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第114話 ただいま



夕暮れ。


アルディス公爵家の馬車が屋敷の門をくぐる。


「お嬢様、お帰りなさいませ。」


玄関ではクララが笑顔で迎えてくれた。


「ただいま。」


リリアーナは自然と笑みを浮かべる。


「今日は楽しまれましたか?」


その問いに、リリアーナは小さく頷いた。


「ええ、とても。」


髪に触れる仕草を見たクララが、優しく目を細めた。


「その髪飾り、とても素敵ですね。」


「……エリアス様が選んでくださいました。」


照れくさそうに答えると、クララは嬉しそうに微笑んだ。


「まあ。それは大切な宝物になりますね。」


リリアーナは少しだけ頬を染めながら頷く。


「はい。」





応接室へ入ると、ルシアンがソファから立ち上がった。


「リリィ、おかえり。」


「ただいま、お兄様。」


「楽しかったか?」


「とても。」


その一言だけで十分だった。


妹の表情を見たルシアンは、小さく笑う。


「その顔なら聞くまでもないね」


そこへ父アルディス公爵と母も姿を見せる。


「おかえり、リリアーナ。」


「お帰りなさい。」


家族の声に包まれ、リリアーナは胸の奥が温かくなるのを感じた。


「今日はどちらへ行かれたのですか?」


母に尋ねられ、リリアーナは王都での出来事を少しずつ話し始める。


街を歩いたこと。


お茶を飲んだこと。


そして――。


「この髪飾りを、エリアス様が贈ってくださいました。」


少し恥ずかしそうに見せると、母は嬉しそうに微笑んだ。


「とてもよくお似合いよ。」


父も静かに頷く。


「殿下は見る目がおありだ。」


その言葉に、リリアーナは思わず笑みをこぼした。








夜。


部屋へ戻ったリリアーナは、鏡の前へ立つ。


髪飾りを外そうと手を伸ばす。


けれど、今日はもう少しだけつけていたくなった。


鏡に映る自分は、朝より少しだけ幸せそうな顔をしている。


「……今日は、本当に楽しかった。」




そう小さくつぶやき、髪飾りにそっと触れる。






大切な思い出が、また一つ増えたのだった。

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