第116話 三年生の始まり
新しい席に座った生徒たちは、それぞれ期待と緊張を胸に担任の到着を待っていた。
「今年も同じクラスだな。」
フィンが嬉しそうに笑う。
「騒ぐのは先生が来る前までにしておけ。」
セドリックが静かに言うと、フィンは肩をすくめた。
「分かってるって。」
そのやり取りに、リリアーナは思わず小さく笑う。
隣ではオリヴィアも優しく微笑んでいた。
「リリアーナ様、今年もご一緒できて嬉しいです。」
「私もです、オリヴィア様。」
そんな穏やかな空気の中、教室の扉が開いた。
担任の教師が教壇へ立つ。
「皆さん、進級おめでとうございます。」
教室が静まり返る。
「三年生は学院生活の中でも大切な一年になります。勉学も実技も、一段と難しくなりますが、互いに励まし合いながら成長していきましょう。」
生徒たちは真剣な表情で耳を傾ける。
「また今年は、例年どおり校外演習や学年行事も予定されています。」
その言葉に教室が少しだけざわついた。
「今年の校外演習はどこなんだろう。」
フィンが小声でつぶやく。
「まだ発表されていない。」
ヴィンセントが静かに答える。
「楽しみですね。」
オリヴィアが微笑むと、リリアーナも頷いた。
「ええ。」
窓際の席から外を眺めるエリアスと目が合う。
エリアスは優しく微笑み、小さく頷いた。
その笑顔を見て、リリアーナの胸にも自然と温かな気持ちが広がる。
(今年も、きっと素敵な一年になる。)
まだ誰も知らない。
この穏やかな日々の先に、大きな試練が待ち受けていることを。
けれど今は──。
新しい一年の始まりを、心から喜びたかった。




