第六十三話 君と歩く日
昼休み。
リリアーナたちはいつものように中庭で昼食をとっていた。
穏やかな秋空の下、他愛ない話に花を咲かせていると、不意に聞き慣れた声が響く。
「リリアーナ。」
顔を上げると、エリアスがこちらへ歩いてきた。
「エリアス様。」
リリアーナが立ち上がると、エリアスは柔らかく微笑む。
「少しだけ、時間をもらってもいいかな。」
「ええ。勿論ですわ」
二人の様子を見ていたフィンが笑う。
「俺たちは先に教室へ戻ってるよ。」
セレナたちも軽く手を振り、その場を後にした。
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並んで中庭を歩く。
色づいた木々が風に揺れ、穏やかな時間が流れていた。
「ドレスの準備は順調?」
エリアスが尋ねる。
「はい。先日、採寸を終えました。」
「そうなんだ。きっと、よく似合うと思う。」
その言葉に、リリアーナは少し照れたように微笑んだ。
「ありがとうございます。」
しばらく歩いたところで、エリアスは足を止めた。
「リリアーナ。」
「はい。」
「一つ、お願いがあるんだ。」
珍しく少しだけ真剣な表情に、リリアーナは首を傾げる。
「お願い、ですか?」
エリアスは小さく笑って頷いた。
「来年の社交界デビュー…リリアーナのエスコート、僕に任せてもらっていいかな。」
その言葉に、リリアーナは一瞬目を丸くした。
けれど、すぐに柔らかな笑みを浮かべる。
「もちろんです。よろしくお願いいたします、エリアス様。」
その返事を聞いたエリアスは、心から安堵したように微笑んだ。
「ありがとう。」
それだけで十分だった。
幼い頃から共に過ごしてきた。
婚約者として隣に立つことも決まっている。
それでも、自分の口から伝えたかった。
その願いを、リリアーナはいつものように受け止めてくれた。
「当日を楽しみにしているよ。」
「はい。私もです。」
二人は再び歩き出す。
穏やかな秋の日差しが、並んだ二つの影を静かに照らしていた。
――――パキッ。
どこからともなく、何かがひび割れる音がした。
リリアーナは一瞬だけ足を止めたが、小さく首を振る。
今はもう、気にしなかった




