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第112話 想いを結ぶ髪飾り



店内へ足を踏み入れると、小さな鈴が澄んだ音を響かせた。


木のぬくもりを感じる店内には、色とりどりの髪飾りや小物が並んでいる。


花をかたどったもの。


繊細な銀細工が施されたもの。


淡く輝く宝石が添えられたもの。


どれも職人の丁寧な仕事ぶりが伝わる品ばかりだった。


「どれも素敵ですね。」


リリアーナは目を輝かせながら、一つひとつをゆっくり眺める。


その姿を、エリアスは優しい眼差しで見守っていた。


ふと、リリアーナの足が止まる。


視線の先にあったのは、淡い紫色の花を模した髪飾りだった。


小さな銀の葉が添えられ、上品で可憐な印象を与えている。


「お気に召しましたか?」


店主が穏やかに声を掛ける。


「……とても綺麗です。」


そっと手を伸ばしかけたものの、リリアーナは静かに手を引いた。


「見るだけでも十分楽しめました。」


その様子を見ていたエリアスが、静かに口を開く。


「その髪飾りを。」


「え……?」


「私から贈りたい。」


突然の言葉に、リリアーナは驚いてエリアスを見つめた。


「ですが……。」


「今日の思い出に。」


真っ直ぐな瞳に見つめられ、断る言葉は浮かばなかった。


「……ありがとうございます。」


嬉しそうに微笑むリリアーナを見て、エリアスもほっとしたように笑う。


店主は髪飾りを箱へしまおうとしたが、エリアスは首を横に振った。


「もしよろしければ、今つけていただけますか。」


「もちろんです。」


店主は慣れた手つきでリリアーナの髪を整え、髪飾りをそっと留める。


「できました。」


鏡へ映った自分の姿に、リリアーナは目を丸くした。


淡い紫色の花が、ダークプラムの髪によく映えている。


「……素敵。」


思わず零れた言葉に、エリアスは穏やかに頷いた。


「君に似合うと思っていた。」


その一言で、リリアーナの頬はみるみる赤く染まる。


「ありがとうございます……大切にします。」


店主は二人を見比べ、優しく微笑んだ。


「本当によくお似合いですね。」


「……!」


リリアーナは恥ずかしそうに俯き、エリアスも照れたように咳払いをする。


そんな二人の様子に、店主はくすりと笑った。


「その髪飾りも、きっと喜んでいますよ。」


店を出ると、リリアーナはそっと髪飾りに触れる。


指先に伝わる小さな感触が、今日という特別な時間を教えてくれるようだった。


隣を見ると、エリアスと目が合う。


二人は照れくさそうに笑い合い、再び王都の街へ歩き出した。

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