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第147話 断罪






白い光がゆっくりと消えていく。


リリアーナはゆっくりと目を開いた。


豪華なシャンデリア。


赤い絨毯。


色鮮やかなステンドグラス。


王城の大広間。


間違いない。




ゲーム『運命の欠片』、最後の舞台。


卒業パーティー会場だった。


「……ここです。」


震える声が静寂に溶ける。


エリアスたちは静かに辺りを見回した。


誰もが笑顔で談笑し、音楽に合わせて踊っている。


まるで何事も起きていないかのような、穏やかな祝宴。


「本当に……普通の卒業パーティーなんだな。」


フィンが小さく呟く。


「これが……。」


オリヴィアは不安そうにリリアーナを見る。


「私が言っていたゲームの最後です。」


リリアーナはゆっくり頷いた。


「ここから……断罪イベントが始まります。」


その時だった。


一人の近衛騎士がエリアスへ歩み寄る。


「エリアス殿下。陛下がお呼びです。」


リリアーナの瞳が揺れた。





(来た……。)


ゲームと、まったく同じ流れ。


エリアスは静かに頷く。


「分かった。」


何の違和感もない。


何も起きない。


ただゲームのシナリオ通りに、王子は中央へ歩いていく。


リリアーナは唇を強く噛んだ。


(お願い……。変わっていて……。)


音楽が止まる。


会場中の視線がエリアスへ集まる。


王子はゆっくりと振り返った。


その瞳が、リリアーナを映す。


「リリアーナ・アルディス。」


会場が静まり返る。


リリアーナは小さく目を閉じた。


来る。


あの日から何度も夢に見た言葉。




「本日、この場をもって――」


その瞬間。


エリアスの表情がわずかに曇った。


「……っ。」


拳が震える。


何かに抗うように、呼吸が乱れる。


それでも唇は動き続ける。


「君との婚約を――」


言葉が止まった。


「……殿下?」


ざわめきが広がる。


エリアスは苦しそうに胸を押さえる。


まるで見えない何かに身体を引っ張られているようだった。


「違う……。」


誰にも聞こえないほど小さな声。


「違う……!」


しかし次の瞬間、その意思を押し潰すように口が動く。




「……破棄する。」


会場がどよめく。


ゲームと同じ。


ここまでは。




「リリアーナ・アルディス。」


「君はオリヴィア・ローズに対し、数々の嫌がらせを繰り返した。」


「教科書の破棄。」


「虚偽の噂。」


「ドレスの損傷。」


「階段からの突き落とし。」


一つずつ読み上げられる罪状。


会場中の視線がリリアーナへ向けられる。





その時。


「違います!」


凛とした声が響いた。


全員が振り向く。


オリヴィアだった。


彼女は震えながらも、一歩前へ出る。






「そんなこと、一度もありません!リリアーナ様は私を助けてくださいました!何度も!優しく声をかけてくださいました!」







「リリアーナ様から嫌がらせなんて……受けていません!」






静寂。


ゲームには存在しなかった言葉。


存在しなかった選択。






エリアスがゆっくりと顔を上げる。


「……そうだ。」


その瞳に、ようやく意思が宿る。






「そんなはずがない。リリアーナは……。」




「誰かを傷つける人じゃない。」





ピシッ。


会場の空間に一本のひびが走る。


誰もが息を呑んだ。


さらに。


ピシッ。


ピシッ。


空間そのものが悲鳴を上げるように、無数の亀裂が広がっていく。


天井。


壁。


床。


まるで世界そのものが壊れ始めたかのようだった。





そして、冷たい声が響く。


【シナリオエラー】


一瞬、会場の時間が止まる。






【シュウセイ】


【シュウセイ】


【シュウセイ】







繰り返される無機質な声。


だが、その響きには初めて焦りが混じっていた。


エリアスは一歩、前へ踏み出す。


もう誰にも止められない。


まっすぐに、リリアーナのもとへ。


「リリアーナ。」


その名前を呼ぶ声は、ゲームの王子ではない。


彼自身の声だった。


その瞬間――


【イレギュラー】


世界が、大きく軋んだ。

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