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勇者達 2


アンゴルモアの世界には「スキルに踊らされるな」という諺(ことわざ)がある


人に余るスキルは持つ者を最後に滅ぼすと言いう意味だ。


聖騎士ジュンイチに備わったスキルは【時間停止】という超レアなものだった。


このスキルは勿論タイキを始め誰にも口外していない。


もっとも、スキルに関しては自分の手の内を見せる事であり詮索しないのが暗黙のルールである。


レベル70を超えた時にこのスキルが発現しジュンイチは天にも昇る気持ちになった。


相手がどれ程強かろうがレベルが高かろうが時間を止めてしまえば簡単に倒す事が出来るのだ


それからの遠征中はジュンイチの独壇場だった。


剣を向けた相手の時間を止める。正確には相手の周りの空間への干渉である


さらに持ち前の腕力と聖騎士の高速を超える剣技で面白いほど経験値が入っていった


まさにゲーム感覚で楽しめたのだ。


しかし相手のレベルが70ではそれ以上の経験値が入らなくなった。


(面白くない・・・) それが、、、本心だった。


そんなジュンイチの本心をタイキは見抜いていた。


2人は小学校の頃からの友達で家も近所だった。


スキルにしてもジュンイチが攻撃しようとすると敵の動きが止まったように映る。


それは勇者の目でないと気付かないほどの一瞬の違和感だった。


タイキは暴走気味のジュンイチを心配して一人にはさせられないと思った。


ジュンイチの云う裏ワザに関しても少しばかり興味がないわけでもない


確かに強くなればそれだけ地球に帰る公算が高くなるのは間違いではないのだ。


大ムー聖堂では連絡を受けた教皇が直接勇者と聖騎士の2人を出迎えた。


これは特別の対応である。


教皇が民の前に姿を表すのは一年に数回しかない。


ずらりと並んだ鎧に身を包んだ屈強な兵士たちの前を教皇が拝殿まで案内していく。


聖堂の中は中央に噴水がありその中心に3m程の黄金で出来たオベリスクが三角形の形に3本並んでいる。


拝殿はその奥にあり天井のステンドグラスから独特の光の帯が注がれている


そこには高さ30mはある神龍セレスティアの黄金の龍の神像が鎮まっていた。


下から見上げるそれはまさに圧巻で神龍の威厳が嫌でも伝わってくる。


「我らが主、神龍セレスティア様 異界の勇者と聖騎士に祝福と御加護を賜る事お願い奉ります」


拝殿前で案内してきた二人を後ろに教皇が龍の神像に向け祝詞をあげる。


目を瞑り胸の前に結んだ手から白い光が輝き龍の像を照らす。


「・・・・・・」

目を開けた教皇は振り返り


「お二人に神龍セレスティア様の御加護がありますようにお祈り致します」


「ありがとうございます、頑張って魔王倒して見せますよ」

自信ありげにジュンイチが答える。


目を伏せ相槌(あいづち)をコクンと打つ教皇


教皇は30歳位に見えるセミロングの黒髪の女性である。

煌びやかなローブに身を包んでいる。一応人間である。

一応というのは年齢が500歳を超えた仙人でもあるのだ。


そして二人の帰り際、タイキを呼び止めて一言助言した。


「勇者タイキ様、あなたはご自身の意志を優先しなさい」


キョトンとするタイキだが

「勿論です、ありがとうございます!」


そう挨拶を返した

それを見つめる教皇の目はどこまでも寂しげで2人の後ろ姿を見つめていた。


大ムー聖堂を出た二人は返す刀で認識阻害の魔錬丹を使った


これは遠征時に手に入れたレアな魔石で作られている、

一定時間対象物を意識の外に置くといった力がある。


それに加えて勇者の能力の透明化で気配も消してムー大聖堂の中へ戻っていった


ここを抜けなければ大神殿には行けないのだ。


だが呆気ない程に簡単にムー大聖堂を抜ける事が出来た


騎士達は誰一人タイキ達に気付く様子は無かった。


山脈を登って大神殿の入り口まで何事もなくたどり着いた。


此処までは予定通りだ。


(後はここを支配してるセレスティアっていう龍に合えば何らかの変化や裏ワザが発動するかも知れない)


