第四十三話 兄弟の連携
セレスティア様の地獄の特訓は、毎日休みなく続いた。
毎度、一日のメニューが終わる度に「もう辞めたい」「逃げ出したい」と本気で泣きたくなるほど、それはしんどいものだった。
特訓が始まってから、早くも二週間が経過した。
あの理不尽な山の中のランニングには、気が付けば徐々に慣れてきていた。
純粋に体力が付いたからなのか、それとも縁の扱いが上手くなって肉体へのフィードバックが効率化されたからなのか。
初めて走った時のあの肺が破れそうな圧倒的なしんどさは、確実に薄れていた。
多分、両方向上しているのだと思うが、恐らく前者の基礎体力が付いたという要因の方が大きいだろう。
それは僕だけではなく、セリナや兄も同じ傾向にあった。
ただ父だけは、良い意味で初日と何も変化がないように見えた。
(父の体力は本当にどうなっているんだ……)
そして、午後からのセレスティア様との戦闘訓練と言うと。
「『風斬』!」
(どうだ!?)
「まだまだ。縁の扱いが雑だ」
バコォッ!
セレスティア様の容赦のない拳が、僕の鳩尾にクリティカルヒットする。
「ぼぉえぇ……ッ」
二週間が経っても尚、セレスティア様に一撃を入れることすら出来ず、こうして毎日一方的にボコボコにされているだけだった。
それは兄もセリナも同じで、三人で死に物狂いの全力で挑んでいるのにもかかわらず、セレスティア様に汗一滴かかせることすら出来ていなかった。
「縁が体外へ飛び出さないことを意識し過ぎるあまり、逆に縁を練る力そのものが弱くなっている」
頭では分かっていた。
薄皮一枚に留めようとすれば出力が落ち、出力を上げようとすれば縁が漏れる。
理想のイメージに身体が付いてこないのだ。
(もっとこう、何か明確なコツを掴めれば良いんだけど……)
僕の隣で、セリナも泥だらけになって大の字で倒れ込んでいた。
「ねぇ、シエロ。この特訓、本当にいつか終われるのかしら?」
「今の所、そんな希望に満ちた未来は全く見えませんね……」
「私……シエロと違って、無詠唱魔術なんて初級の簡単なものしかできないから、ずっと戦斧一本で戦ってきたんだけどさ。セレスティア様や、あの時のイザトラみたいに強者と戦っていくなら、このままの戦い方じゃ多分駄目なんじゃないのかなって……最近、思ってるの」
セリナは空を見上げながら、どこか不安を押し殺すような、思い詰めた表情をしていた。
いつも強気な彼女には、彼女なりに深く悩んでいる事があるのだと思う。
だけど、正直言って僕は全くそうは思わなかった。
「駄目なんかじゃ無いと思いますよ!僕は、セリナみたいに危険な最前線で真正面から戦えることを、心から凄いと思っています。むしろ、セリナが前衛で体を張ってくれないと、僕の魔術をセレスティア様に当てる隙を作ることなんて絶対に無理だと思っていますから」
「でも、実際は強者と対峙した時にいつも状況を打破して相手を押しているのは、強力な魔術を使えるシエロじゃないの。イザトラの時だって……」
セリナの指先が、悔しさを滲ませるように固い地面をギュッと掴んだ。
「良いですか、セリナ。僕はセリナみたいに最前線で戦える勇気と力があることを、本当に尊敬しているんです!だから……セリナが居ないと、セレスティア様に一発入れることなんて不可能です」
これはただセリナを慰めたり励ましたりする為だけの言葉ではない。
僕自身が、これまでの戦いを通して本当に思っている紛れもない本心だ。
「ま、まぁ……それでも、魔術をもっと多用しながら接近戦も器用にこなせたら、それに越したことは無いんですが……」
