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来訪者 1


時間を少し遡(さかのぼ)る


ケーシンがセレンの前から消え


次元の狭間へ帰ってからしばらく経った頃


大陸アトランタルの上空に竜人のミラとソーラの2体の姿があった。


竜人のいで立ちは武装のない真っ白にデザインされたローブに黄金のマントを羽織っただけの簡単なものだった。


≪本来アトランタルでの軽装は魔物達によって即座に死をもたらされる程の愚かな行為である≫


其のうちの1体、ミラが天に向かって魔法陣を展開し頭を垂れ問い掛ける


「神龍セレン様、我らが主セレスティア様からの書状をお持ちしました」


「気に留められましたらば、どうか我らが前にお姿をお見せください」


2分ほど経ち空の磁場が乱れ亀裂が生じそこから100mは有ろうかと思われる緑色の神龍が表れた


「書状?」


訝(いぶか)しげにセレンはその竜人を見下ろした


2人は空中で跪(ひざまず)き目を伏せ片手を胸に当て恭順の意志を示している。


セレンはもう一人の掲げる箱を目の前まで浮かせ中にある書状を広げた。


中にはアトランタル大陸で起きたとされる【大王の左手】事件について詳しい


経緯を教えて欲しい。


聖セレスティア大神殿まで来て欲しいと言ったセレスティアからの要請であった。


「あなた達が案内すると?」


竜人ミラ

「はい、案内させていただきます」


竜人ソーラ

「はっ」


「・・・・・・・」

少し思案するセレンだが。。。


「・・・良いでしょう、面(おもて)を上げなさい。」


ミラ・ソーラ

「ありがとうございます」


2人は許され顔を上げた


そこで目の前の神龍セレンを見て息を飲んだ


エメラルドの様に透き通った鱗(うろこ)が神秘的な輝きを放ち


緑色の瞳の瞳孔は黒く深くその眼に自分達の魂の奥深くまでを見通されている気がした


銀色の鬣(たてがみ)が風に靡(なび)き正に神種の趣を呈しているがそれが嫌味でもなくどこまでも自然なのだ


2人は呆然(ぼうぜん)と見とれたが直ぐに目線を落とし胸に手を当てお辞儀した。


この竜人2人は見た目は20歳程の女性の姿だが実際の年齢は2000歳を超えている


神龍セレスティアの信頼する侍女にして側近である。


現在ムー大陸を統治している人間の王帝でさへ


この竜人のどちらかを介する事でしかセレスティアの意見を伺(うかが)うことは許されていない。


いわばこの2人の竜人にムー大陸の帝都の全権が委(ゆだ)ねられているのである。


その意味はー


「2人ともレベル999ですか、竜人として超越者に達してますね」


「大した物です、セレスの側近ですか?」


ミラが恐縮して答える


「はい、ありがとうございます。恐れ多い言葉です」


ソーラは口を閉じ言葉を発しない、相手は神龍である


セレスティアの侍女として使える2人は神龍という存在の意味を如何(いか)なる者達より知っている。


例え自分達がレベル999の竜人であれ魔人種であれ神龍の気分を害すれば


一瞬で消し炭にされる存在でしかないのだ。


しかも今回はセレスティア以外の初めて見る神龍だ、緊張するなという方が無理である。


(セレスが地上の神殿に居る?)


(側近を持ち、使いにやるなんてまるで人種(ひとのしゅ)の様な真似ですね。。何の思惑でしょう?)


と、自分は先程までケーシンの作った部屋でビデオを見ていた事はまるで別の話だと考えないセレンだった。


「・・・・・」


通常アンゴルモアでは神龍が自分の統治するエリア外に赴(おもむ)く事は無い


例外は他の神龍による審判の後である。


自分のエリアに影響を及ぼさないか確認の為、該当エリアを飛翔する。


その際も神龍同士が合って会話する事など過去に数回程度しかない


故に今回はそれほどの興味を引いたという事なのだろう。


セレンにも【大王の左手】には思う所があった。


それはケーシンの魂が自分の所へ迷い込む前に起きた事であるが恐らく魔神本体の


仕業だろうという確信はあった。


エリア内であるアトランタル大陸に残った魔素の気配はケーシンと同じものだったのだ。


アンゴルモアに置いて神龍の影響下にある大陸は3つ存在する


セレンのアトランタル、セレスティアのムー、そして一番面積が広い、イリスのレムルアである


その中でも文明はセレスティアのムー大陸が一番の繁栄をしていた。


セレンのいるアトランタルは唯一南半球にのみ大陸が位置しているが


霊峰プルケリマを頂点とするプルトン山脈に寄ってその強すぎる魔素で他の大陸からの侵入が叶わず


そこで誕生する魔人や亜人それに魔獣らは他の大陸に比べレベル上限が二桁ほど超えている者も存在する。


地理的な磁場と海洋による妨害、そこに生息する狂暴な魔獣や亜種達によって


外界の者が近づくことは叶わない状態にある


ただこの星は魔素に寄る魔学が発達し、魔獣が持つ魔石や鉱山に眠る魔結晶から


錬金術を介して火・地・風・水・光・闇・雷それぞれの働きを持った魔錬丹という大小様々な装置が作り出され広く行き渡っている。


それは地球での科学文明に匹敵する程の便利さを作り出していた。


故に地球で云う科学の発達はしていない、むしろ必要なかった。


さてここのムー大陸だがアトランタル大陸の丁度裏側に位置する赤道を中心とした


アメリカ大陸を南北くっ付けたような感じの大陸である。


帝都は北半球にある三日月形状の山脈の裾野に城壁都市として広がっている。


その周辺には現在31の国々がそれぞれの国王によって統治されているが


ムー帝国の皇帝によって大陸全土の平和が維持されている。


人種は人間がメインだが国に寄ってバラツキはあるがエルフや魔人、亜人といった者も共存している。


神龍セレスティアは帝都を見下ろす山脈中腹の大神殿にある巨大な搭にいる。


竜人ミラは了解を得て空中に巨大な魔法陣を展開して神龍セレンを中心とする200m程の


広さの空間を閉ざした、丸い透明なバリアを貼ったような感じである


そのまま成層圏に向け音速を超え飛び立つ。


面倒な移動手段だが神龍の影響下にある大陸にはそれぞれ結界が存在し


魔法やスキルに寄る空間転移が不可能なのである。


ちなみに今いた空中は成層圏にかなり近い所だった。


気温摂氏-80度 酸素濃度も低く竜人でもレベルが低ければ長くは居られない場所である。


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