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第113話 夕暮れの約束



店を出た二人は、王都の石畳をゆっくりと歩いていた。


「ありがとうございます。」


リリアーナは髪飾りにそっと触れ、嬉しそうに微笑む。


「とても大切な思い出になりました。」


「そう言ってもらえて良かった。」


エリアスも穏やかに笑う。


それだけで胸が温かくなり、二人の間に心地よい沈黙が流れた。


やがて甘い香りが風に乗って漂ってくる。


「いい香りですね。」


視線を向けると、小さな露店で焼き菓子が並べられていた。


「少し休憩しようか。」


「はい。」


二人は店先の木製のベンチに腰を掛ける。


焼きたてのアップルパイと温かな紅茶。


「熱いから気を付けて。」


エリアスに言われ、リリアーナは小さく頷いた。


一口食べると、りんごの優しい甘さが口いっぱいに広がる。




「……美味しい。」


思わずこぼれた言葉に、エリアスも嬉しそうに笑った。




「それなら良かった。」




何気ない会話。


何気ない時間。


それなのに、今までで一番幸せな休日のように感じられた。


空は少しずつ茜色へ染まり始める。


「もう、こんな時間ですね。」


リリアーナが名残惜しそうにつぶやく。





「楽しい時間ほど早く過ぎるものだね。」


エリアスも同じ気持ちだった。


二人は立ち上がり、馬車の待つ場所へ向かう。


歩きながら、エリアスがふと口を開いた。




「王都は色々あるね」


「そうですね!」


「もし都合が合えば、また一緒に行かないか。」


リリアーナは嬉しそうに微笑んだ。


「ぜひ、ご一緒したいです。」


「約束だよ。」


「はい。」


二人は笑顔を交わす。


今日という日は終わる。


けれど、二人の約束はまた一つ増えた。


馬車へ乗り込む直前、リリアーナはもう一度だけ髪飾りに触れた。


それは、今日の思い出を忘れないためのお守りのように感じられたのだった。

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