第二十七話 新たな日常
現在100話執筆中!はやくお届け出来るように頑張ります。
入学式を終えた新入生たちは、それぞれ期待と緊張を胸に、新しい教室へと足を運んでいく。
リリアーナも、静かに廊下を歩いていた。
「一年A組……こちらね。」
教室へ入ると、すでに何人かの生徒が席に着いている。
リリアーナの姿に気付いた数人が、小さく息を呑んだ。
「あの方が……。」
「アルディス公爵令嬢。」
「王太子殿下の婚約者よ。」
囁き声は聞こえてくるものの、そこに悪意はない。
憧れと緊張。
そんな空気が教室を包んでいた。
リリアーナは気にする様子もなく、自分の席へ向かう。
「ここね。」
静かに椅子へ腰を下ろした。
しばらくすると、一人の令嬢がおずおずと近付いてきた。
「あ、あの……。」
リリアーナは顔を上げ、優しく微笑む。
「はい。」
令嬢は少し緊張した様子で胸の前で手を重ねた。
「わ、私、セレナと申します。」
「もしよろしければ……仲良くしていただけませんか?」
その一生懸命な姿に、リリアーナの表情も自然と柔らかくなる。
「もちろんです。」
「私こそ、よろしくお願いいたします。」
ほっとしたように笑うセレナを見て、リリアーナも思わず笑みをこぼした。
「思っていたより、お話ししやすい方で安心しました。」
「そうですか?」
「はい……少し緊張してしまって。」
「私もです。」
二人は顔を見合わせ、くすりと笑い合った。
昼休み。
教室を出ると、前方から見慣れた姿が歩いてくる。
「リリアーナ。」
「エリアス殿下。」
互いに自然と足を止めた。
「学園生活はどう?」
「まだ少し緊張しております。」
リリアーナが微笑むと、エリアスも穏やかに笑う。
「すぐに慣れるよ。」
「ありがとうございます。」
短い会話だった。
それだけなのに、周囲の生徒たちは思わず足を止めてしまう。
「やっぱり、お二人は仲が良いのね。」
「素敵……。」
そんな声が聞こえても、二人は気に留めることなく、それぞれの教室へ戻っていった。
放課後。
馬車に揺られながら帰路につく。
窓の外を眺めるリリアーナの表情は穏やかだった。
(少し緊張したけれど……。)
(楽しかったわ。)
新しい友人もできた。
先生方も優しそうだった。
きっと明日からも、充実した毎日になる。
そんな予感がしていた。
屋敷へ戻ると、お父様、お母様、お兄様が温かく迎えてくれた。
「おかえり、リリアーナ。」
「ただいま戻りました。」
「学園はどうだった?」
お兄様の問いに、リリアーナは嬉しそうに答える。
「緊張しましたけど楽しく過ごせました」
その一言に、お母様は嬉しそうに目を細められた。
「まあ、それは良かったわ。」
楽しそうに今日の出来事を話す娘を見つめ、お父様も安心したように頷かれる。
「それなら何よりだ。」
食卓には、いつものように穏やかな時間が流れていた。
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夜。
入浴を終えたリリアーナは、自室へ戻る。
「今日は少し疲れたわ。」
鏡台の前へ腰を下ろし、ゆっくりと髪を梳かす。
鏡には、いつもの自分が映っていた。
ふと、鏡の中の自分と目が合う。
その瞬間――。
鏡の中のリリアーナだけが、ゆっくりと口元を吊り上げた。
ぞくり、と背筋が震える。
その笑みは、リリアーナの知る自分のものではない。
冷たく。
妖しく。
誰かを見下ろすような笑み。
「……え?」
思わず瞬きをする。
次の瞬間。
鏡には、いつもの自分しか映っていなかった。
「……気のせい、だったのかしら。」
そう呟きながらも、胸の奥に小さな違和感だけが残る。
リリアーナはもう一度鏡を見つめた。
そこには、穏やかな表情の自分が映っているだけだった。




