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第十六話 春を重ねて【後編】



王宮へ到着すると、見慣れた庭が春の花々で彩られていた。


色とりどりの花壇の向こうから、聞き慣れた声がする。




「リリアーナ!」


振り返ると、エリアス殿下がこちらへ駆け寄って来られた。


「エリアス殿下。」


私は微笑みながら一礼する。


「お久しぶりです。」


「うん!」


「……と言っても、先月も会ったばかりだけどね。」


思わず二人で笑ってしまう。


「でも、春に会うと特別な気がするんだ。」


そう言って笑うエリアス殿下は、五歳の頃よりも背が伸び、表情も少し大人びていた。


それでも、その笑顔だけは何も変わっていない。


「リリアーナも……。」


エリアス殿下は私を見つめる。


「少し背が伸びたね。」


「ありがとうございます。」


「エリアス殿下も、以前より凛々しくなられました。」


そう言うと、エリアス殿下は少し照れたように笑った。


「ありがとう。」


二人で庭を歩き始める。


春風が花々を揺らし、甘い香りを運んでくる。


その時、一羽の白い蝶が二人の前をゆっくりと飛んでいった。


エリアス殿下は蝶を見つめ、ふっと笑う。


「今年も来てくれたね。」


「こんにちはって、花に挨拶しているのかな。」


私は思わず立ち止まり、小さく笑った。


「覚えていてくださったのですね。」


「もちろん。」


エリアス殿下は少し得意そうに笑う。


「リリアーナが教えてくれた大切なことだから。」


胸の奥が、じんわりと温かくなる。


四年という月日は、たくさんのことを変えた。


背丈も。


話し方も。


学ぶことも。


けれど、あの日交わした言葉は、今も二人の中で大切に息づいている。






少し離れた場所では、お母様と王妃様がその様子を優しく見守っていた。


「本当に仲がよろしいですこと。」


王妃様が微笑まれる。


お母様も穏やかに頷いた。


「幼い頃から変わりませんね。」


王妃は二人を見つめながら、小さく微笑む。


「……いいえ。」


「変わらないようでいて、少しずつ成長しているのでしょうね。」


その言葉に、母も優しく目を細められた。









空を見上げると、白い蝶は青空へと舞い上がっていく。


その姿を目で追いながら、私は静かに思った。


春は、毎年巡ってくる。


けれど、その春を迎える私は、もう五歳の頃の私ではない。


一歩ずつ。


ゆっくりと。


それでも確かに、未来へ向かって歩いている。


明るい陽射しは今年も変わらず、優しく二人を包み込んでいた。

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