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神龍セレン 1


白い空間、眼下に雲海が広がり一匹の龍が青く澄んだ空を泳ぎながら俺を見下ろしている。


俺はそれを見上げ呆然(ぼうぜん)と立っている。


あぁまた夢か。。。


気付けば懐かしい服を着ていた。


今では珍しくなった詰襟に校章の付いた学生服だ。


(もう二度と着る事はないと思っていたのにな・・・)


今ではブレザーが一般的になってこういった学生服も街ではいつの間にか見かけなくなった。


自分は17歳当時の姿になっている。


髪もボリューム感あるサイドバックにテクノカットw


左目は完全に隠れているww


懐かしい。。。思わず昭和って言葉が頭を過(よぎ)った。


暫くぼーっと龍の泳ぐ姿を見ていると目が合ったのか俺の存在に気付いて


その龍が目の前に降りて来た。


(大きいな、、、百メートルは有ろうかと思われる長さの龍である)


(ちなみにドラゴンとイメージされる竜ではなく日本の昔話に出て来るような細長い龍だ)


俺は前に夢の中であった地元の熊神神社の龍神がすぐに思い浮かんだ。


(あの翁の龍神の姿だろうか?)


しかしその思惑はすぐに訂正された。


「ふふっ、この世界に迷い来て存在できるものがいようとは。。」


奇麗な女性の声でその龍は呟(つぶや)いた。


凡そ10mほど斜め上空にその龍の姿がある、皮膚は緑色で体全体もやや緑がかった鱗で覆われている。


二本の角は鹿のようなお伽話の其れであり、そこからサラサラとした銀色の鬣(たてがみ)が遥か後方まで棚引いている。


眼は透き通った緑色だが真っ黒な丸い瞳孔に自分の魂の奧深くまで見通されている感じがする。


直感で地元の龍神とはまったくの別の龍だとわかった。


「あなたは・・・何者ですか?」


俺はその声を聞いてハッと我を取り戻した。


(この龍に逆らってはいけない!)


直感というか本能で俺の心がそう告げている。


この龍からは全然敵意も恐怖も感じないのだが意味もなく鳥肌が立った。

別次元の何かを感じずにはいられなかった。


対応を間違えれば瞬時に消滅させられると思えるほどの予感が走る。

発せられた声自体に威圧された気分だ。

つい先ほどまで覚醒状態だった俺はその声を聞いただけで一瞬で素に引き戻されてしまった。


即座にそこで正座をし、手を腿(もも)に添え会釈して答える。


「御初にお目に掛かります、鷹搭蛍真と申します」


「無断で此処に迷い込んでしまった非礼をお詫びいたします」


そう述べて深く頭を下げた。

それは会社を辞めて卑屈になった俺ではない、管理職時代のバリバリに仕事を熟(こな)していた当時の俺だ。

まぁ今は17歳の学生の姿ではあるけどね。

相手が何者かもわからず土下座挨拶は寧(むし)ろ相手を不快にさせるものだ。

礼儀と礼節は社会人には絶対的な武装なのだ。(実際もう社会人でもないのだが。ってツッコミは無しでw)


「・・・・・・」


数分間、静寂が空間を支配する


(やばい!対応を間違えたか?)


「クスッ、魔神 タカトウ・ケイシン、面(おもて)を上げなさい」


聡明な声が響く


頭から背筋に電撃でも喰らったような衝撃が走る。


俺は頭を戻し正面に龍を見据えた。


今の俺を当たり前のように魔神と言い呼ぶこの龍は自分よりも遥かに高みの存在なのだろう。


「この世界に私以外の者が訪れたのは永き時の中で初めての事です」


そういってその龍は光に包まれて人の姿に変わり降りて来た。

しかし人の姿とはいっても白い発行体でシルエットのみが人型であるといった感じだ

正座したままの私の少し前に立ちその人は言った。


「私は神龍、この星の創世より存在するものの一柱です」


「名をセレンと言います」


「魔神 鷹搭蛍真 私の前に立ちなさい」


俺は言われるままに畏まり自然体で立った。


神龍は目の前にすーっと手を上げると(スローモーションで残像が残っていく)

俺との間の空間にホログラムみたいな丸い空間が展開された。

俺が生まれ。。。此処に来るまでの地球での思い出映像が映し出されていく。


そこには異世界へ落ちていく過程で見た走馬灯の記憶よりも

俺が忘れてしまっていた楽しかった記憶の方がより繊細に繰り広げられていった。


学生時代の運動会、遠足、旅行、汗まみれになって遊ぶ姿、ペットとの思い出、セキセイインコも飼っていた事

厩舎で50羽まで増やして中に入って餌やりしていた事など殆ど記憶から消えていたものだった。。。


中学でのテニス部での練習や試合、高校での美術部での絵画に勤しむ姿や文化祭の楽しい思い出、

父と船で魚釣りに行ったり友達とダムに釣りに行ったり。。。


社会人になり友人達と休みの日に一緒に街をドライブして本屋回ったり互いの家でゲームやアニメ鑑賞で

雑談に華を咲かせたり、、、楽しかった。。。


思春期からの中二病的な行動等もしっかり映されていく

(やめて~(/ω\)そこは映さないで~悲鳴w)


