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異世界に転生したら全裸にされた  作者: 狐谷まどか
第8章 ゴルゴライ戦線
373/575

285 アレクサンドロシアの逆襲 4


 天空に高く打ち上げられたファイアボールの合図によって、全ての戦闘準備を整えたブルカ同盟軍が大攻勢を開始した。

 一五〇〇〇の軍勢と言えば、これはもう大軍だ。

 現代的な軍隊ならば師団級の戦力に相当するとモノの本で読んだことがある。

 ファンタジー世界ならどれほどの軍事力なのか一般人の俺には想像できないが、人口密度が中世並であると想定した場合はどうだろう。

 オルヴアンヌ王国という土地のさらに辺境である事を考えれば、一五〇〇〇という軍勢は空前絶後の規模であるだろうし、それだけブルカ辺境伯の支配力がこの辺境で並ぶ者がいないという証左なんだろうな。


「義姉上、ついにブルカ同盟軍の総攻撃が開始されました! 合図と思われる魔法の号砲が打ち上げられた模様です、いかがなさりますか?!」


 森の中でその時を待ち構えるべく軍馬に跨っていたアレクサンドロシアちゃんに、その大軍がついに動き出したことを知らせたのは義弟エクセルパーク卿だった。

 彼はようじょ不在の現状で、相変わらず不慣れな参謀役を任されていた。

 武門の誉れ高いヌッギ騎士爵の家に生まれただけあって教養は持ち合わせていたが、この対ブルカ戦争が初陣とあって、彼もブルカ勢の動きに気持ちが呑み込まれそうになったのかも知れない。


「まだあわてるな、今すぐに軍勢を動かせば、相手に待ち受けるだけの余裕を与えてしまう事になる」

「ああっ。しかしあの大爆発をご覧ください、まるで火山が噴火している様な有様だ。でもあれっ、なんでブルカ勢の中で爆発が?!」


 森の切れ目から見える平原の戦いを観察してみれば、魔法攻撃を開始したと思われるブルカの包囲網の中から大規模な魔法爆発が目撃された。

 けれどもそれらは、ブルカ同盟軍の布陣している場所へと落下したのだから盟主連合軍側の諸卿たちも混乱した。


「……恐らくッヨイハディめが、禁呪を使ったものであろうな。通常では考えられない規模の破壊力と範囲を有している」

「あのうアレクサンドロシアさま。ッヨイちゃんが禁呪の魔法を使ったという事ですか?」

「そうだ。何としても戦線を切り開くために古代魔法に手を出したという事だ。恐らくはブルカの軍勢も、全力でッヨイハディを仕留めるために動き出すはずだ」


 平原で連鎖爆発するのは、埋設した護符が発動したものだろう。

 その中でひときわ大きな紅蓮こそが、ようじょの使った古代魔法の威力だ。圧倒的な範囲で周辺の何もかもを呑み込む様に爆発して、一キロ以上の距離が離れた場所にまでビリビリと空気を震わせていたのだというから、その威力のほどが伺えるというものだ。

 後になって大正義カサンドラは俺にそう伝えてくれた。


「そ、それではすぐにもッヨイちゃんをお助けしませんと」

「だが慌てるな。あれは今、縦横無尽にブルカ勢の隊列をかき乱しているところだろう。さらにシャブリン修道院の方からも動きがあった様だ」


 槍を指し示したアレクサンドロシアちゃんはそう言って、傍らに控えていたカサンドラにそう説明したのである。

 ちょうど俺たちが大人になったようじょに呼応して、逆落としの突撃敢行を実施した瞬間だった。

 ただちにこれを目撃した野牛の族長タンクロードは配下の野牛兵士たちに指示を飛ばす。


「各員抜剣用意、騎兵を先頭に立てて側面から一気に敵を粉砕するぞ!」

「「応ッ」」

「われらが領主アレクサンドロシアさまに勝利を!!」

「「勝利を!!」


 力強いその言葉に女領主は大変満足し、少数の兵士を連れているばかりの軽輩領主たちはその意気に呑み込まれた。

 デルテ騎士爵もここにきて奮起したのか、槍をかかえて突撃を実施する騎馬列に自らも参陣して、タンクロードの吼える秋の声に加わるのだった。


「アレクサンドロシアさま、万事突入の準備完了です。いつでも攻撃に移行できます!」

「よし、わらわたちは一路ブルカ同盟軍の側面に回り込むぞ。今戦いの主攻勢を担当しているのはブルカの主力部隊であるが、あれを一撃粉砕する事は容易ならざる事であろう。なれば装備もまちまちなあの敵の軍勢、」