「シエロの言う通り、そんなに落ち込むことは無いと思うよ」
「お兄様!」
僕達の真剣な話が聞こえていたのか、兄が身体はボロボロだが爽やかな笑顔で歩み寄ってきた。
「実際に最前線で武器を振るいながら戦うってなると、中々高度な属性魔術を同時に使う事は難しいかもしれない。だけど、『火の玉』とか『水の玉』の様な、発動の早い簡単な魔術をフェイントや牽制に組み合わせるだけでも、戦いの幅は大きく広がると思うよ」
「簡単な魔術の組み合わせ……」
「それに、自分は魔術が使えないとか言っているけれど、セリナちゃんの物体を大きくするのだって、立派で強力な魔術じゃない?」
兄の優しく的確な言葉に、セリナは手に込めていた力がフッと抜け、憑き物が落ちたように少し安心した表情を見せた。
それにしても、僕がせっかくセリナに良い言葉をかけていたのに、後から来た兄に一番美味しいところを全部持っていかれたようで、なんだかすごく悔しかった。
「ま、まぁ!明日も私が一番危険な前線に立ってあげるんだから、二人は後ろからちゃんと私をカバーしなさいよ!」
セリナは照れ隠しのようにそう言って立ち上がると、パンパンと土を払い、アジトの方へ向かって歩いて行った。
「それじゃあ、俺たちも帰るか。シエロ」
そう言って、兄は大の字で寝転がっている僕に爽やかに手を差し伸べてくれたが、僕はさっきのやり取りで何となくムカついていたので、その手を取らずに意地を張って自分で起き上がった。
「お、お兄様こそ、明日僕の足を引っ張らないでくださいよ?」
「フン……そうか。もしやお前、セリナちゃんの事を上手く慰めようとしたところを俺に良いところを奪われて、嫉妬して悔しいんだな?」
兄が図星を突くようにニヤリと笑いながら物を言ってくる感じが、また最高にうざかった。
「な、何を言っているんですかお兄様は!僕がお兄様に悔しがる?そんなわけないでしょうが!」
「何だシエロ?図星を突かれて、急に声を大きくして動揺しているのか?」
「動揺なんてしてませんよ!何ですか!?なんなら今ここで、お兄様に一発お見舞いしてやっても良いんですよ!?」
「ほう。いつからそんなに偉そうな口を叩けるようになったんだ?」
そうして、僕と兄は疲労困憊のはずなのに、そのまま空き地でムキになって魔術の撃ち合い(という名の兄弟の格付け決定戦)を始めてしまった。
そんな僕たちの子供じみた喧嘩の様子を遠くからずっと眺めていたセレスティア様は、馬鹿な奴らだとばかりに呆れたように鼻で笑い、静かにアジトへと帰って行った。
次の日の朝。
いつもの様に、午前中は過酷な基礎体力を鍛えるメニューをこなした。
それが終わると、お昼を食べる為に一度アジトへ帰還する。
お昼ご飯と夜ご飯はいつも、母様と……初日以来セレスティア様の特訓に一切姿を見せなくなったフィオナさんが作ってくれている。
「わー!今日は凄く大きなお肉ですね!」
テーブルの中央にドンと置かれたその肉は、香ばしい香りを漂わせ、食欲をそそる黄金色に輝いていた。
「この肉はなんの肉なの!?」
セリナも椅子の上に立ち上がりそうな勢いで、お肉に釘付けだった。
そんな僕たちを見て、母様は優しく微笑んで答えてくれた。
「これはね、エルダーディアって言って、角が長くて立派な鹿のお肉よ。ベンジャンさんが持ってきてくれたの」
「えっ、ベンジャンさんがですか!?」
「そうよ。シエロ達が特訓に出ている間に、ベンジャンさんがひょっこり戻ってきて、肩に担いでいたの」
(まさか、ベンジャンさんって一人で狩りに出ていたのか?)
