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第120話 未来へ繋ぐもの



王都での調査を終えた翌日。


昼休みの図書室には、静かな時間が流れていた。


リリアーナは昨日まとめた手帳を机に広げる。


「思っていた以上に、たくさんのお話を伺えましたね。」


「ああ。」


エリアスも手帳を開く。


「同じ市場でも、店によって悩みが違っていた。」


リリアーナは頷きながらページをめくった。


「野菜を扱うお店は天候や収穫量のお話が多くて……。」


「パン屋さんは小麦の価格。」


「鍛冶屋さんは職人不足。」


一つひとつは小さな悩みでも、王国全体を見れば大きな課題へと繋がっている。


「全部を解決することは難しいですね。」


そう呟くと、エリアスは静かに首を横へ振った。


「全部じゃなくていい。」


「え?」


「一つでも、人の役に立てる答えを見つけられたら、それだけでも意味はあると思う。」



「……そうですね。」


リリアーナは優しく微笑んだ。


「私も、誰かの力になれる課題にしたいです。」


エリアスも笑みを返す。


「私も同じだ。」


二人は地図を広げる。


王都には小さな印が付けられていた。


「次はどこへ行こうか。」


「市場だけでは見えないこともあります。」


リリアーナは地図の北側を指差した。


「この近くに農村があります。」


「収穫や流通についても調べてみたいです。」


「いい考えだね。」


エリアスは迷うことなく頷いた。


「市場で聞いた話とも繋がる。」


二人は新しい紙を取り出し、調査計画を書き始める。


王都。


農村。


街道。


工房。


調べたいことは、まだたくさんあった。


「休日だけでは足りなくなりそうですね。」


リリアーナが小さく笑う。


「その時は、また予定を合わせよう。」


エリアスも笑う。


「一年あるんだから、焦らず進めればいい。」


「はい。」


リリアーナはそう返事をすると、新しい調査計画の一番上にそっと書き込んだ。


『人々の暮らしを知ること』


それが二人の王国課題の、最初のテーマになった。

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