 エレクトラの報告にうなずいて見せた女領主は、翻って寄騎たちの混成部隊の在陣した場所を示す。


「軽輩領主からなる連合部隊を突き崩す。例えどの様な豪華絢爛な絨毯であっても、ほつれを引っ張ればそこから次第にほころびが生じるものだ。ブルカ同盟軍という絨毯もただの糸同然に灰燼へ帰すであろう」


 それ以上の言葉はいらないとばかりに演説をぶったアレクサンドロシアちゃんは、そのまま槍の穂先を天に掲げて突撃号令に移った。


「ツジン何するものぞ、わらわに続け!」

「突撃開始、突撃開始、突撃開始!!」


 兵力に限りのあるアレクサンドロシアちゃんの取った行動は次の通りだった。

 この時点で盟主連合軍の強襲部隊は四〇〇〇余の軍勢だ。そのうち騎兵の数は三〇〇騎というところで、その大半は歩兵の集団であったからまず騎兵を先行させた。

 それぞれの所属もまちまちな、野牛や修道騎士、あるいは諸侯の騎兵集団はまずもって敵の諸侯連合部隊に突撃を開始する。


「領主さまぁ! 旦那さまの側に向かわなくてもいいのですかぁ?!」

「そなたらが夫の元にすぐにも駆け付けたい気持ちはわかるが、今は何を持っても敵を混乱させることであるぞ。お兄ちゃんであればアッサリ死ぬようなものでもあるまいっ」

「そうですけどぉ!!」


 突然現れた敵の残余部隊に、ブルカ同盟軍側は混乱したのは当然だろう。

 ミノタウロスと言えば少なくともサルワタや盟主連合軍以外ではモンスターの扱いを受けている様な牛面の猿人間である。タンヌダルクちゃんや野牛の騎兵集団はブルカ同盟軍側には異形の集団に見えた事は間違いないだろう。

