第十五話 春を重ねて【前編】
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あの日、エリアス殿下と出会ってから、四度目の春が訪れた。
窓を開けると、柔らか風がふわりと部屋へ吹き込む。
庭では色とりどりの花々が咲き誇り、小鳥たちが楽しそうにさえずっていた。
「お嬢様、おはようございます。」
侍女が優しく一礼する。
「おはようございます。」
私も微笑みながら挨拶を返した。
九歳になった私は、五歳の頃より少しだけ背が伸びた。
髪も肩を越えるほどになり、お母様が毎朝きれいに結ってくださる。
鏡に映る自分を見つめながら、ふと笑みがこぼれた。
(もう、九歳なのね。)
時間が過ぎるのは、本当にあっという間だ。
身支度を終え、朝食をいただいていると、お母様が優しく微笑まれる。
「今日は王宮へお招きいただいているわ。」
「はい。」
私は笑顔で頷いた。
エリアス殿下とは、この四年間も季節折々にお会いしていた。
王宮へ伺ったり、公爵家へお越しになったり。
一緒に庭を散歩したり、本を読んだり、お茶を楽しんだり。
会うたびに少しずつ背が伸びて、できることも増えていった。
けれど、不思議と変わらないものもある。
優しい笑顔。
穏やかな時間。
そして、春になると一緒に探す白い蝶。
私はそのことを思い出し、小さく微笑んだ。
「何か嬉しいことでもあったの?」
お母様が尋ねられる。
「……春になると、白い蝶々を探したくなるのです。」
そう答えると、お母様はくすりと笑われた。
「ふふっ。」
「あの日から、毎年探しているものね。」
「はい。」
「あの蝶々は、今年もお花に挨拶をしに来てくれるでしょうか。」
その言葉に、お母様は優しく目を細められた。
「きっと来てくれるわ。」
「花たちも、待っているでしょうから。」
私は嬉しくなって微笑んだ。
窓の外では春風に乗って、一枚の花びらが空高く舞い上がる。
今年の春も、きっと素敵な一日になる。
そんな予感がしていた。




