第110話 休暇前のひととき
朝の教室。
長期休暇を目前に控え、生徒たちの話題は休みの予定でもちきりだった。
「俺はとにかく寝たい!」
元気よく宣言するフィンに、セドリックが苦笑する。
「昨日も聞いた。」
「何回でも言うぞ!」
そのやり取りに教室は笑いに包まれる。
教室の隅ではリリアーナもオリヴィアと楽しく話していた。
「リリアーナ様は休暇中、何か予定はあるの?」
オリヴィアに尋ねられ、少し考える。
「家族と過ごす時間が多くなると思います。」
「素敵ですね。」
「……それと。」
リリアーナは少しだけ照れたように頬を染める。
「王都へ出掛ける約束もあります。」
オリヴィアはすぐに気付いて微笑んだ。
「エリアス殿下と、ですか?」
「……はい。」
その返事だけで十分だった。
「楽しんできてくださいね。」
「ありがとうございます。」
そんな2人の様子を見ていたのか
「殿下、楽しみですね。」
突然のフィンの言葉に、エリアスが首をかしげる。
「何のことだよ?」
「またまた。」
フィンは意味ありげに笑う。
セドリックはため息をついた。
「からかうのはほどほどに。」
エリアスは視線を教室の隅へ向ける。
その先には、オリヴィアと話すリリアーナの姿。
思わず口元が緩む。
その表情を見たフィンは、にやりと笑った。
「……分かりやすい。」
「顔に出てる。」
ヴィンセントの一言に、エリアスは咳払いを一つした。
教室には穏やかな笑い声が広がる。
休暇まで、あと数日。
誰もが、その先もこんな日々が続くと信じていた。




