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第102話 幸せの後で



夕暮れの王都は、茜色の空に優しく染まっていた。


賑わっていた通りも少しずつ落ち着きを見せ、店先には温かな灯りがともり始める。


「今日は本当に楽しかったね。」


オリヴィアが嬉しそうに微笑む。


「ええ。」


リリアーナも自然と笑顔になる。


「またみんなで来たいわ。」


「もちろん!」


フィンが元気よく手を挙げた。


「今度はまたキャトル・セゾンに行こう!」


「食べることしか考えていませんね。」


セレナがくすりと笑う。


「だって美味しかったじゃん!」


「それは否定しません。」


セドリックも穏やかに笑みを浮かべた。


「キャトル・セゾンは季節ごとに限定商品が並ぶそうですよ。」


「季節ごとに?」


リリアーナが目を輝かせる。


「はい。春だけではなく、夏や秋、冬にも限定のお菓子が販売されるそうです。」


「それは楽しみですね。」


オリヴィアも嬉しそうに頷いた。


「じゃあ、全部の季節で来よう!」


フィンの一言に、一同から笑い声があふれる。


穏やかな笑い声に包まれながら、それぞれ帰路についた。





アルディス公爵家へ戻ると、玄関ではクララが深々と頭を下げた。


「お帰りなさいませ、お嬢様。」


「ただいま、クララ。」


「本日はお楽しみいただけましたでしょうか。」


「ええ、とても。クララにもお土産を買ってきたの。あとで召し上がって。」



リリアーナは、淡い藤色のリボンが掛けられた小箱をクララへ手渡した。



「まあ……! キャトル・セゾンではありませんか。」


「この前のお礼も兼ねて選んできたの。」




リリアーナはそう言うとクララに微笑んだ







✳✳✳✳✳✳✳




食堂へ向かうと、父と母、そしてルシアンが揃っていた。


「お帰り、リリアーナ。」


「ただいま戻りました。」


「王都でお土産を買ってきたんです。」


そう言って箱を開けると、小さく色鮮やかな星雫マカロンが美しく並んでいた。


「まあ、とても綺麗ね。」


母が嬉しそうに微笑む。


「キャトル・セゾンの人気商品なんですよ。」


「それは楽しみだ。」


公爵も興味深そうに頷いた。


すると、ルシアンが目を輝かせながら箱を覗き込む。


「リリアーナが選んでくれたのか?」


「ええ。家族みんなで食べたいと思って。」


その言葉を聞いたルシアンは、心から嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとう、リリィ。お土産を買ってきてくれるなんて、それだけで今日は最高の日だよ!」


「ふふっ、大げさですわ。」


「大げさじゃない。本当に嬉しいんだ。」


そのやり取りに、父と母は顔を見合わせて微笑む。


「相変わらず、ルシアンはリリアーナに甘いわね。」


「当然です。リリィは世界一可愛い妹だから。」


迷いなく言い切るルシアンに、リリアーナは少し照れながら笑った。


「もう、お兄様ったら。」


食堂は、温かな笑い声に包まれた。








夜。


自室へ戻ったリリアーナは、ゆっくりとベッドへ腰を下ろした。


今日一日の出来事が、まるで宝物のように思い浮かぶ。


王都の街並み。


仲間たちとの笑い声。


キャトル・セゾンのお菓子。


そして、帽子を拾ってくれたエリアスの優しい笑顔。


「……今日は、本当に楽しかった。」


自然と笑みがこぼれる。


そのまま明かりを落とし、静かな部屋で横になる。


ふと、その時だった。


――ピシッ。


小さな音が、静寂の中に響く。


「……?」


リリアーナはゆっくりと身体を起こした。


音のした方へ視線を向ける。


机の上に飾られたガラスの一輪挿し。


その表面に、一本の細いひびが浮かび上がっていた。


「……っ!」


思わず息をのむ。


今までのひびは、朝になれば何事もなかったように消えていた。


けれど――。


そのひびは、いつまで待っても消えようとしない。


リリアーナは小さく息をのみ、ひびから目を離せなかった。


部屋は静まり返っている。


聞こえるのは、時計が時を刻む音だけだった。

お気づきだと思いますが100話から数字に変更です。宜しくお願い致します。

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