第四十六話 ルキウスの最終課題(後編)
◆セリナ視点
シエロパパから最終課題を与えられて、五日が経った。
私はまだ、シエロパパに一撃を入れることは出来ていない。
かといって、全く歯が立たなくて全然ダメとか、そう言った事では無かった。
確実に私の動きも速くなってきているし、涼しい顔をしていたシエロパパも、最近では額に沢山汗をかくようになっていた。
「よし、今日もやろうか」
「今日で、この課題も最後にしてやるわ!」
「ははっ、本当に終わってしまうかもしれないね。確実に、俺も油断できなくなっているのは確かだし」
私たちは互いに武器を構え、じりっと距離を測る。
何か明確な合図があるわけでもない。
でも、互いに『今から始まる』という合図を感じ取り、動き出す。
まずはセリナから。
低空姿勢で一気にルキウスの懐へと詰め寄り、重い戦斧を横から鋭く振り切る。
五日間、血のにじむような数をこなしてきた分、風魔術の応用による戦斧の速度は、初日と比べ物にならない程に速くなっていた。
キィィィィンッ!
ルキウスもそれを剣で受け流し、即座に反撃に転じる。
鋭い剣先が、セリナの腹部に向けて無慈悲に襲い掛かる。
だが、その反撃に対しセリナはただ後退して避けるのではなく、その場から上空へと高く飛び上がり、そこから火の玉を放った。
放たれた火の玉を、ルキウスは剣の腹で冷静に弾いて防ぐ。
ボォォォォンッ!
セリナとルキウスの間に、爆発による土煙が濃く舞い上がる。
視界が遮られたその瞬間、ルキウスはこれまでの経験から、セリナが隙を突いて背後、あるいは足元の死角から強襲してくると察し、どちらから来てもカウンターで対応できるように剣を構え直した。
だが――ルキウスは、煙の奥から黒い影が真っ直ぐ近づいてくることに気が付いた。
セリナは、あえてその煙幕の中を突き破り、真正面から飛び出してきたのだ。
そのまま落下する勢いを乗せ、大きく戦斧を上段から振り下ろした。
「なっ……!!」
ルキウスは裏をかかれた。
セリナが真正面からバカ正直に突っ込んで来ることは全く意識していなかった為、彼女の攻撃に対して一瞬反応が遅れてしまった。
バァァァァァァンッ!!
セリナの戦斧は勢いよく振り下ろされ、ルキウスが立っていた地面を激しく叩き割る。
それでも、ルキウスは自身のフィジカルによるバックステップで、間一髪でその直撃を避けてみせた。
だが、セリナの猛攻は止まらない。
初めから、追撃も何かしら対応されて避けられると見込んでの動きだった。
地面に叩きつけられた戦斧の柄を重心にして、そのまま棒高跳びのように身体ごと空中で一回転し、さらに遠心力を乗せた二度目の追撃を叩き込む。
全体重と回転する力、それに風魔術の加速が応用された渾身の刃が、ルキウスを捉えにかかる。
「大地よ、形を成せ。地形創造」
セリナの刃が届く直前、セリナとルキウスの間に地面が変形し、分厚い土の壁が出来上がった。
ドガァァァァンッ
セリナの必殺の攻撃は、惜しくもその土の壁に深く突き刺さり、威力を吸い取られてしまう。
そのままルキウスは数歩バックステップを踏み、セリナと十分な距離を取った。
「ふぅ〜……。今のは本当に危なかった」
「ちょ……っ!シエロパパって、魔術使えるの!?」
(ずっと剣術一本で戦っていたし、魔術を使っているところを一度も見たことが無かったから、てっきり全く使えないものだと解釈していたわ……!)
