表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
138/151

第138話 私たちの明日






校外学習から数ヶ月が過ぎた。


学園には、いつもの穏やかな時間が流れている。


廊下では楽しそうに話す生徒たちの笑い声が響いていた。


あの日の出来事が嘘だったかのように、誰もが普段通りの日常を送っていた。


「リリアーナ、おはよう!」


明るい声と共にフィンが駆け寄ってくる。


「おはよう、フィン。」


その後ろからオリヴィアも柔らかく微笑んだ。


「おはようございます。」


「おはよう、オリヴィア。」


自然と笑みがこぼれる。


あの日以来、不気味な出来事は起きていない。


だからこそ、六人はあえて普段通りに過ごしていた。


教室へ入ると、セドリックは机いっぱいに資料を広げていた。





「おはようございます。皆さん、明日はいよいよ発表です。最後に内容を確認しておきましょう。」


「相変わらず真面目だねぇ。」


フィンが苦笑すると、セドリックは肩をすくめる。


「最後まで気を抜かないだけです。」


その横ではヴィンセントが資料へ目を通していた。


「こちらの資料ですが、数値を一つ修正した方が伝わりやすいかもしれません。」


「本当だ!」


リリアーナは感心しながら頷く。


「気付かなかったわ。ありがとう。」


「お役に立てて何よりです。」


穏やかな時間だった。


少し前まで、それぞれが別々の立場で過ごしていた六人。


けれど今では、一つの課題へ向かって自然と力を合わせている。


そこへエリアスも加わる。


「みんな揃っているね。」


「エリアス。」


彼は机の上へ資料を置き、リリアーナの隣へ立った。


「最終確認をしよう。」


「ええ。」


二人は資料を見比べながら、一つひとつ内容を確認していく。


不足している点はないか。


説明の順番は分かりやすいか。


何度も話し合いを重ねてきたからこそ、互いの考えが自然と分かるようになっていた。


「これなら大丈夫だと思う。」


エリアスが微笑む。


「そうね。」


リリアーナも穏やかに笑った。


気付けば、あの日抱えていた恐怖は少しだけ遠くなっていた。


もちろん忘れたわけではない。


けれど、隣には仲間がいる。


一人ではない。


それだけで前を向く力になっていた。






放課後。


夕日に染まる校舎を六人で歩く。


「緊張してきたなぁ。」


フィンが頭をかきながら笑う。


「今さら?」


リリアーナがくすりと笑うと、フィンは照れくさそうに笑い返した。


「今さらだよ。」


その言葉に全員が笑う。


そんな何気ない時間が、何よりも大切に思えた。


昇降口まで来ると、それぞれ帰る支度を始める。


エリアスはリリアーナの隣へ歩み寄った。


「明日はいよいよ発表だね。」


「ええ。」


「きっと大丈夫。」


その一言には、不思議と安心する力があった。


リリアーナは静かに頷く。


「そうね。」


二人は並んで校門へ向かって歩き出した。


夕焼けに染まる学園は、今日も穏やかだった。


(こんな毎日が……ずっと続けばいい。)


ふと、そう願う。


けれど、その胸の奥には小さな違和感が消えずに残っていた。


それが何なのかは、まだ分からない。


ただ一つ確かなのは――


明日。


一年近く調べ続けてきた王国課題の発表が始まるということだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