所謂ゲーム感覚である


ここを守っている連中もそれなりに強いだろうから


最悪それだけでも十分な経験値稼ぎにはなるだろうという考えもあった。


ジュンイチは龍如きが人間様を支配するとは何様だという感情をずっと持ち続けていた。


しかしそういった思いは神殿に入ってすぐさま打ち壊される事になる。


ここは絶対の人類不可侵の地である。理由や立場一切の言い訳は通じない。


直ぐに認識阻害の魔石はパリーンと呆気なく砕け散った。


刹那(せつな)大量の光の矢が二人に襲い掛かった


「いきなり攻撃かよ!!」


ジュンイチはすぐさまスキルを発動させ矢に剣を向け時間を止め真っ二つに切り落とした。


「どういう事だ!透明化も解除されるのか!!」

ジュンイチは叫ぶが

タイキは呆然と突っ立たままだ。


「やばい!ジュンイチ直ぐ引き返そう!」


すぐにタイキが叫んだ


ジュンイチはハッとして

「おい、あのエルフ達のレベルはどれ位あるんだ?」


勇者には鑑定眼がある、ジュンイチはそれを遠征の時に聞かされ知っていた


周囲には複数の男女のエルフが左右から弓矢を構え2人に光の矢を引いている


今は柱の陰に隠れふたり寄り添った状態だ


「みんなレベル200超えてる!あり得ないよっ!!」


それを聞いたジュンイチはニヤリと笑った。


人類の限界レベルは99である。


それは敵が弱いからそれ以上の経験値が入らなかったからだと考えたのである。

今、目の前にレベル200の経験値が転がっている

ジュンイチにはそう見えた。

「よっしゃあーーーっ!経験値倍増ーー!限界突破イベントきたーーーーー!」


叫ぶより早く柱の陰から一番近くに捉えた男エルフに聖騎士の光のスピードで接近する。


「取ったー!」


明らかに男エルフよりも早く剣を繰り出した


咄嗟にエルフは短剣を取り出し素早く剣で捌こうとするが


ジュンイチの時間停止が発動する


「先に攻撃してきたのはお前たちだ!恨むんじゃねぇぜっ!」


剣を振りかぶりエルフに向かって振り下ろした


・・・・が


剣はジュンイチの手からドスンと鈍い音を立てて勢いよく地面に落下した。


「何でっ!!」


青ざめ慌てて剣を拾おうとするが間髪入れずエルフの短剣がジュンイチを襲う


「ジュンイチ!!」


タイキが魔法で風を飛ばしエルフの攻撃の邪魔をした。


ジュンイチがエルフを切ろうと剣を振り下ろした時


剣に数百キロの負荷が掛かり持っていられなくなったのだ。


ジュンイチの持つ剣は特殊で本人が持てば遥かに軽量となる魔法が付与されている


感覚的には細い棒きれのような感覚で扱うことが出来ていた。


だから何らかのトリックが使われたとジュンイチは考えた。


しかし、ここにいるエルフ達はセレスティアの眷属である。

時間停止といったスキルは超レアではあるが唯一無二ではない。

レベルの高い魔人や亜神となった者には当然備わってる者もいるのだ

故にその対処法も確立されている


ちなみにケーシンがいた時空の狭間などは完全に閉ざされた時間の中であり

異空間やアイテムボックスの亜空間ではそれぞれ時間の流れが違う

時間操作はそれらを知っている者からすれば総じて驚くほどの事ではないのだ。

{余談であるがケーシンが自ら作り出したドーム内には時間が存在していた、それはアンゴルモアの時間軸に合わせた時の流れを自らの記憶が作り出したものだった}


時空間魔法の対処魔法は時間の変化が発生した時にのみ自動的に身体を超重力が包み込むシールド防御が働く。

この魔法は生涯に一度かければ永続する魔法であるが実は重大なデメリットもある。


だが停止された時間内においては魔法ですら物理干渉を無効化する事が出来る為、エルフ達は殆どがその魔法をかけている。


更にここは「空」の権能を持つセレスティアの眷属が守る領域である

ジュンイチのスキルはここでは何の意味も為さない。


そんなことにまで思い至らないジュンイチだがスキルが通じないなら

単純に聖騎士としての技能に頼るしかないのだが

スキルに頼る戦いに慣れ、技を磨くのに意味がないと怠っていた。


ならばレベル差しかないのだがLv75に対し敵はLv200。

此れでは戦いにならない、数も一方的に不利だ。


最早(もはや)逃げるだけだと、後悔は後回しだとばかりに

タイキの方へ走り出す

「失敗だ!退散するしかねぇ!」


バスッドスッグサッ!!


その時背中に3本の矢が突き刺さる、


「ちぃいいいいい!」


「タイキーーーー!」


転がるようにタイキのいる柱の根元まで転がり込む。


だがタイキを見ると棒立ちで青ざめて血の気が引いている感じだ。


ふとタイキの向いている方に顔を向けると一人の魔人がゆっくり歩いてくるのが見えた


黄金の鎧にマント、兜は目元まで覆われ鼻と口しか見えていない

兜の後ろから長く真っ白な髪が靡(なび)いている。

鎧の左胸には龍の紋章。


ゆらりと山吹色の残像を残しながら陽炎でも掛かったかのようにジュンイチの目に映った。


「我は神殿の前衛守護者セリアである、ここは人類不可侵の地故、侵入者を排除する」

「また我ら眷属に剣を向けた報いとして死は与えられない事を覚悟せよ」


一方的に勝手な事を言われジュンイチはムッとした

まるで派手な鎧にも「コスプレかっ!」と突っ込みたい気分である


最初に攻撃してきたのはそっちじゃないかと。

俺達はワザワザ異世界から呼ばれてやって来た勇者だぞ。。。


「ジュンイチ・・・720・・だ」


タイキが涙声で呟いた


「はぁ?何言って?」


「・・レベル・・・あの人のレベル720・・・・あるよ」


そういって涙を浮かべタイキは力が抜け、崩れ落ちた。


この時初めてジュンイチは自分の愚かさに気付いた


レベル720とか、もはや人外であり神の領域だ。


自分がレベル75でここまでやれるなら、それは想像の範疇のさらに外である


さらに頼みのスキルが一切役に立たないのだ。


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