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第七十一話 それぞれの冬〜セレナ編
「お母様、この布はいかがでしょう?」
机いっぱいに広げられた色とりどりの布地を前に、セレナは目を輝かせた。
「まあ、どれも素敵ね。」
母は一枚ずつ手に取りながら、娘の表情を楽しそうに眺める。
春の社交界に向け、新しいドレスの仕立てが進んでいた。
採寸は終わり、今日は装飾や小物の相談だ。
「こちらの刺繍も可愛らしいですし、このレースも捨てがたいです……。」
「あまり欲張ると、まとまりがなくなってしまうわよ。」
「あっ……それもそうですね。」
少し照れたように笑うと、母もつられて笑みを浮かべた。
「あれもこれも素敵に見えてしまうなんて、あなたらしいわ。」
「だって、見ているだけで楽しいんですもの。」
そう言いながら、もう一度布地へ視線を落とす。
どんなドレスになるのだろう。
完成した姿を想像するだけで胸が弾んだ。
「決めました!」
ぱっと顔を上げたセレナは、迷いなく一枚の布を指差す。
「これにします!」
その声に、母は満足そうに頷いた。
「ええ。きっと素敵な一着になるわ。」
「完成が楽しみです!」
弾むような足取りで部屋を出ていく娘を見送りながら、母はくすりと笑う。
「本当に、賑やかな子ね。」
部屋には、まだセレナの明るい声が残っているようだった。




