第九十八話 笑い声の中で
昼休みを告げる鐘が鳴り響く。
リリアーナたちは、いつものように中庭へと集まっていた。
木陰に腰を下ろし、それぞれが昼食を広げる。
「やっぱり、みんな揃うと賑やかだな!」
フィンが嬉しそうに笑う。
「あなたは一人でも十分賑やかですけどね。」
セドリックが苦笑すると、みんなから小さな笑い声がこぼれた。
穏やかな時間が流れる。
そんな中、フィンが何かを思い出したように顔を上げた。
「そういえばさ!」
「?」
「王都で今、一番人気のお菓子って知ってる?」
その言葉に、オリヴィアがぱっと表情を明るくした。
「『春花のミルフィーユ』ですよね?」
「そう、それ!」
フィンは大きく頷く。
「俺、一回並んだんだけどさ。買えなかったんだよ!」
「そんなに人気なのですか?」
オリヴィアが驚くと、セドリックが静かに答えた。
「開店前から長蛇の列ができるそうです。数量限定ですから。」
リリアーナはその話を聞いて、思わず微笑んだ。
「実は……。」
みんなの視線が集まる。
「先日、クララが買ってきてくれたの。」
「えぇっ!?」
フィンが思わず立ち上がる。
「すごいな、その侍女!」
リリアーナは嬉しそうに頷いた。
「朝早くから並んでくれたそうなの。
…私に笑顔になってほしいからって…」
オリヴィアは胸の前で両手を合わせた。
「とても素敵なお話ですね。」
「いい侍女さんだなぁ。」
フィンも感心したように腕を組む。
しばらく考え込んでいたかと思うと、突然、ぱんっと手を叩いた。
「よし!」
みんながフィンを見る。
「今度の休み、みんなで王都へ行こう!」
「王都へ?」
「そう!どうせなら、もう一回あのお店に挑戦しようぜ!」
「……また並ぶの?」
ヴィンセントがぼそりと呟く。
「もちろん!」
フィンは胸を張る。
「お菓子だけじゃないぞ!今の王都は見どころがいっぱいなんだ!」
「街には大道芸人も来ていますし、季節の市も開かれているそうですよ。」
セドリックが補足すると、オリヴィアの瞳がきらきらと輝いた。
「私、お祭りのような賑わいは初めてです!」
エリアスは楽しそうに話す仲間たちを見回し、最後にリリアーナへ視線を向けた。
「リリアーナはどう?」
突然話を振られ、リリアーナは少し考える。
王都を、友人たちと歩く。
そんなことを考えたこともなかった。
けれど——
「……行ってみたいわ。」
その一言に、フィンは勢いよく立ち上がった。
「よし、決まり!」
「気が早いですよ。」
セドリックが苦笑し、みんなが笑う。
その笑い声の中で、リリアーナも小さく笑みをこぼした。
友人たちと過ごす休日。
その約束は、いつもの日常に、新しい楽しみを運んできたのだった。




