第二十一話 新たな約束【前編】
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湖での出来事から、数日が過ぎた。
アルディス公爵家には、いつもの穏やかな時間が戻っていた。
窓から差し込む陽射しが部屋を優しく照らし、小鳥たちのさえずりが庭から聞こえてくる。
私は窓辺に置かれた本を閉じ、小さく息をついた。
「あの日は、皆様にたくさんご心配をおかけしてしまいましたね……。」
ぽつりと呟くと、後ろで花を生けていたクララが優しく微笑んだ。
「お嬢様がお元気になられて、皆様とても安心しておられます。」
「お父様も、お母様も、お兄様も……。」
私は小さく笑う。
「心配性なのです。」
「ふふっ。」
クララはくすりと笑った。
「それだけ、お嬢様を大切に思っていらっしゃるのですよ。」
その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。
私は窓の外へ目を向けた。
庭では庭師たちが花壇の手入れをしている。
あの日植え直した花も、元気に咲いていた。
「良かった……。」
自然と笑みがこぼれる。
その時だった。
屋敷の前へ、一台の馬車が静かに止まった。
クララが窓の外を見て、小さく目を丸くする。
「あら……。」
「どうしたの?」
「王宮の紋章が付いた馬車でございます。」
私は驚いて窓辺へ近づいた。
確かに、王家の紋章を掲げた立派な馬車が玄関前へ止まっている。
ほどなくして、執事のオーウェンが部屋を訪れた。
「お嬢様。王宮より使者がお見えになっております。」
「お父様にでしょうか?」
「はい。」
オーウェンは静かに一礼する。
「旦那様は、ただいま書斎へ向かわれました。」
私は小さく頷いた。
「何かあったのでしょうか……。」
「ご安心ください。」
オーウェンは穏やかに微笑む。
「急ぎのお話ではないようでございます。」
その言葉に少しだけ安心し、私は再び窓の外を見つめた。
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書斎では、アルディス公爵が王宮からの使者を迎えていた。
使者は丁寧に一礼すると、静かに口を開く。
「アルディス公爵閣下。国王陛下より、お言葉を預かっております。」
公爵はゆっくりと頷く。
「伺おう。」
「陛下より、後日ぜひ王宮へお越しいただきたいとのことでございます。
大切なお話がある、と。」
その一言に、公爵は静かに目を細めた。
「……承知した。」
使者は再び一礼し、静かに部屋を後にする。
一人残された公爵は、窓の外へ視線を向けた。
春風に揺れる庭では、何も知らないリリアーナがクララと楽しそうに笑っている。
その穏やかな笑顔を見つめながら、公爵は静かに微笑んだ。
「さて……。どのようなお話だろうな。」




