表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/130

第三十二話 抗えない声






編入から数日。



オリヴィアは少しずつ学園にも慣れ、クラスメイトとも笑顔で話す姿が見られるようになっていた。


「オリヴィア様、そのリボン、とても素敵ですわ。」


「ありがとうございます。母が選んでくれたものなんです。」



照れくさそうに笑うオリヴィアに、周囲の令嬢たちも自然と笑みをこぼす。


その様子を、リリアーナは静かに見つめていた。





(やっぱり……。)


(優しそうな子。)



ゲームの中で見ていたヒロインも

とても素敵だった


でも


画面越しでは分からなかった表情も、声も、仕草も。


目の前のオリヴィアは、一人の少女だった。








【……ダレモコナイデ】


頭の奥で声が響く。


リリアーナは小さく息を呑んだ。


(また……。)


ここ数日。


この声は何度も聞こえていた。





そのたびに。


(違う。)


(私はそんなこと思わない。)


何度も。


何度も心の中で否定し続けてきた。


すると声は、ふっと消えていく。


それの繰り返しだった。






✳✳✳✳✳✳✳✳✳



昼休み。


リリアーナが一人で本を閉じると、セレナが微笑んだ。


「リリアーナ様。オリヴィア様が、お話ししたいそうです。」



「……私に?」


「はい!」




少し離れた場所で、オリヴィアが緊張したように立っている。



私は何度か深呼吸を繰り返し、小さく拳を握る。


そして意を決したように、一歩踏み出した。




「リリアーナ様。」


優しい声。


その瞬間だった。






【アナタハコナイデ】



ズキッ――。


鋭い痛みが頭を走る。


(……っ!)


リリアーナはそっと額を押さえた。



(駄目っ)


(負けちゃ駄目!)



オリヴィアは気付かず、柔らかく微笑む。



「編入の日は、ご挨拶だけになってしまって……。改めて、お話しできたら嬉しいです。」


【アナタハコナイデ】



(違う!)


(私は……っ)




【アナタハコナイデ】




頭の中で、何度も繰り返される。


胸が苦しい。


息が詰まる。




それでもリリアーナは必死に笑顔を作ろうとした。





唇が震える。


(お願い……っ)


(やめて……)


オリヴィアが、もう一歩近付く。





【ア ナ タ ハ コ ナ イ デ】






その瞬間。


「……来ないで。」






静まり返る教室。


オリヴィアの足が止まる。


エメラルドグリーンの瞳が、ゆっくりと揺れた。


「……え?」





リリアーナは、自分の口を押さえた。



(今……。)


(私が……言ったの……?)





全身から血の気が引いていく。


「ち、違っ……。」




言葉が続かない。


オリヴィアは困ったように微笑み、小さく頭を下げた。


「……申し訳ありませんでした。」


そのまま静かに踵を返す。






教室には重苦しい空気だけが残った。


誰かが小さく囁く。


「あれが……。」


「やっぱり。」


「噂は本当だったのね。」


その声は決して大きくはなかった。


けれど、リリアーナの耳には、はっきりと届いていた。




(違う……。)


(私じゃない……。)


そう叫びたいのに。


声は、もう出なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