンスターを一方的に倒していくうちに無敵感に翻弄(ほんろう)されてしまった


「ちくしょう、悪夢だぜ」

相手のレベルからいっても逃げる事が難しいとわかる。


(ここは潔くするしかねぇか)

セリアが「死は与えられない」と言った言葉に一縷の望みを感じた。


生きてさえいれば裁判でも何でも受けて生き延びてやり直す事も出来るだろう

また怒られもするだろうが何事も経験だと思った。


(そうだ、ここはいったんリセットだ。。。)

(別にここでは誰も殺しちゃいない、一方的に攻撃された俺達は被害者だ)

(俺達は異世界から来た勇者だし、この世界の人間じゃない)

(魔王を倒す為ワザワザ召喚を受けた、殺されるわけないじゃないか。。。)


例え裁判されても俺は17歳の未成年だ、間違う事は当然だし失敗もする

こんなレベルの魔人がいるなんて分かるはずないじゃないか。


帝都なら俺達人間は人権が保障される。

なにより魔王討伐に絶対俺達は必要なんだ、俺は聖騎士だぞ。


セリアが歩いてくる少しの間にジュンイチの思考は駆け巡った。


ーそして考えうる最善の判断にいたるー


「降参だ、捕虜でも何でもいいんで裁判にかけてくれ」


目の前にセリアが迫った時、剣を地面に投げ捨て手を上げ降参の格好をさらした。


セリアの手が腰にある剣を取ろうとしたのが見えた時


ジュンイチの両足が膝から下がスパッと一瞬で切られストンとまるで達磨倒しの様に膝で立つ格好になった。


一瞬何が起きたのか気付かなかった、目線が落ちて目の前には自分の両足が転がっている。


なのに痛みが全く伝わて来ない - 時間停止である -


切り口はその瞬間で時間は完全に停止し切られた処からは血も流れていない。


「う、うわわわっわっわあああああああああああああああああああああああ」


ジュンイチはその一瞬で理解した、(これは時間停止だ!)