「それで、ベンジャンさんは何処へ行かれたのですか?」
母様は頬に手を当てて、少し天井を見上げた。
「それが、分からないのよね。『ご一緒にお昼を食べませんか?』って聞いたんだけど、『少しやることがある』って言って、またすぐにここから姿を消してしまったの」
「そ、そうですか」
ベンジャンさんは一体何処で何をしているのか。
それは、ここに居る誰も把握していなかった。
セレスティア様だけは知っているのだろうか。
「ねぇ!もう私、我慢できないわ!早くこの肉食べても良い!?」
「そうね。冷めないうちに食べましょうか!」
僕達は全員席に着き、豪華な昼ご飯を食べ始めた。
「はぁ……。疲れだぁ〜……」
すると、空間が歪んでワープゲートが開き、そこから魂が抜けかけたように疲れ果てているユーノさんが現れた。
そんなユーノさんに、フィオナさんが声をかけた。
「あら、ユーノ。随分とお疲れのようね……」
「フィオナ姉さん〜!ちょっと聞いてよ〜!セレスティア様、めちゃくちゃこだわりが強くてさ〜!」
「そ、そうなのね……。訓練所の作成に、かなり手がかかっているみたいね……」
フィオナさんは、ユーノさんの後ろの方をチラチラと気にしながら、少し顔を引きつらせて答えていた。
「いや、基本の構造は大体もう出来てるんだよ!?でもさ、『壁の模様が気に入らん』だったり、『ここにはこういう装飾が欲しい』みたいな?もう無茶振りが凄くて!それがなければ、三日でとっくに終わってたのにっ!」
その時。
セレスティア様がフォークでエルダーディアの肉をブスッと突き刺しながら、低く冷酷な声をユーノさんの背中へとなぞるように放った。
「私の提案する意見が、めんどくさい。貴様はそう言っているのか?」
その地獄からの声を聞いた瞬間、ユーノさんはビクッと身体を震わせ、ギギギ……と油の切れた機械のようにゆっくりと後ろを振り返った。
「げっ!セ、セレスティア様……!?い、居たなら言ってくださいよぉ〜!」
ユーノさんは無理やり明るい声を発したが、その顔は全く笑っていなかった。
セレスティア様もまた、ユーノさんを煽るように極上の冷たい笑みを浮かべた。
「昼はいつも一緒にこの席で食べているが……よっぽど、この私の存在が貴様の目には見えていなかったようだな」
「い、いや!俺は決してそんな事は……!」
「まずは昼を食べてから、後でゆっくりと面談をしようか」
ユーノさんはヒッと短い悲鳴を上げ、フィオナさんの背後に隠れてガタガタと怯えていた。
そんなこんなでみんなで昼ご飯を賑やかに食べ、午後からの特訓に向かった。
(セレスティア様によるユーノさんへの面談という名の拷問によって、いつもより少しだけ遅く特訓が始まったのは言うまでもない)
いつものように森へ向かうと、なぜかセリナの姿が見当たらなかった。
「あれ?お兄様、セリナを見かけませんでしたか?」
「いや?ここに来るまで見かけていないな。先に向かったのかと思ったが……」
「そうですか」
(何処に行ったんだろう?さっきまであんなに元気にご飯を食べていたのに。お肉を食べ過ぎて詰まらせたとかか?)
「では、午後の特訓を始める」
森の更地に到着すると、セレスティア様はすでにいつもの定位置に立っていた。
「セレスティア様。セリナがまだ来ていません」
「あの小娘は、本日から少しの間、別メニューを実施することになった」
「別メニューですか?」
「そうだ。だからしばらくの間は、お前たち二人だけだ」
(げっ!昨日あんなに『私が前衛で戦うから後ろは任せた!』とかドヤ顔で言ってたのに……!)
「シエロ。しばらくは二人で頑張ろうか。俺が前衛に立って隙を作るから、シエロは後ろから援護してくれ」
「わ、分かりました、お兄様」
そこからは、セレスティア様による圧倒的な蹂躙だった。
セリナが居ない分、僕もいつもより前に出て前衛の兄を援護しつつ、縁の練りを意識しながらセレスティア様に一撃を入れようと試みる。
だが、セレスティア様にはかすり傷一つ、一発の攻撃すら当てることは出来なかった。
「はぁっ、はぁっ……シエロ!普通に攻撃を繰り返しているだけでは今までと同じだ。俺たちは成長しなければいけない。俺がとにかく時間を稼ぐ。シエロはその後ろで縁を練り、とにかくデカい一撃を叩き込むんだ!」
「はい、お兄様!」
兄はそう言うと短く呼吸を整え、直ぐに前線へと飛び出していった。
僕は今までセレスティア様に言われてきたことを意識しながら、深く縁を練り始める。
「ほう。貴様が時間を稼いで、シエロに一撃を撃たせる気か?だが、それは貴様が私の攻撃に持ちこたえられる前提の話じゃないのか?」
「その為に、俺が今ここに居る」
「そうか。ならば、やってみろ」
セレスティア様の純粋な拳が兄を襲う。
兄は即座に指輪の魔道具を光らせ、巨大な金属の盾を生成する。
バゴォォォォンッ!!