「俺だって、このくらいは使えるよ。勿論、シエロみたいに強力な魔術は使えないけど、身を守る為にも少しは使えた方が冒険者としていいからね」
「あ〜もう悔しい!今のは完全に決まったと思ったのにぃ!!」
「ははは。日に日に、ゴールが近くなってきているね」
ニコリと笑うシエロパパの表情は、何処か……教え子の急成長を喜ぶ嬉しさと、寂しさが混ざったような、とても複雑な表情だった。
「さっ!続きと行こうか。まだ陽が落ちるまでには時間があるからね」
私はシエロパパの言葉に答えるように、戦斧を力強く構えなおした。
「勿論よ!」
それからは、陽が完全に落ちるまで私はシエロパパに挑み続けた。
だが、シエロパパが魔術を防御に応用し始めてから、結局一番初めのあの一撃を超えるような決定打を生み出す事は無かった。
その日の夜。
また寝る前に、シエロと今日あった出来事を話した。
だけど、シエロには最終課題の具体的な内容までは、ちゃんと話してはいない。
「本当ですか!悔しいですけど、お父様の剣術はああ見えて凄い腕前ですから。それに追いつけているセリナは本当に凄いですよ!」
「ま、まぁね!」
私はシエロには、木刀を使って、先に一本を取るという課題だとだけ伝えてある。
「それで、そっちはどうなのよ?相変わらず、手も足も出ず?」
「ま、まぁ……セレスティア様に一撃を与えられるイメージは、全く浮かび上がりませんね」
「そう……」
「でも、ですね!」
シエロはてっきり落ち込んでいると思ったが、そうでもなかった。
「何を急に大きな声を出して」
「それが、溢れ出ていた縁が少しずつ身体に薄皮一枚で纏えるようになってきて、魔術の出力が劇的に上がったんですよ!」
そう言ったシエロの顔は、とても嬉しそうだった。
毎日あんなにコテンパンにされているはずなのに、確かな成長を実感しているんだと感じた。
「よ、よかったじゃない!」
「はい!もしかすると、セリナが戻ってくる前に特訓を終わらせてしまうかもしれませんよ?」
「そ、そう……」
正直、シエロ達ならそんなこともあるのだろう。
私も頑張っているし、成長も実感できている。
けれど、こうやって毎日シエロの話を聞くにつれて、焦りと同時に私はまだまだだって感じてしまう。
「……どうしたのですか、セリナ」
「別に……何でもないわよ!早く寝て、明日に備えるわよ!」
私は何かに逃げるように、くるりと背を向けてベッドに寝転がった。
「僕には、セリナの抱えている気持ちは全て分かりませんが……セリナが誰よりも努力しているのは知っています。だから、そう落ち込まないでください」
シエロは優しい声でそう言って、私の隣で寝転んだ。
「私の努力なんて知らないでしょ。慰めの言葉かは知らないけど、私は何も問題ないわ。……すぐにそっちに戻るわ」
(私の努力は、私が一番よく知ってる。知っているからこそ、中々最後の一つの壁を越えられない自分が不甲斐ない……)
少しの沈黙があった。
結局、シエロはそのまま寝てしまったのだろうか。
「分かりますよ。だって、そのボロボロになった手が何よりの証拠じゃないですか。でも、どうして手の平だけ治していないんですか?」
その言葉を聞いた瞬間、私はポロリと泣いてしまった。
分からないけど、今までずっと張り詰めて溜め込んでた心のモヤモヤが、シエロの言葉で優しく弾けたような感じだった。
(私は、努力して頑張っているって自分に言い聞かせる為に、あえて手の平の怪我だけは治さなかった。……痛みが無いと不安になるなんて、ただの現実逃避だ)
私は直ぐに腕で涙をふき取った。
「うるさいのよ、シエロ。私が戻るまで、せいぜいセレスティア様にコテンパンにやられてなさい!」
「……良かったです。いつものセリナに戻って」
「早く寝なさい。私はもう寝るから!」
いつまでも弱音を吐いているだけでは駄目だ。
私は明日、必ずシエロパパの最終課題を終わらせてみせる。そう強く心に決めた。
翌日の昼。
「さぁ、今日も変わらずやっていこうか」
