勇者達
その時、召喚された地球人3名のステータスはそれぞれ
勇者、聖騎士、賢者だった。
過去の文献によれば1名でも召喚成功なのを考えれば破格の成果である
召喚は帝都の第一皇女によって為された、魔力が人一倍高くその容姿からも聖女とも噂され民の人気も高かった。
勇者 タイキ 17歳 Lv52
聖騎士 ジュンイチ 17歳 Lv54
賢者 セイヤ 17歳 Lv30
ここムー帝国において
兵士の平均レベルはLv30である
騎士でLv40
Lv50を超えると士官クラスとなり
Lv60を超えると名前に敬称が付く
Lv70超えは数える程しかいないレベルである
この世界にも冒険者ギルドが存在しており
そこでは功績に応じてランクF~Sがありそれが冒険者の絶対的判断基準となっている
レベル自体はそれほど重視される事はないが
一応、LV0~∞と人間以外の人種も想定されている
またそれぞれが持つスキルや魔法もそれほど重視されない
魔錬丹のような魔道具で殆ど魔法と同じ効果が行えるように発達しているからだ。
一部の特殊なレアスキルや魔法については例外として秘匿されている。
勇者タイキ達3人は同じ高校の3年生で放課後、教室に居る時に召喚を受けた
ブレザーにネクタイ姿と制服のままだった。
タイキとジュンイチの2人は親友同士でセイヤはあまり人と話す事が好きではない
この日も一人図書館で本を借りて帰ろうとした所を運悪く一緒に召喚されてしまった。
ただ3人とも異世界物の漫画やアニメなどは見ておりRPGゲームも好きだ。
召喚を受けてジュンイチは一人ガッツポーズを決めたがタイキは酷く動揺した
彼の家は母子家庭で母と妹と暮らしている、自分が卒業して家族を守っていかないと
と就職先を色々考えていた。
セイヤは大学進学の予定で召喚を受けて無事に帰る事が出来るのかとばかりが不安だった。
3人が召喚を受け魔法陣から出た時にそれぞれのステータスが表示された時
そのレベル値の高さから周りからは歓声が上がった
その様子を見て、悪い気はしないなと3人は思った。
召喚をした皇女が言うには
「魔王を倒していただければ一年後に同じタイミングでそれぞれが抜けた時間軸の
そのポイントに送り戻す事が可能になります」
その際に倒した魔王から取り出す魔石のエネルギーが異世界転移には必要だという事だ。
ジュンイチが勝手に召喚された事に文句を言ったが魔王を倒せば功績によって財宝を与えられ
それは戻る時に持って帰っても良いと提案された。
歓喜するジュンイチだが
これを聞いたタイキからは一瞬、躊躇った雰囲気が感じられた。
ジュンイチの「帰りたくないのかよ」という言葉に我を取り戻し
「いや、問題ないよ・・・それ良いよな」と納得した。
その後3日間この世界の事を城の中で教わった後、騎士団と一緒に10日間掛けて魔獣の生息する山のダンジョンまで
剣や魔法の訓練、スキルの確認などの為に遠征することになった。
ただセイヤは一緒の同行を拒み一人帝都図書館を利用する事を申請して聞き届けられた
曰く
「僕のステータスは賢者だから、まず知識を学びたいです」
「多分、足手まといになるだけですから・・・」
ステータスを言い訳に訓練から抜けたのだった。
2か月後遠征から戻った2人はレベルが75となっていた。
それは勇者のステータスに恥じぬレベルである
一緒に同行した騎士団も後半からはジュンイチには付いていけなくなったという話だ
2人は異世界転移した時にもらったスキルで魔物や魔獣、オーガやレッサードラゴンすら倒していった。
剣スキルや魔法もゲーム感覚で面白くこなしていった。
だから
「俺達なら人類限界のLv99も突破出来るかもしれないよな」
ジュンイチの言葉に
「ハハハ、それだと魔王が可哀そうになるね」
相槌を打つタイキ。
「いやいや俺は聖騎士だけどさ、その先を目指すぜ!なんだか分かった気がするんだ」
「限界突破、最強の名を手にしてこの世界の伝説になってやるぜ」
「おいおい、あんまり無茶するなよ」
「取り合えず魔王を倒して無事に帰ることが優先だよ」
「へへ、わかってるって!」
そんな2人の体育会系のノリの会話を横で聞いて溜息を付くセイヤ。。。
今は帝都のお城、謁見の間である。
2人の遠征からの帰還の報告が始まろうとしてた。
帰還した2人は聖騎士の名に劣らぬ立派な鎧と勇者タイキには伝説の鎧が与えられそれぞれマントを装備している
一方セイヤは図書館司書の制服だ、ほぼ図書館に籠りっきりだったので
むしろ制服の方が違和感ないだろうと宛がわれていた。
そして2か月間、図書館でこの世界の歴史や知識などを調べた。
結果、この世界における理は神龍による審判が重要なカギであり、それが常識である事を学んだ。
要は実在する神に寄る審判、ジャッジメントは人の世界の遥か上にあるという事。
それは神龍がNOと言えばNOでありYESならYESという理
そこに人間世界の常識や思惑は入り込む余地がなく、恐ろしいが逆に理想的とも思えた。
この世界は言い方を変えれば人類や魔族も含め神龍の庇護のもとで生かされている。