 それが女神様の信徒たる騎士修道会の修道騎士らと肩を並べて突入して来たのだ。敵の混乱に拍車がかかったに違いない。


「シューターに最大限活躍してもらうためにも、わらわたちが後方をかく乱させる必要があるのだ!」

「なるほど、内助の功というヤツですね領主さま。わたしもやる気が出てきましたようッ」

「バジルちゃん。馬上で暴れてお母さんを困らせないで、ひゃん……!」


 敵の混乱を拡大させるための切り札は肥えたエリマキトカゲである。

 カサンドラと彼女の胸元にあかちゃんよろしく縛り付けて固定されたバジルを護衛するために、左右をダイソンとエレクトラの護衛騎士がしっかりと守りについていた。

 女領主が直接指揮する騎兵部隊が敵中深く突入したところで、バジルの魔法の宿った咆哮で敵を大混乱に陥れる。

 しかる後に、修道騎士イディオ卿が率いる残余の歩兵集団がその混乱に乗じて突破口を斬り広げて掃討を実施する。


「アレクサンドロシアさま、間も無く敵の主攻撃正面に味方の先頭集団が届きますぜ!」

「よし、そなたらはカサンドラを絶対死守して前面に押し出すぞ」

「それではアレクサンドロシアさまはどちらに?!」

「年端も行かぬッヨイハディだけに全てを任せるなど、わらわの矜持が許さぬ。戦場の主役がわらわたちにある事をブルカの兵どもに教育してやる!」


 馬上で不敵な笑みを浮かべた女領主は、護衛の騎士ダイソンたちを追い抜く様にして疾駆する。

 そうして槍をすくい上げる様にして幾人ものブルカ兵を犠牲にしながら先頭集団に躍り出たのである。


「わらわに続け、邪魔立てする者を踏み越えよ! 国王に仇名す不忠の逆賊はここで討ち滅ぼさんッ」


 そうして俺とアレクサンドロシアちゃんは戦場で邂逅した。

 サルワタ領邦の貴族である事を示す紅のマントは、戦闘ですすけだって裾もボロボロだ。それをなびかせながら槍を振り回す女領主は、女騎士そのものの姿だった。


     ◆


「あ、ドロシア卿、カサンドラさんッ」

「ご主人さま、味方です。見方が来ました! 間に合いました!」

「シューターさん、義姉さんたちがきてくれたんだよっ」


 見上げる俺の視界に、奥さんたちの姿も次々と飛び込んでくる。カサンドラの無事な姿、タンヌダルクちゃんの猛々しい姿。そしてあかちゃん。

 けもみみと男装の麗人、雁木マリたちが騒がしく俺に報告してくれる。

 言われなくてもわかっているよ、俺の眼の前に姿が見えている。だから大人になったようじょを抱き起しながら、アレクサンドロシアちゃんを見返す。


「お兄ちゃんか! ッヨイハディもその場におるのだな、家族も無事で何よりだ。さればその場にじっとしておれ!」

「何がはじまるんですかねえ?!」


 ふふっと微笑を浮かべて見せる余裕のアレクサンドロシアちゃんは、その手で槍を血ぶりして改めて言葉を口にする。


「見ていればわかる。ブルカ領軍の本隊はどちらであるか?」

「あちらなのですドロシアねえさま。ッヨイが魔法で作ったクレーターの向こう側から、また敵が来ているのですッ」

「ふむ、ではあの先にツジンとオレンジハゲの嫡男がいるというのだな」


 俺たちのすぐ側を、荒々しい軍馬を駆って疾駆するアレクサンドロシアちゃんが駆け抜けた。

 ようじょの開いたクレーターを踏み越えて、フルプレートの重装騎士たちの迫るその方角に向かって大きく槍を振り構えた後に、アレクサンドロシアこう言葉を呪文を口にしたのだ。


「いにしえより伝わりし禁呪を解き放ち、物理の原則を改めん。土よ両の腕(かいな)となりて暴威を具現せよ」


 右手に持った槍を背に回し、左手を突き出す。

 そうしておいて突き出された左手に何かのオーラの様なものが集まったかと思うと、次の瞬間に大地が大きく割れ目を作り出して、そこから巨大な腕が二本飛び出して来た。

 右腕と左腕。それが数十のブルカ兵を巻き込む様に抱きしめ、そしてグシャリと圧死させてしまったのだ。


 ブルカの兵士たちにはいったい何が起きたのかわからなかっただろう。

 俺も正直、つばを飲み込みながら何が起きたのか理解するのに時間を要した。

 ようじょが古代魔法を使った様に、もしかしたらアレクサンドロシアちゃんもそれを使用したのかも知れない。ひとならざるものの巨大な腕に抱かれ異世界へ魂を旅立させるなんて、誰も想像できるわけがないよな。


「……ッく。カサンドラよ、バジルに命じるのだ!」

「は、はいっ。バジルちゃん?!」

「ギュウ?」


 俺と大人になったようじょが顔を見合わせる。

 バジルをこの場に連れてきているという事は、ワイバーンの仲間たちに共通する魔法の宿った咆哮をこの場で使わせるという事だ。

 アレクサンドロシアちゃんの背後には友軍の歩兵だろうか、騎兵集団の切り抜けた場所に雪崩を打って突入しようとしている。

 大正義カサンドラが肥えたエリマキトカゲを両腕で持ち上げて見せた時、俺たちの勝利がようやく決定的なものとなったのだと理解できた。

 わずかの瞬間にその咆哮の威力と意味を理解していた俺たちの家族は、あわてて耳をふさぐのだ。そして、


 ドオオオオンン!!