シエロパパはいつもと変わらず、鞘から真剣を抜き、余裕の表情で私を待っていた。
「ねぇ、シエロパパ」
「どうしたんだい?」
「いつもシエロパパは、私に剣を当てずに直前でピタリと止めるけれど……今日は、私に隙があればちゃんと攻撃してほしいの」
私だけが一方的にシエロパパに攻撃を当てようとするのは違うし、私もちゃんと、本物の実戦に近い形で取り組みたい。
「セリナちゃん……それは出来ない」
「なんでよ!シエロパパが言ったじゃない!俺に一撃をこの戦斧で入れろって!だったら、シエロパパも私にちゃんと本気の攻撃を仕掛けてよ!」
「駄目だ。危険すぎる」
「危険なんて、もうとっくに覚悟は決まっているのよ!」
シエロパパはしばらく黙って考えていた。
「それでもやはり駄目だ。俺がセリナちゃんを本気で斬る事は出来ないし、斬るという事は、最悪手足を失うかもしれない。そうなれば、母さんでも簡単に治す事なんて出来ないんだ」
「じゃあ、なんで私には戦斧を使って一撃を入れろなんて言ったのよ!私だってシエロパパを傷つけたくなんて無いわよ!それでも、前に進む為に覚悟を決めたのよ!」
私は、勝手に彼からの了承を得られると思っていた。
それをあっさり断られたことと、私に言ってきた事の矛盾に少し腹が立った。
「ごめん、セリナちゃん」
すると、突然シエロパパが頭を下げて謝ってきたのだ。
私への同情なのか、それとも別の何かなのか、正直どちらでもよかった。
「実はね。真剣に変えたのは、いつまでも軽い木刀を使っていては、セリナちゃんの為にはならないんじゃないかって俺が勝手に思ったんだ」
「それで、本物の真剣を?」
「そ、そう……」
別にそんな事はどうでもよかった。
もし、こんなつまらない言い訳で謝ってきたのならば、流石に私にも言いたいことはあった。
「それで、シエロパパは何が言いたいわけ?」
シエロパパは少しバツが悪そうに、言いづらそうに視線を泳がせた。
「実は、勢いでカッコつけて俺に一撃を入れてみろなんて言ったんだ。正直、まだセリナちゃんから一撃を貰う事は無いだろうって舐めていた。セリナちゃんの成長が異常に早いから、最近は流石に少し怖かったけれど、それでも魔術を駆使していけば、なんとか無傷で対処は可能だったんだよ」
シエロパパは申し訳なさそうに私を見ていた。
私に手加減をして舐めていたから、私を怒らせてしまった。なんて思っているんだろう。
でも、それを聞いて私は不思議と腹立ちが納まった。
むしろ、ごまかさずに正直に言ってくれたシエロパパには感謝をしている。
やっぱり、シエロパパは私にずっと手を抜いていたんだって。
それで追いついてきたと、成長した気になっていた私が愚かだったのだ。
「だからその、最近はセリナちゃんがドンドン強くなるから、どうやってこの課題を終わらせようかって考えていた所だったんだ。本当に戦斧で斬られるなんて俺も痛いのは嫌だし……本当にごめん」
「……別に、いいわよ」
「え?」
「むしろ、私に厳しい現実を教えてくれたことによって、俄然やる気が漲ってきたところよ」
私は戦斧を持ち、牽制するように大きく一振り素振りを行った。
ブンッ!という重い風切り音を聞いて、シエロパパは少しビクッと怖がっていた。
「セ、セリナちゃん!?」
「私を今まで騙していた事と、私のこのやる気に満ちた感情を全部ぶつけるしかないわね!」
私はいつもの様に低く構え、シエロパパにいつでも飛び込めるような攻撃の体勢に入った。
「ちょ、ちょっと待ったセリナちゃん!さっきの俺の謝罪の話を聞いてた!?」
「関係ないわ!行くわよシエロパパ!」
私は勢いよく踏み込み、無抵抗のシエロパパに向かって大きく戦斧を振りかざした。
「ちょっと待ってくれセリナちゃん!この話には続きがあって!!」
その悲痛な叫びを聞いた瞬間、私は急ブレーキをかけてピタリと動きを止めた。
このままいけば、本当に無抵抗のシエロパパを真っ二つに切り裂くところだった。
「続きって!?」
「じ、実は……あるものを用意してみたんだよ」