地元に帰ってきてから30歳の頃に初恋の人が結婚するって聞いて告白するも自爆の失恋し一週間寝込んだ場面w


そして後半の騒音から精神を病んでいく過程が映されていき、そして魔神化し今に至る状況へ進んでいく。


(あぁ、忘れていた記憶、俺の人生、でも中々楽しい時もあったんだな。。。

自分なりに精いっぱい生きた・・・悔いはない、ほんともう・・・・)


対面に居る神龍は微動だにせず、私の記憶を注視して見ているように見えた


発光体で表情は何も伺えないのが少し残念だが

まぁここまであからさまに自分の人生が表示されたんだ、俺が魔神でも何でもなく

ただの人間としての自分が伝わったのだろうと思った。

偽らず隠さないで良い反面、俺は堂々と顔を正面に向けている


「・・・タカトウ・ケイシン・・良い人生を歩んで来られましたね。」


予想だにしなかった神龍の声が響く。


「あっ、ありがとうござい、、ます、、、はは・・・なかなかに厳しい・・・人生で・・・した」


瞬間、ジーンとした感触が鼻に来て、こらえ切れずにドッと涙が溢れだし俯いた。

これまでの苦しみ、悔しさ、楽しかった記憶も、その感情を見たうえで神龍という存在に

良い人生と言ってもらえた。。。認めてもらえた・・・

もうそれだけであの人生に意義があったのだと思えた。


「ありがとう。お礼にこの世界を見せましょう」


そう言うと神龍はふっと俺の前に寄ってきて額同士を当ててきた。


真っ白な額から俺の中に意識が伝わってくる。


光の粒子の中を加速度的に流されていく

ハッと気づくと神龍セレンの斜め上から見る位置に浮いていた。


(これは神龍の記憶?)


