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第六十三話 君と歩く日



昼休み。


リリアーナたちはいつものように中庭で昼食をとっていた。


穏やかな秋空の下、他愛ない話に花を咲かせていると、不意に聞き慣れた声が響く。


「リリアーナ。」


顔を上げると、エリアスがこちらへ歩いてきた。


「エリアス様。」


リリアーナが立ち上がると、エリアスは柔らかく微笑む。


「少しだけ、時間をもらってもいいかな。」


「ええ。勿論ですわ」



二人の様子を見ていたフィンが笑う。


「俺たちは先に教室へ戻ってるよ。」



セレナたちも軽く手を振り、その場を後にした。





✳✳✳✳





並んで中庭を歩く。


色づいた木々が風に揺れ、穏やかな時間が流れていた。






「ドレスの準備は順調?」


エリアスが尋ねる。


「はい。先日、採寸を終えました。」


「そうなんだ。きっと、よく似合うと思う。」


その言葉に、リリアーナは少し照れたように微笑んだ。


「ありがとうございます。」


しばらく歩いたところで、エリアスは足を止めた。


「リリアーナ。」


「はい。」


「一つ、お願いがあるんだ。」


珍しく少しだけ真剣な表情に、リリアーナは首を傾げる。





「お願い、ですか?」




エリアスは小さく笑って頷いた。





「来年の社交界デビュー…リリアーナのエスコート、僕に任せてもらっていいかな。」




その言葉に、リリアーナは一瞬目を丸くした。




けれど、すぐに柔らかな笑みを浮かべる。






「もちろんです。よろしくお願いいたします、エリアス様。」


その返事を聞いたエリアスは、心から安堵したように微笑んだ。


「ありがとう。」


それだけで十分だった。


幼い頃から共に過ごしてきた。


婚約者として隣に立つことも決まっている。


それでも、自分の口から伝えたかった。


その願いを、リリアーナはいつものように受け止めてくれた。


「当日を楽しみにしているよ。」


「はい。私もです。」


二人は再び歩き出す。


穏やかな秋の日差しが、並んだ二つの影を静かに照らしていた。









――――パキッ。






どこからともなく、何かがひび割れる音がした。



リリアーナは一瞬だけ足を止めたが、小さく首を振る。





今はもう、気にしなかった

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