シエロパパはそう言うと、いつも休憩している木の麓から、隠していた何かを運んできた。
「今日からは、これを使おう」
シエロパパが持ってきたのは、木刀と……私が使っている戦斧と全く同じ形をした木斧だった。
「これはいったいどういう事?また軽い木刀に戻るの!?」
「正確には木刀では無いんだけれど、これはただの木で作った武器では無いんだ。ほら、この木斧を持ってみてごらん」
シエロパパは、私の戦斧とほとんど大きさが変わらないその木斧を渡してきた。
私は怪訝に思いながらそれを受け取った。
「えっ……!」
ズシッ。
その木斧は、見た目に反して本物の戦斧と全く同じ、ズッシリとした重さがあったのだ。
「こ、これは?」
「これはね、ソルに頼み込んで縁で精製してもらった、本物の戦斧の重さと形状を有した特殊な木斧だよ。まぁ、ソルの縁が切れたら消えて無くなってしまうんだけどね」
「す、凄い。木なのにちゃんと本物の戦斧の重さがある。いつの間にこんなものを……?」
シエロパパは名前を出さなかったけれど、すぐに誰がこれを仕組んだのかが分かった。
「まだ餓鬼んちょのくせに、変に気を回してヒトの世話を焼く年齢離れしてるよ全く......」
(シエロだ!私が怪我を治さないほど思い詰めている事を気にかけて……あっ、シエロのくせに本当に生意気なのよ!)
「これなら、互いに斬り落とす心配も気にせず、本気で手合わせ出来るんじゃないかなってね」
私はその木斧を軽く一振りし、重さを確かめるように素振りを行った。
「勿論よ!これで、シエロパパも私に容赦なく本気でこれるって訳ね!」
「そう言う事だ。因みに、木だからって当たっても痛くないわけじゃないぞ。ちゃんと防御しないと、骨が折れて簡単にやられてしまうからね」
「シエロパパこそ、痛いのは嫌だって言ってたけど……今頃泣いて謝っても、止める気は無いんだからね!」
そうして、私はシエロパパの本当の最終課題を再開した。
私たちに合わせるかのように、自然と風がなびき、森の辺りが静かになった。
セリナは木斧を構え、初手から猛烈な攻撃を仕掛けようと踏み込む。
「!?」
だが、セリナよりも先にルキウスが動いた。
これまでとは打って変わった、本気の踏み込み。
圧倒的に速い動きと、殺意すら感じる切れのある太刀筋。
セリナはその初撃をバックステップしながら、木斧で必死に受け流していく。
ルキウスは息をつく間も与えず、すかさず剣を振るう。
それを受け流すセリナだが、一度大きく木斧を使って攻撃を跳ね返し、そのままカウンターを狙いに出た。
だが、重い木斧を大きく振り払った以上、セリナの胴には一瞬の致命的な隙が産まれる。
百戦錬磨のルキウスがそれを見逃すはずがなく、木刀を素早く持ち直し、セリナの胴に容赦なく一発叩き込む。
バチィィィィィンッ!!
「うっ……!」
セリナは大きくダメージを受けたが、木斧を咄嗟に地面に突きたててストッパーにし、大きく吹き飛ばされることだけは避けた。
木刀とはいえ、熟練の冒険者のまともに食らった一撃は、セリナの身体に確実に深いダメージを与えていた。
それでも、セリナは止まることは無かった。
むしろ、痛みで脳が覚醒したかのように、一段とスピードが上がる。
ルキウスが剣を引いて構えなおすよりも早く、すでにセリナは深く踏み込み、ルキウスの腰目掛けて木斧を振りかざす。
咄嗟に土の壁を生成して、それを防ぐルキウス。
それでもセリナの勢いは止まらない。
身体強化系の魔術を使用しなくても、強制的に自身の速度を爆発的に上げる術が、彼女には一つだけある。
セリナは自身の突進の速度を殺さず、そのまま前へと進みつつ、空いた片手で魔術を発動させた。
「『風の一吹き』!!」
シエロも良く使う風の初級魔術を自身の背中に当てて、強制的に加速する強引な応用技。
セリナ自身も実戦では初の試みだったが、完璧に発動する。
瞬間的に加速したセリナに対し、まだ土の壁の後ろで体勢を整え切れていないルキウスは、もう一度剣ではなく魔術を発動しようと、右手を地面へと向けた。
(また来る!土の壁ね!)