 古代魔法の圧倒的威力とはまた違った意味で、大地を震わす巨大な震撼が平原を駆け抜け、敵味方の区別なく恐怖の混乱に陥れるのである。

 仲間たちはまだいい。すでに稲妻作戦で谷間の奇襲攻撃に参加していた者たちはその経験があったし、サルワタ出身の人間ならばそちらでも経験済みだ。

 だがブルカ同盟軍のほとんどすべての人間にとって、魂のレベルまで人間を恐怖させるバジリスクの咆哮は未知の体験だ。

 

 ポーションをキめてシャブリン修道院に立てこもっていた面々はいち早くこの混乱から脱出したし、ジョビジョバ経験済みのアレクサンドロシアちゃんも同様だ。

 そうしてこの混乱に乗じて、ブルカ同盟軍の後方でもオークの兵士たちが離反を開始したのだ。


「今こそ盟主連合軍すべての力を集結して、敵の本隊を揉み潰せ! 狙うはツジンの首ひとつだ、辺境で暗躍する似非坊主のそっ首を斬り落とすのだ!!」


     ◆


 こうして怒涛の一点突破を図った盟主連合軍を、いかに前線で精強を誇ったブルカ辺境伯軍のエリート部隊であっても押しとどめる事は出来なかった。

 本陣後方に布陣していたオークのナイトオブサラマンダーという竜騎士の活躍もあったためだそうだ。

 ほんの四半刻も経過しないうちに、かつて平原を埋め尽くした一五〇〇〇ものブルカ同盟軍の大軍も消え去ってしまったのだ。

 だが逃がした獲物は大きい。


「掃討作戦を実施するのは、ブルカ本領の領境周辺までとするのよぉ。それ以上は戦線が伸びきってしまうわぁ!」

「捕虜となった者をゴルゴライまで護送するのだ、これらは貴重な戦争捕虜として身代金を要求する事が出来るぞっ」

「おのれツジンという軍監とオレンジハゲの嫡男は見つからなかったのか、おめおめと逃がしてしまうとは何事だ!」


 仮設の本陣が敷かれたシャブリン修道院跡地には、諸侯たちがせわしなく出入りしている。

 いったん後方に退避していた女魔法使いも、改めてブルカ辺境伯ミゲルシャールの身柄を引き連れて本陣まで戻って来てくれた。

 まだ大人になったままのようじょと女領主、それにマリアツンデレジアなどが顔を突き合わせて作戦処理のための協議を積み重ねている所であった。


「ほらこのオレンジハゲ、キリキリ歩くんですよっ!」

「マドゥーシャやめなさい。……ご主人さま、改めてミゲルシャール卿の身柄を連れてまいりました。顔をお改めください」

「ありがとうベローチュ。おいおっさん、捕虜の分際で随分と偉そうな態度だな……」


 引き立てられてきたオレンジハゲを無理やりガレキの上に座らせる男装の麗人と女魔法使いである。

 戦場ではフルプレートを身に着けて騎士然とした姿をしていたものだが、捕虜となって全裸で拘束されたオレンジハゲの姿を見れば、どこにでもいるプロレスラー体型の中年という風体だった。

 俺はさっと手を上げて、今後の方針を話し合っていた奥さんやようじょたちに合図を送ると、すぐにも奥さんたちがこちらにやってくる姿が見えた。


「相変わらず不愉快な顔をした男だの。この男がミゲルシャールで間違いない、オレンジハゲがその確かな証左だ」

「サルワタの売女風情が一戦に勝利をしたところで、イキがっている様だな。息子たちやツジンの身柄は拘束できたのか」

「フン、そなたに言われなくても鋭意捜索中であるわ。何れこのわらわのもとに引き立てられて、そなたも終わりだミゲルシャールよ。この者をゴルゴライまで後送しろ、しかるのちにサルワタの城まで連行するのだ!」


 大きく腹が出ているのは年齢からくるご愛敬だろうが、腕は太いし脚も太い。

 元は貴族軍人として現場で馴らして来たけれど、年相応に立派になったので贅肉が体に付いたといった感じだろうか。

 けれどもそのふてぶてしさは、捕虜になっても相変わらずのオレンジハゲである。


「おう。国法に乗っ取り、戦争捕虜としての待遇を要求するぜ。美女と、それから酒だ。手前ぇの嫁さんのひとりでも世話に付けてくれればいいんだがな。クリスティを呼んで来い、ん?」


 ふと奴隷親衛隊のみなさんに引き立てられていく途中で、オレンジハゲは俺にそんな口を利いた。

 せめて皮肉でも俺にぶつけてやろうというつもりだったのだろうけれど、何か俺が言い返してやろうとしたところで先に口を開いたのは、マリアツンデレジアだった。

 不機嫌そうな顔に侮蔑の表情を浮かべて、オレンジハゲを睨み付けるではないか。


「馬鹿げた事を申しますのねミゲルシャール卿は? あなたの想いびとは、この方に寝取られてしまった後ですの。釣った魚に餌をやらぬとはこの事ですのよ、女を三〇年も放り出して、あまつさえ戦場で会いまみえた時はソープさんを殺そうとしたと言うではないですか。信じられないけだものですのねッ」