周りの空気全体が煙に包まれて薄いグレーがかって嫌な気分がする。


神龍は不意に二重にぶれたかと思うともう一つの分体が分かれたように現れた


そしてその分体の神龍の周りの空間圧力が強くなっていき、、、

ガクンと衝撃があったかと思うとそこはアトランタル大陸のはるか上空

眼下に大陸の全貌が広がる。


それから見たのは神龍による大陸の審判(そうじ)だった。。。


大虐殺(だいぎゃくさつ)とか蹂躙(じゅうりん)とかそういった戦いや戦闘と呼べるような物ではなかった。


人や亜人、中には魔王や勇者とか云ったクラスも中には見える。

レベルやスキル、ギフトそれらがこの星では魔素によって

全てに恩恵が備わりその優劣で力の均衡も図られている。


地球でいう武装、兵器やミサイル、最終兵器すら凌駕(りょうが)する力を持つ者。

数千、数万と信じられないレベルに至った者もいる

威風堂々たる佇(たたず)まいとはこういう姿を云うのだろうなと俺は思った。


まるで構えていたかの様に舞い降りた神龍に向けて磁場が共鳴し雷、氷、炎が無数の竜巻の如く神龍に向けられた。

次元すら破壊しそうなブラックホールや重力場が神龍を襲う

剣や槍、弓矢など魔法で強化された武器で直接

物理的に攻撃してくる者も見えた。


たが次の瞬間、その鱗一枚にすら傷つけられず眼下の戦士達

亜人や魔人が神龍より発せられる一陣の風で虚無へと変えられていく。

文字通り神龍の通った後に、命は何一つ存在しえない

なんと理不尽な事だろう。


抗(あらが)う事の虚しさがあるだけ。。。


どんなにレベルが高かろうが強かろうが特殊なスキルを持っていようが神龍からすれば蟻は蟻なのだ。

一面に群がる蟻がまるで箒(ほうき)で掃き飛ばされ、消え去る埃(ほこり)と変わらない。


そこには命の尊厳も魂の価値も何もない、無情・・・それだけである。


何故と思ったが恐らく神龍のいた世界の煙、嫌な気配と何らかの関係があるのだろうと

まぁ推測でしかないが。


そして神龍の通った後は地形にも変化が見られた

土地が陥没と隆起を引き起こし場所によっては大地が裂け水が溢れ湖が出来たり山岳が聳(そび)えたり

凡(およ)そ想像だに出来ない事が繰り広げられる。


原始へと大陸がリセットされていった。


大陸全土を巻き込みその繁栄が消し去られ抗った者達も消されていく

生き残ったのは戦う事の出来ない年老いた者と武器を持てない子供、戦わない道を選んだ男女

だがその巻き沿いを喰らい共に消え去った者も多数いた。

神龍を恐れ敬い手を結び祈る者は偶然にも生き残った者が僅(わず)かにいた。


しかし、一通りの大陸の審判が終わった後、神龍から薄緑色の波動が大陸全土に

注(そそ)がれた時、生き残った者たちの中でさらに泡を吹いて死んでいく者、気を失てそのまま死んでいく者

発狂して絶命する者。。。その半分ほどの人間や亜人、魔人それら種族老若男女に関わらず

選別されていく。そして一つの文明がリセットされたのだ。


いくらかの都合の良い正義、主義主張それがいかに無意味なものなのか、神龍によるただ一方的な力の前では

レベルがどうとかスキルがどうとか如何に無意味な事であるか。

次元の違うものであることを理解せねばならない。

神龍がNOと言えばそれはNOであり抗うのなら消滅しかないという当たり前の自然摂理である

蟻は蟻なのだ、どんなに抗おうと神には成れない。


神龍はそれで満足して天を仰ぎ上空へと消えていく、気付けばその分体はそこで消え

俺はもと居た神龍の側に浮いていた。そして空間の嫌な煙も消滅し澄んだ空気が広がった。

あぁ、終わったんだ、そう思った。原因は分からないがこれで安心していられる。

衝撃の過去を見せられてかなり動揺したがふと俺は落ち着いた気がした。


しかし数分後すぐに辺りが煙に満たされたのだ。

(なんだこれは!?)


そして繰り返される、、、再び審判(そうじ)である。。。


見ると先程とは大陸の様子が若干違う。文明の発展の仕方が違うのか?

今は人間が主体の世界であるようだ先程は人も亜人も魔人も等しく混在していたのに。。。

しかし結果は同じであった。

神龍の審判に抗う事の虚しさだけが繰り返される

レベルもかなり高みにある者のもいるのだろうが神龍の前では風に舞う埃である。

最後には選別の波動に大陸が呑み込まれ再生していく。


俺は再び戻った。。。が同じように、すぐにまた煙が出てきたのだ


それからはその繰り返しが延々と続いていった。


時代毎に繁栄と同時に煙が出てきたら神龍が審判を繰り返す。


其のたび毎にその大陸の支配層も人間、亜人、魔人とそれぞれの強者が統治する王によって変わっていく

此処は魔素が満たされた大陸だ

一度文明が破壊されても様々なスキルで魔力が利用できるようで似たような形態に発展も早い、しかし終焉も早く訪れる

魔素による文明の発達も人々の意志で大きく変わっていく、

そして神龍の世界が煙に満たされた時、審判が訪れる。


そして何度もその記憶を見せられた後、神龍の声がした

「これは数百年から数千年ごとに繰り返された事象です。。。」と


以前の俺。。。

そう地球で生活していた若い頃の俺なら「何の権利があって」って

正義ぶったくだらない理想論を発したかも知れない

しかし今の俺には神龍の苦労が否応も無く分かる。


「ご苦労なさってますね」


目の前の神龍の人型に向けて心からその言葉が出た。


神龍は意外そうに、そっと頷(うなず)き


「現状、最新の審判を見せましょう」


そういって、もう一度俺を記憶の中に導いた。


そこは今のアトランタル大陸。。。人間がいない大地

魔人や亜人が統治する世界だ。

弱肉強食というイメージだが不思議と魔人による統治はうまくいってるようで

魔王と呼ばれる王が各エリアを管理している。

皮肉にも人間がいなくなった事でこの大陸には安定した統治が訪れているのだ。


複雑な思いでその有様を見ていると

神龍が緊張気味に遠くを見ているのが分かった


「?」

俺は黙って神龍と同じ方向を見た

その時、空が真っ黒に染まった。恐ろしいほどの大気の乱れが上空を覆う。

~遥(はる)か北半球にある大陸で別の神龍が審判を降(くだ)した~

神龍セレンの想いが伝わってくる。


別の大陸の神龍・・・

俺は何も言わず黙って様子を伺う

空は夜にでもなったかのように真っ暗な闇に包まれ星すら隠されて見えずにいる。


神龍セレンは淡い緑のオーラでアトランタル大陸を覆いその暗黒の闇の影響から保護している。


やがて時間が経ち空が青さを取り戻した。


「今から凡(およ)そ2千年前に起こった神龍セレスティアによる別大陸の審判です」


神龍セレンがそう言った


「別の大陸の審判?」


「はい、、、大陸ムーが審判を受けました」


「!!」


俺は息を飲んで固まった。

自分が知ってる古代大陸名だ。

ならここはどこなんだ!


そして神龍セレンからこの星の名前


アンゴルモアを聞きさらに衝撃を受ける

、、

昔予言で聞き覚えがある言葉、繋がりがあるのか?

それともただの偶然の一致なのか。。。



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