しかし、盾は紙屑のように木っ端みじんになった。
「はっはっはっ!貴様の魔術……いや、その指についている魔道具は実に便利な代物だな。縁さえ切れなければどんな物質でも生成が出来てしまう。ほとんど無詠唱魔術と変わらないな」
直ぐに兄は巨大な岩を生成し、セレスティア様にぶつけようとするが、それも呆気なくセレスティア様によって粉砕されてしまう。
「だが、貴様はその魔道具の便利さに頼り過ぎている」
セレスティア様は無慈悲に兄を蹴り飛ばした。
「お兄様!?」
だが、兄は直ぐに起き上がり、痛みに耐えてすぐに前線へ戻る。
「シエロ、気にするな!今は一撃を入れる事だけを考えろ!」
「お、お兄様……!」
身体を張る兄の姿を見て、僕は極限まで集中した。
兄が命懸けで時間を稼いでくれている分、絶対にそれに答えなければ。
すぐに兄の反撃が始まった。
岩や氷塊などを連続で生成し、一気にぶつける。
だが、やはり同じようにセレスティア様には届かず、空中で壊されてしまう。
「貴様は魔道具を使用しているだけで、純粋な魔術を利用していない。それではいつまでたっても、底辺の中で王冠を被っているだけにすぎないぞ」
「確かに、俺は魔道具に頼っているかもしれません。ですが、これはどうでしょうか!」
兄はそう言うと、まず魔道具の力で氷の短剣を複数生成した。
「また同じことをするわけは無いと思うが、貴様の目的はあくまでシエロの時間稼ぎだ。……だったら私は、直接狙わせてもらう」
セレスティア様は兄を無視し、一気に僕の方へ向かって一直線に踏み込んできた。
僕はとっさに、今練っている途中の縁で未完成の魔術を放つべきか迷った。
(あと少しで感覚的に十分に練り上げることができる!でも、セレスティア様が来る!兄はまだ前に居る……どうする!?)
すると、先ほど生成された氷の短剣が、セレスティア様を追従して背後から襲い掛かった。
それを難なく弾き落として対処するセレスティア様だが……。
「凍気よ、収束し、鋭を為せ。『氷針』!」
なんと、魔道具で生成された物理的な氷の短剣と、兄自身の詠唱による魔術の氷の短剣が、時間差で交互に襲い掛かったのだ。
たまらず、セレスティア様も兄の魔術を払い落とす事にほんの一瞬だけ縛られる。
「ほう。魔道具と魔術での二段追撃で、この私の動きを止めるか。だが、この程度では私に一撃は入れられんぞ!」
「俺が一撃を入れる必要は、ありません」
その言葉を聞いたセレスティア様は、直ぐに僕の方へと視線をやった。
僕の縁の練りは、すでに完了していた。
セレスティア様が僕を潰すために自ら近づいてきてくれたことにより、至近距離で最大火力の一撃を放つことができる絶好のチャンスが生まれていた。
「セレスティア様、今度こそ、貰いましたよ!断絶!」
超近距離からの一撃。
直撃しても、セレスティア様なら絶対にどうにかなるだろうと思い、今の僕の最大火力である断絶を選んだ。
そして魔術を放つその瞬間、僕の身体の周囲に、あの時と同じ橙色の稲妻が激しくバチバチと出現した。
「悪くないな」
セレスティア様は短く一言放ち、僕の渾身の魔術を正面から受け止めた。
ドォォォォォォォォォンッ!!!!!
