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第139話 王国課題



王国課題発表当日。


朝から学園は、いつもとは違う緊張感に包まれていた。


廊下では資料を見返す生徒。


小さく発表の練習を繰り返す生徒。


「大丈夫かな……。」


そんな不安そうな声もあちこちから聞こえてくる。


リリアーナも胸の前で資料を抱き、小さく息を吐いた。


「緊張してる?」


隣から優しい声が聞こえる。


エリアスだった。


「少しだけ。」


そう答えると、エリアスは穏やかに微笑む。


「大丈夫。」


「この一年、一番近くで君の頑張りを見てきた。」


「だから自信を持って。」


その言葉に、自然と肩の力が抜けた。


「ありがとう。」


二人は顔を見合わせ、小さく笑い合う。


やがて発表会場へ案内され、生徒たちはそれぞれの席へ着いた。


教師たちも真剣な表情で資料へ目を通している。


王国課題。



一年近くかけて取り組んできた成果を発表する日。


最初の班から順番に発表が始まった。


農業について調査した班。


王都の商業を調べた班。


福祉制度をまとめた班。


それぞれが一年間積み重ねてきた努力を、自分たちの言葉で伝えていく。


リリアーナは真剣に耳を傾けた。


(みんな……本当に頑張ってきたのね。)


やがて教師が次の班を呼ぶ。


「次は、エリアス殿下、リリアーナさん。」


「はい。」


二人は立ち上がり、壇上へ向かった。


会場を見渡す。


思っていたよりも落ち着いていた。


隣を見ると、エリアスが小さく頷く。


その一つの仕草だけで、不思議と緊張が和らぐ。


「それでは、私たちは『街道』について発表いたします。」


一年間調査してきた街道。


実際に歩き、利用者の話を聞き、現状を知った。


危険な場所。


整備が必要な区間。


旅人や商人が安心して利用できるためには何が必要なのか。


一つひとつ積み重ねてきた答えを、二人で丁寧に伝えていく。


エリアスが説明し、


リリアーナが資料を示す。


次はリリアーナが話し、


エリアスが補足する。


何度も練習した通り、二人の息はぴったりだった。


会場の教師たちも静かに耳を傾けている。


発表が終わると、自然と安堵の息が漏れた。


「ありがとうございました。」


深く一礼し、席へ戻る。


「お疲れ様。」


エリアスが小さく笑う。


リリアーナも微笑み返した。


「ありがとう。」


その後も発表は続いた。


フィンは持ち前の明るさで堂々と発表し、会場の空気を和ませる。


セドリックは論理的で分かりやすい説明を行い、教師たちも何度も頷いていた。


ヴィンセントは落ち着いた口調で丁寧に発表を進め、聞く人を引き込んでいく。


オリヴィアも誠実に、一つひとつの言葉を大切にしながら想いを伝えていた。


すべての発表が終わる頃には、会場にはどこか達成感が漂っていた。


教師が穏やかに口を開く。


「皆さん、一年間本当にお疲れ様でした。」


「どの班からも、多くの学びと努力が伝わってきました。」


その言葉に、生徒たちからほっとしたような笑みがこぼれる。


放課後。


校舎を出ると、六人は自然と集まっていた。


「終わったーー!」


フィンが両手を大きく上げる。


その姿に、みんなが思わず笑った。


「フィンらしいですね。」


ヴィンセントが優しく微笑む。


「これで今日はぐっすり眠れそう!」


「あなたは毎日ぐっすり眠っているでしょう?」


セドリックが呆れたように言うと、また笑いが広がった。


そんな何気ない時間が、とても愛おしく感じられる。


長い期間の課題だった


決して楽な課題ではなかった。


それでも、仲間と共に乗り越えてきた。


その達成感が、六人の笑顔に表れていた。


帰り道。


「リリアーナ。」


エリアスが静かに声をかける。


「少し……話したいことがあるんだ。」


その表情は、いつもより少しだけ真剣だった。


リリアーナは小さく頷く。


「ええ。」


夕日に照らされた二人は、ゆっくりと歩き出した。

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