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第六十八話 それぞれの冬〜エリアス編
王宮の一室では、暖炉の火が静かに揺れていた。
机に向かうエリアスは、一冊の書物へ視線を落としている。
「では、本日はここまでにいたしましょう。」
家庭教師が本を閉じると、エリアスもペンを置いた。
「ありがとうございました。」
王太子として学ぶべきことは多い。
政治、歴史、外交。
冬季休暇を迎えても、その歩みが止まることはなかった。
「殿下も来春には社交界へお立ちになります。これからは、学びを実践する場も増えることでしょう。」
「そうですね。」
穏やかに頷きながら、エリアスは窓の外へ目を向けた。
白い雪が、静かに降り続いている。
社交界。
それは王太子としての務めでもあり、多くの貴族子女にとって新たな門出でもある。
自然と、一人の姿が思い浮かんだ。
淡い紫色を好み、誰よりも真っ直ぐな心を持つ少女。
(リリアーナなら、大丈夫だ。)
そう思うと、不思議と口元が緩む。
きっと彼女は緊張するだろう。
けれど、その一歩を踏み出す勇気も持っている。
その時は、隣で支えればいい。
エリアスは静かに本を閉じた。
窓の外では、冬の景色がどこまでも広がっていた。