森全体を揺らすような大きな爆音と共に、凄まじい砂埃が舞い上がった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……。ど、どうでしょうか……?」
僕と兄は、息を荒げながら砂埃が晴れるのをじっと待っていた。
二人にとって、この特訓が始まって以来の、一番手ごたえだった。
「フハハハハッ!これはこれは、かなり驚かされたぞ!」
普段聞かないほどの愉快そうなセレスティア様の笑い声と共に、砂煙の中から姿を現したのは、剣を抜き放ち僕の斬撃を受け止めていた無傷のセレスティア様だった。
(ま、まさか……あの距離からの僕の最大の一撃を防ぎ切ったのか!?)
直後、セレスティア様は目にも留まらぬ速さで距離を詰め、満身創痍の僕達のお腹に容赦なく一発ずつ拳を入れ、本日の特訓は強制終了となった。
「まさか、こんなに早くもう私に剣を抜かせるとは思わなかったぞ。まだまだ時間がかかると思っていたが……シエロ。貴様、先ほどの縁の練りは非常に良かったぞ」
僕と兄は地面に倒れこみ、セレスティア様の言葉を聞くことしかできなかったが、あの彼女から真っ直ぐに褒められたことに対しては、心の底から嬉しかった。
「まだ、魔術を放つ瞬間に縁を完全に押さえ切れていない部分はあるが、この調子だと、以前より遥かに強くなるかもしれん。それに、シエロの兄も悪くない。縁の練りはまだ相変わらずだが、私の挑発に対してムキにならず、すぐに魔道具と魔術の応用を冷静に組み上げる器用さは評価に値する」
結局、僕達はセレスティア様に一撃を入れることは出来なかったけれど、確かな成長の手応えを掴んでいた。
それから。毎日、毎日血を吐くような特訓を行い、あっという間に半年が経過していた。
季節は巡り、月は十月。
未だに午後の特訓にセリナは居ないけれど、僕と兄は必死に特訓に取り組んでいた。
午前中のランニングや基礎体力作りにはセリナも参加しているので、午後は何しているのかと聞いても、『秘密よ!今いいところなんだから!』なんて言っていつもはぐらかされていた。
そして、本日午後からの特訓。
僕達はもう、あの森の更地には居なかった。
コンクリートに樹脂を組み込んだ、極めて強度の高い特殊な素材で出来た広大な室内空間で行っていた。
「シエロ!」
「はい!お兄様!」
カキィィィィンッ!!
「ふむ。今日も私の勝ちだな」
ドォォォォォォォォンッ!!
「ああっ、駄目か……」
「お兄様のさっきの陽動作戦も悪くなかったですけど、やっぱりもっと縁の扱いを上手くして、魔術の精度と威力を上げないとですね」
僕達が壁まで吹き飛ばされ、激突してひび割れた外壁は、しばらくするとウネウネと動き出し、徐々に自動で修復されていく。
「それにしても、ユーノさんが作ったこの訓練所は本当に凄いですね」
「そうだな。ずっとセレスティア様に横から細かくダメ出しされながら作ってたしな……」
そう。ユーノさんはセレスティア様の尋常ではないこだわりを全て反映させ、少し前にこの完璧な訓練所を完成させていた。
壊れた床や外壁は、自動で完全に修復するシステムになっている。
勿論、その修復のエネルギーにはユーノさんの縁を直接使用する為、ユーノさんの元には、ベンジャンさんの伝手で手に入れた縁の回復ポーションが大量にストックされている。
ユーノさん自身は訓練所を完成させた後、今まで溜まっていたありとあらゆる何かを発散するために「しばらく出かけてくる!」と言い残し、どこかへ遊びに行ってしまっている。
「ほら!もっと重心を低くして!勢いに任せるんじゃなくて、体重の移動と身体の動線に流れを作るのよ!」
「テリャァァァッ!!」
カァァァァンッ!!
木刀同士が激しくぶつかり合う快音が響く。




