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第九十七話 登校の日





社交界での出来事から数日。




右手の傷もすっかり落ち着き、リリアーナは久しぶりに学園の制服へ袖を通していた。




鏡の前で身だしなみを整えていると、クララが優しく微笑む。


「本日からご登校ですね。」


「ええ。少し緊張するわ。」


「皆様、お嬢様がお戻りになる日を心待ちにされていると思います。」




その言葉に、リリアーナは小さく笑みを浮かべた。


「そうだと嬉しいのだけれど。」


玄関では父と母、そしてルシアンが見送ってくれる。


「無理はしないように。」


父の穏やかな声に、リリアーナは頷いた。


「はい、お父様。」


「疲れたら、すぐに帰っていらっしゃい。」


母は優しくリリアーナの肩に手を添える。


「ありがとうございます、お母様。」


ルシアンは誰よりも不安そうな表情てリリアーナを見る



「……心配すぎる。やっぱり俺もついて行く。」


「ええっ!? 大丈夫です、お兄様!」



リリアーナは思わず声を上げた。




「本当に?」

「はい。お兄様は心配しすぎです。」



そう言って微笑むリリアーナに、ルシアンはなおも渋い表情を浮かべる。



「ルシアン。」


父が苦笑しながら声をかける。


「リリアーナなら大丈夫だ。」


「そうですよ。帰ってくる頃には、元気なお話を聞かせてもらいましょう。」


母も穏やかに続ける。



ようやく納得したルシアンを見て、リリアーナはくすりと笑った。





馬車へ乗り込むまで、家族の笑い声は途切れることがなかった。








やがて馬車は静かに動き出し、王立学園へ向かって走り出した。






窓の外を眺めながら、リリアーナは静かに息を吐く。






――また、この場所へ戻ってくることができた。


そのことが、どこか嬉しかった。










学園へ到着すると、生徒たちが次々と校舎へ入っていく姿が目に入る。


「リリアーナ様だ。」


「お元気になられたんだ。」


小さな声が聞こえてくるが、どれも心配や安堵の入り混じったものだった。


リリアーナは穏やかに微笑み、一人ひとりへ軽く会釈を返す。


その時だった。


「リリアーナ!」


元気いっぱいの声が校舎の前に響く。


振り向くと、フィンが大きく手を振りながら駆け寄ってきた。


その後ろからは、セドリックとヴィンセントも歩いてくる。


「もう登校して大丈夫なのか?」


「ええ。おかげさまで。」


フィンはほっと胸をなで下ろした。


「よかったぁ!みんな心配してたんだから!」


セドリックも柔らかな笑みを浮かべる。


「お元気そうなお姿を拝見できて安心しました。」


ヴィンセントは少し照れくさそうに視線を逸らした。


「……無事でよかった。」


三人の言葉に、リリアーナの胸が温かくなる。


「ありがとう。心配をかけてしまったわね。」


その時、小さな足音が近づいてきた。


「リリアーナ様……!」


オリヴィアだった。


彼女は嬉しそうに駆け寄ると、ぱっと花が咲くような笑顔を見せた。


「お元気になられて、本当によかったです!」


その瞳は嬉しさで輝いている。


「毎日、お元気になられることをお祈りしておりました。」


リリアーナは少し驚いたように目を瞬かせ、それから優しく微笑んだ。


「ありがとう、オリヴィア。」


「そのお顔を拝見できて、本当に安心いたしました。」


オリヴィアのまっすぐな言葉に、リリアーナの頬も自然と緩む。


「心配をかけてしまって、ごめんなさい。」


「いいえ。」


オリヴィアは首を横に振る。


「こうしてまたお会いできたことが、何より嬉しいです。」





その一言に、リリアーナは改めて、この学園には自分を待っていてくれた人たちがいるのだと実感するのだった。

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