セリナはルキウスの行動を予測し、壁を越える為に高く飛び上がる。
「『水の玉』!」
ルキウスが放ったのは壁ではなかった。
彼は上空のセリナに向けて『水の玉』を放った。
(土の壁じゃない!私の行動を完全に察して、対空の『水の玉』に変えた!?)
決して強い魔術でもないし、攻撃力もほとんどない。
だが、勢いよく上へと飛び上がってしまったセリナにとっては、空中で回避する術はなく、自らその水の弾丸へと当たりに行ってしまう形になる。
ビシャッ!
セリナの顔面に水の玉が直撃する。
視界が完全に奪われ、顔にかかった水をすぐに振り払うが……風魔術で勢いよく加速したセリナの身体は空中で止まることが出来ず、視界が戻った時には、目の前には完全に体勢を整えたルキウスが、冷酷に木刀を構えて待ち受けていた。
(クソッ……!)
無慈悲な木刀がセリナの無防備な背中に叩き打ち付けられ、そのまま地面に勢いよくぶつかって転がり落ちる。
それが、少し前までのセリナだった。
「『風の一吹き』!」
セリナは叩き落とされる寸前、地面に向けて『風の一吹き』を放ち、その反動の風圧を利用して痛みに耐えながらも見事に両足で着地してみせた。
その想定外の粘りに対し、ルキウスは目を見開き驚愕した。
「嘘だろ……」
既に全身ボロボロのセリナだが、もはや痛みを感じていないのか、彼女の瞳はルキウスの目を一点に見つめ、過集中のゾーンへと入っていた。
地面を蹴り上げ、木斧の広い面を前に突き出すようにして一気に距離を詰める。
それを見たルキウスは、セリナが自分の攻撃を防いでからカウンターをしてくると読み、あえてギリギリまで仕掛けず、彼女が近づいた瞬間に素早く攻撃を叩き込もうと剣を引いた。
だが、セリナの狙いは違った。
木斧の広い面で自分の手元を隠し、火の玉を密かに生成。
ルキウスの剣が届かないギリギリの位置から、不意打ちで発射したのだ。
「カウンター狙いではなく、それを至近距離で放つ為の構えだったか……!」
放たれた火の玉に対し、ルキウスはそのまま食らうか、剣で強引に振り払うしか選択肢は無かった。
無論、後者を選ぶ。
しかし、今のセリナは過集中状態にある為、自然と先ほどよりもさらにスピードが跳ね上がっていた。
ルキウスが火の玉を木刀で振り払い終わったその瞬間、すでにセリナの重い木斧は、ルキウスの無防備な腹を完璧に捉えていた。
「オリャァァァァッ!!」
バッゴォォォォォォォォンッ!!!
凄まじく鈍い、重低音のような音が響き渡り、ルキウスの巨体が後方へと大きく吹き飛ばされた。
「グハァッ……!」
ルキウスはそのまま地面に倒れ伏せ、痛みに悶えながら降参の白旗を上げた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……。やった……やったわ!」
私は遂に、シエロパパに完璧な一撃を入れることができた。
嬉しさのあまりに、大きくその場で飛び跳ねようとしたが……気が抜けたと同時に、これまで蓄積していた全身の激しい痛みが一気に押し寄せてきた。
「うぅ……あああああっ!」
私もそのまま、糸が切れたようにその場で崩れ落ち、倒れ込んでしまった。
だけど、これでシエロパパの最終課題を終えることが出来たのだ。