切った瞬間も分からない、その切り口の時間も止められている


遥かにスキルの練度もレベルが違う。


ゾッとした寒気が全身を襲った。


血の気が引いて貧血状態になるが今はそれどころじゃない


剣を放り投げてバンザイして降参した俺をぶん殴りたい、心底そう思った。


慌ててその場で土下座した、頭を地面に擦り付け自分の知る精いっぱいの懺悔(ざんげ)をした


「ごめんなさい!すみませんでした!お許しください!!お助け下さい!お・・・・」


ジュンイチは17年間生きて来て初めて絶対の屈辱を覚えた。

まさに心の中で血の涙を流し自分の惨めさに反吐でも出そうな思いだ。


しかし


次の瞬間、ジュンイチは見る


目の前に自分の腰から下半身が舞い上がりそれが爆散する様を。


目の前が肉片と血で真っ赤になるがそれが地表に落ちる事は無かった


爆散と同時に原子分解され血の一滴すらも空中で霧散したのである。


だが腰から下が無くなっても痛みは伝わって来ない


それらを見せられ声も出ないのに気を失う事すら許されない。


セリアは地面に敷き詰められた50cm四方の石板の中から1枚を魔力で浮かせジュンイチの前に落とした


その石板の上に7本の剣が天を指すかの如く逆向きに突き出た。


ジュンイチは浮き上がり、その剣の上に落とされる


「ぐぎゃっああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


ドスン、グサりと肉を裂き貫く感覚が全身の神経を駆け巡り痙攣(けいれん)と痛みで発狂する。


心臓の近くまで届く剣先に体がドンドン黒ずんでいく。


その叫び声に呼応するかのように剝ぎ取られた石板の地面から無数の金色の蛇が這い出て


剣とジュンイチに絡みつく


一匹の小さな蛇が叫び声を上げ続けるジュンイチの口に網目状に縫って口を塞いだ。


やがて絡み終えた蛇たちは古びた縄へと変化し人間の上半身のオブジェが出来上がった。


ジュンイチは叫び声を上げる事も気絶する事も出来ず、ただ痛みによって脳内はのた打ち回る。


目は見開いたまま眼球はそれぞれ明後日の方を向き涙が垂れ流れる。叫び声を出そうとすると激痛が走った。


ほんの一瞬の事だった、目の前の悪夢をタイキは腰を抜かし茫然(ぼうぜん)と見るしかなかった。


目の前で何が起こってるのか理解できない。青褪め立ち上がる事も出来ないタイキを前にセリアが言い放った


「貴様らの為に罪もない人間が死ぬ」


仮面の隙間から覗く青い瞳は何処までも冷たく魂が凍りつく感覚にタイキはガクガクと震えるだけだった。


次の瞬間セリアが剣を鞘(さや)に仕舞ったと同時にジュンイチとタイキを光の輪が包んだ。


そして飛翔しそのまま山脈の麓(ふもと)の大ムー聖堂の広場の中央に落とされた。


広場に光の塊として落とされたジュンイチのオブジェを見て


辺りにいた参拝者達から悲鳴があがり、泣き叫ぶ者もでた。


警護に当たっている騎士も突然の事態に動揺し騒然となる。


その時、ムー大聖堂の上空にセリアの声が響く。


〔我は大神殿守護者セリアである、人類不可侵の地に無断で踏み入った者があった、統治者はその裁きを7日の内に下せ〕


偶然、広場には大神殿の魔人が3人来ていた。

翻(ひるがえる)るマントに龍の紋章がある。


3人は急いで大ムー聖堂の教皇の元に走り事態の報告に向かった。


報告を受けた教皇は広場に向かい無残なオブジェと化したジュンイチと呆然と座ったままのタイキを見つける


「・・・・そうですか。皇帝の城へ向かいます」

「誰か。」


騎士長が飛んできて事態を納めるよう動揺する騎士たちに命令を下す。

「第1と第3の隊は2人を城まで運べ!民に見られるな!!」

慌ただしく対処されていった。


お城では教皇を招き、各国から伯爵以上の貴族が緊急招集され

慌ただしい会議が5日間交わされた。


激しい激論が昼夜延々と続いた。

最終的に聖騎士ジュンイチの処刑と召喚に携わった第一皇女の処刑が決定された。

処刑は帝都の中央の広場で2日後に執行される事となった。


通常、今の時代に罪人の処刑は公開されないのが普通だが今回は大神殿への無断侵入である

大神殿側に人類の下す対応を見せ贖罪せねばならない。

処刑はジュンイチは火炙(ひあぶ)り、皇女は斬首によって行われる事となった。


また事前に情報も流された。

聖騎士ジュンイチが婚約者のいる皇女に恋慕し王女もそれを受け入れた。

2人は相談し、大神殿で暴れる事でその怒りを帝都に向かわせ世界を混乱させようとした。

その混乱の隙(すき)に異世界人の世界に一緒に逃亡しようと皇女が持ち掛けた。

勇者タイキはジュンイチを止めようとしたが間に合わなかった。


そんな内容の情報操作がマスコミに寄って流された。


即ち国民の不信を皇女を悪者にすることで事態を抑えようと考えたのである。

これは収集が付かない討論に皇女自らが提案した具体策だった。


国民に人気ある皇女が処刑されて国民の不信を大神殿に向けさせるわけにはいかないのだ。


人類不可侵の大神殿に、召喚された聖騎士が勝手に入り半殺しの目にあったなどとは言えることではない


間違っても国民が大神殿に疑念を持つ事になってはならないのだ。

そうなれば帝都だけではなく大陸の文明そのものに危機が訪れる事を王族は周知している。


今回もっともまずかったのは大神殿の守護者が名を名乗り裁きを下せと言ってきたことだ。

帝都には数百年に及ぶ間の逸話が残されている。


守護者の名をないがしろにした国家はこのムー帝国の歴史の中からある日忽然と姿を消している。

記録文献にある失われた国家の中には今の帝都をも上回る繁栄を為した文化もあった。

それが一夜のうちに前触れなく次のページが無くなっているのだ。

人類にとって脅威となるのは神龍に寄る絶対的な審判だけではない。


議論の際、タイキの処遇をどうするかでかなり揉めた

タイキは勇者であり魔王討伐の切り札である。


しかしジュンイチを召喚した責任をもって皇女が死を持って償う事で

異世界への帰還が叶わなくなることにもなる


タイキは魔王討伐を条件に罪に問われない格好となった。


皇女は自らの罪だからと運命を受け入れていた

帝都の第一皇女は聡明で民からの信頼も厚かった。

その美貌と民への思いやりから貴族学院でも近寄りがたいオーラに包まれていた。

年も17歳とタイキ達と同じ年だ。

実は魔力の高さや人を近づけがたくする程の容姿と品格を前に

臆して未だに婚約者に名乗り出る者がいなかった。

貴族の縁組要請にも皇帝は中々首を縦に振らなかったのだ。


家庭の問題と将来の事を全て自分で捌いてきた苦労人のタイキだが

皇女から召喚をされ始めて見た時まさに心が奪われてしまっていた

所謂一目惚れ、初恋だった。

口には出さないが勇者として呼ばれ、この女性の為なら魔王でも倒せる。

その為の力が欲しいと心の奥底で思っていた。


しかしその女性が処刑される

ジュンイチもだが自分がもしジュンイチを止めていればという後悔と懺悔。

さらに皇女が死ぬことで母と妹が待つ自分の世界にも帰れなくなる

タイキは自分を呪い泣き叫び閉じこもった。。。


一方、城にいたセイヤは一切関わりなしという事で不問にされた

帝都では万一の為の保険と考えられたのだろう。


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