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第109話 放課後の約束



放課後を告げる鐘が校舎に響いた。


教室では生徒たちが思い思いに帰り支度を始めている。


「やっと終わったー!」


フィンが大きく伸びをすると、セドリックは呆れたように本を閉じた。




「授業中から同じことを言っていたな。」


「気のせいだ!」


「気のせいじゃない。」


ヴィンセントの一言に、教室は小さな笑いに包まれる。


リリアーナも思わず笑みを浮かべた。


そんな様子を見ていたエリアスが、静かに近づく。


「リリアーナ。」


「はい。」


「少し時間はあるかな。」


「もちろんです。」


二人は校舎を出て、中庭へ向かった。


やわらかな陽射しが中庭を包み、木々の葉が静かに揺れている。


他の生徒たちの楽しそうな声も、どこか遠くに聞こえた。






「最近、無理をしていない?」


不意にエリアスが口を開く。


リリアーナは少し驚いたように目を瞬かせる。


「どうして、そのように思われたのですか?」


「君は隠すのが上手だから。」


その言葉に、小さく息をのむ。


「でも……昔より表情が分かるようになった。」


エリアスは優しく微笑んだ。


「だから気付く。」


リリアーナは胸の奥が温かくなるのを感じた。


「ありがとうございます。」


その一言だけで十分だった。


しばらく二人は並んで歩く。


沈黙なのに、不思議と心地いい。


やがてエリアスが立ち止まった。


「もうすぐ長期休暇だ。」


「はい。」


「休みに入ったら、一緒に王都へ出掛けないか。」


リリアーナは目を丸くする。


「……私と?」


「ああ。」


少し照れたように笑うエリアス。


「この前は皆と一緒だったから。」


その意味を理解した瞬間、頬がほんのり赤く染まる。


「……はい。」


小さく頷く。


「ぜひ、ご一緒させてください。」


エリアスも安心したように笑った。


「約束だ。」


「はい。」


指切りをするような約束ではない。


それでも二人にとっては、何より大切な約束だった。


帰りの馬車の中でも、リリアーナの胸は幸せで満たされていた。


(楽しみ……。)


そう思いながら窓の外へ目を向ける。


夕陽に照らされた街並み。


その一角にある店先のガラスが、一瞬だけ小さく光った気がした。


リリアーナは思わず目を凝らす。


けれど次の瞬間には、何事もなかったように夕景だけが広がっていた。

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