「ほお、あんたは誰だ。ん?」

「リンドル前子爵の妻、盟主連合軍の総指揮官マリアツンデレジアですのよ」


 面白がった顔を浮かべて「そうか」とだけ返事したブルカ辺境伯は、そのままゴルゴライに向けて荷馬車で護送されていったのである。

 何れ捕虜交換の時期があるとするならば、その際に交渉材料として利用されるだろう。


「後送中のツジンの強奪を受けてはならぬゆえ、護衛の者を手配せよ」

「それならば、ナイトオブサラマンダーのイブ=セイマス=ズィさんがいいのです、ドロシアねえさま!」

「誰でも構わん。信用の置けるものであるならば、直ちにそういたせ」


 オレンジハゲの背中を見送って、そっくりな顔をしたアレクサンドロシアちゃんとアレクサンドロシアちゃんモドキがそう言い合った。

 それにしてもよく似ている。ようじょはお胸が少々女領主よりも小さいという事を口にしていたけれど、実際のふたりを見比べると違うのは髪色ぐらいだろうか。

 ッヨイさまは金髪そのもので、アレクサンドロシアちゃんはそれよりもやや茶色をしている。


「本当にそっくりですのね」

「髪の毛の色を除いたら違いが判らないぜ。それにしても、ッヨイさまはいつまで大人のレディなんだろうね?」

「似ていると言いますと、ラメエお嬢さんの髪色もミゲルシャール卿と同じですのね」


 そう言ってふたりして叔母と姪を見比べた後。

 カサンドラやタンヌダルクちゃんらとともに、こちらにやってくるラメエお嬢さまを見やれば、自然とそのオレンジ色の髪に視線が向かっていた。

 この戦場で戦っている間に、俺たちは何度かオレンジ髪の騎士たちと遭遇したはずだ。

 夜霧の中で出会ったひとりもそうであるし、マリリンマーキュリーというブルカ伯の息子のひとりもそうだ。それにラメエお嬢さまもそうだ。

 それらは三〇人はいるというミゲルシャールの奥さんとの間に生まれた、一族の血を引く人間たちなのかおしれない。


「もしかすると一族の血を引いているのかも知れないな。彼女のお母さん辺りがブルカ伯の親族だったとか」

「シェーンさまもブルカ伯一族の血を引いているはずですけれども、珍しくない金の髪色をしておりますの。その辺りまではさすがにわかりません……」


 眼下では男色男爵の率いる妖精剣士隊が、掃討任務から戻って来たデルテ隊と交代して領境まで捜索に向かう姿があった。

 ミゲルシャールの懐刀だったツジンをこの手で仕留める事が出来ず逃した事は大問題だったかもしれないが、少なくとも誰もが勝てると思っていなかった平原での決戦に、俺たちは勝利したのだ。


「シューターさん、ソープさんの側にはガンギマリーさんが付いています。彼女もご自分で治療は出来るとお断りしたのですが、念のために」

「ありがとうな俺の奥さん」


 ラミア族の姫君は、スタミナ不足の体質とミゲルシャールとの邂逅で心身ともに疲れているらしく雁木マリが付き添っているらしい。念には念をという事だろう。

 俺たちの現状の戦力で、ブルカの街に攻め上る事は出来ないだろう。

 このまま十一月を迎えて雪のちらつく季節がやってくれば、否応も無く休戦する事になるのだろう。


「どうされましたか、シューターさん?」

「ん。いや、しばらくはブルカは領境を挟んで睨みあいになるのかなあと」

「はい、そうですね……」


 カサンドラやタンヌダルクちゃん、そしてエルパコと互いに顔を見合わせた。

 少なくともこのゴルゴライにおける戦いは終息しようとしているのだ。

第八章ほ本編はここで終了になります!

ニシカ視点の閑話を挟んでから、次章に移りたいと思います(申ω`)

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