世界には3柱の神龍が存在し、そのうちの1柱がセレスティアという名の神龍であり
聖ムー大神殿に実存し君臨している。
それらを調べていく内にセイヤは戦慄していく、いやむしろ感動したと言ってもいいだろう。
(なんて理想的な世界なんだ)
(神の意志に守られ人の文化は発展し、間違った流れには神が直接裁くという仕組みか)
(地球では国ごとの疑念や政治の葛藤の中で世界が回ている感じだが、この世界ではそれらが意味を持たない)
賢者としてのステータスがそう思わせたのか、セイヤにはこの世界が理想郷に思えた。
そしてずっとここに住んでいたいと言う欲求が強くなっていった。
それは財宝を貰って早く地球へ帰りたいと思う2人とは対照的だ。
そして皇帝が来席して貴族達が見守る中それは起きた。
Lv75となり数多くの魔物を倒し魔石や素材を持ち帰った、
もはや周辺のダンジョンに脅威となる魔物はいないと聖騎士のジュンイチが豪語したのだ。
魔王を倒すのにそんなに時間は掛からない安心して任せて欲しい・・・と。
Lv75の聖騎士が高々と口上を述べて、貴族たちはその場で大いに盛り上がった。
しかしその後に続く発言で顰蹙を買う事になる
「人類が神龍に支配されているのは可笑しいんじゃないですか?」
「その原因は大神殿に何か原因があると考えます」
「自分達が召喚された真の意味は神龍から人類を解放するのが本来の目的なんじゃないでしょうか?」
「魔王がボスだというのなら・・・・」
「真のラスボスは帝都の側の怪しい場所にいるのが定説です!隠し設定ではよくある事なんです!」
「間違いなく、そこだーーーっ」と
聖騎士のジュンイチが大神殿の方向へ剣を向けたのだ。
周りは呆気にとられ、まさに
「何この子??アホの子?」
一瞬で貴族たちを白けさせてしまった。
其れよりさらに側にいたセイヤを驚愕知らしめた
(こいつ馬鹿か・・・)と。
文献によればこのムー大陸で現れる魔王のレベルは150前後と人類の限界を超え魔力も人間の10倍はあるとされている
帝都周辺の国に点在する山やダンジョンで確認されている魔物の上限レベルは70程である。
それでも通常の兵士や冒険者では数を集めねばとても対処できないレベルだが。
最初の遠征でジュンイチは勇者のタイキを出し抜いた。後半は
一人でレベル70クラスのレッサードラゴンやオーガにトロールを倒していった。
勇者であるタイキは魔獣化した猪や狼に熊、スケルトンにゴブリン、オークなどを相手にしていた。
一緒に遠征していた騎士団もジュンイチの動きには脅威を抱くしかなかったのだ。
本来2ヶ月間の遠征ではタイキのレベルで調整するのがベストだった。
しかしパーティに寄る同率経験値取得という勇者のスキルを持つタイキはおかげでレベルが同じく75となったのである。
ジュンイチの発言を聞いた皇帝は諭す様に言った。
「聖セレスティア大神殿は人類不可侵にてムー大陸の聖地である、そうそう軽々しく思い廻らす処ではない」
「今の言葉は聞かなかった事とする、そのような言葉を2度と発言しない事を厳に願う」
動揺する貴族達にもその場で閉口令を出した。
そして大神殿に剣を向ける事は許される事ではないと諫めた。
魔王討伐に呼ばれた異世界人でなければ
その場で切り捨てられても文句言えない不敬発言である。
3人を召喚した皇女も酷く心配げだ。
聖騎士のジュンイチだがクラスでは親分気質で我が道を行くといったタイプである。
自己顕示欲が強く正義感も人一倍強かった。
そんな彼が皇帝に発言を諫められた。
彼にしては面白くなかったのだろう。その場では平伏して下がったが納得はしていなかった
(なんで人間が龍なんかに怯えて暮らさなきゃいけないんだ?漫画やゲームの世界まんまじゃねえか。)
遠征ではレベルが75になってから敵を倒していく中で途中から一向に経験値が入らなくなった
ゲームならこの辺で神や元魔王らと絡むイベントが始まって一気にレベルアップする裏ワザがあるはずと考えたのだ。
翌日ジュンイチはタイキを誘って大ムー聖堂へ向かった。
「神龍様に失礼な発言をしたので反省して祈りを捧げに行きます」
宰相にそう言うと許可をもらえた。
それは口実だった。
さらなるレベルアップを求め裏ワザを探しに行くのだ。
そして念の為、勇者であるタイキも一緒に来てくれるよう頼んだ
後半は聖騎士よりも勇者が強くなるのはゲームしてる者からすれば常識だ
なら早めにタイキに覚醒してもらった方が楽になると考えたのだ。
タイキとは昔からの親友で同じゲーム仲間でもある
だからレベルアップの裏ワザを探しに行こうと誘ったのだ。
確実に元の世界に帰る為には俺達はもっと強くなる必要がある。
タイキは皇帝が言った事や皇女の心配した表情から必死に止めたが
この先何があるかわからないんだ。
旅立つ前にレアな装備やレベルアップはゲーム攻略の基本だろうと
確実に帰るためには怪しい所は調べ尽くすのが常識じゃないか?
そういうジュンイチにタイキもそれ以上言い返す事が出来なかった。
「まぁ確かに確実に帰るためだもんな・・・」
「じゃあ・・・仕方ないか。。。」




