113話 守るための奇抜な作戦
私は、影分身。
今はそのことで悲しい気持ちにはならなくなった。
友だち振り回して振り回されて、国王を押し付けたり人参を押し付けたり(あまりの速さでカドマツは気付いてない)。
「レイニーお使い行ってきて」
「私が?」
「ちょっと今日はドリの王女が視察にくるし……レイニーなら分かるかもと思って」
紙に書かれていたのは故人の名前。大昔に死んだ異世界転生者。ちなみにノアではない。
ドレミドというあまり目立たなかったらしい人。
私は、というかレイニーではよく知らない。
何故なら#レイニー__・__#が異世界転生者になったときは既に亡くなっていたのだ。
「え?……とっくの昔に亡くなっているハズですよ」
「遺体も見たことねぇ?」
「そうですね、墓も知りません」
「ニカナの城のどこかにあるらしい」
ニカナの国王、ホンイツさんは死体を人形にするスキル使い。
確かにそれならば辻褄が合います。
見たことはあっても名前を知らないだけ、という可能性は十分にありえますね。
「ホンイツさんに作られた〈ドール〉を探しているのですか?」
「それは分からねぇ、〈ドール〉にしてないかも」
「探して何になるのですか?」
「お前たちが俺を世界に召喚しただろ?」
「そうですね」
「他の例を確認したんだ」
そういえば滅多に聞かないですね、私たちの他に日本からこの世界へ召喚した話。
私たちの前にも数人はいたような気はしますが数百年前です。
近頃の記憶すらもゆらいでいる時がある。過去のことはもう覚えていないことが多いですね。
「私たちの他――やはり思い出せませんね」
「ホンイツが、異世界転生者として選んだのがドレミドらしい」
「へぇ」
「こいつのスキル、覚えてる?」
「……地味で目立たないかただった、ということは知っています」
「どうしてもドレミドのスキルが欲しい、スキルカードでもいい」
「死んでいるともうスキルカードは作れませんよ?」
「ちょっとカード作ってみてくれ」
「【スキル:水 カードクリエイト】」
水のスキルカードが手の中に完成した。
「要ります? 今なら私が18禁になっている姿が見えても問題ないかと」
「分身のレイニーで作れるなら死体もスキル使える可能性あるだろ」
確かに【スキルカード:ドール】で死体を喋らせてみれば使えるかも?
「私はスキルさえも覚えていないのですが……どんなスキルなのでしょうか?」
「【【スキル:クリア】」
「くりあ?」
「敵から隠れるスキルで最も優秀とされたスキル、情報屋から買った」
一緒に行くと決めた、でもカドマツ様の弱さはよく知っている。
心は私よりもずっとずっと#強い__・__#けれど身体がそうはいかない。
隣で死なれたら嫌だ、それだけは確かなことなのでおつかいに行くことに。
「【スキルカード:テレポーター】」
ニカナの城では現・国王のワンズが出迎えた。
嫌われているので顔が渋そうに変化する。
でもの隣に手足が食べられて蠢いている目的の相手さえどうにかできれば――。
「げっ、帰ってくれる?」
「すみません、そこのオヤツと話がありまして」
「あらレイニーちゃん、お話なら私ともしませんか?」
ラミィさんの一言でワンズの態度が変わった。
「どうぞ応接室をお使い下さい」
「いいのですか?」
「僕ちんはママの味方をする、何が何でもする、だからママンが話したいなら協力はおしまないよ」
私も似たような理由でここを訪ねたので人のことを言えませんね。
育ての親と、#友だち__・__#という違いはありますけど。
「こちらへどうぞ」
応接室は机とテーブルぐらいの質素な部屋。
窓もなく、何だか少し息がつまる。
酸素が薄いようだがその程度では苦しくない。
「ワンズ、お客様にお茶とケーキを持ってきてくれますか?」
「勿論だよママン!! 今すぐ!!」
出されたものを食べてみる、毒は感じない。
生地やクリームが虹色だったことをのぞいて特に気なることもないケーキ。
お茶にも毒は入ってない。
「それでホンイツ様にはどういったご用件でしょうか?」
「おつかいなので私も詳しくは知りませんが――ドレミド、という異世界転生者について調べています」
知っている反応は顔を見れば分かる。
驚いた、ということは少なくとも何かかかわってはいる。
やっぱりドールでしょうかね?
「ドレミド様ですか」
「誰それ?」
「……知らない」
ホンイツの知らないは嘘ですね。
これはこれは、少々この#おつかい__・__#は厄介なことになりそうですね。
はぐらかされた。明確に嘘をついている。理由は何にせよ遺体に何か秘密がある?
痛みがない身体ではなくとも拷問は効く気がしない。
手も足も生きたまま喰われているのに逃げる様子もない――
「もうお亡くなりになっている異世界転生者様のハズですが」
「ラミィさんは何か覚えていらっしゃるのですね」
「……ホンイツ様の#姉__・__#かと」
「姉? 女性だったのですね」
性別など、どちらでも構わないがこの世界でドレミドと聞くと男にありがちな名前。
だから男性かと勘違いしていた。
女性――え、姉?
「はい、ですが遺体の行方までは存じ上げておりませんので」
「なぜ姉だと知っていたのでしょうか?」
「姉さんと呼ぶホンイツ様を見たことがありまして」
件のホンイツは手も足もないような状態で目だけ閉じていた。
「――僕は口を割らないし、何をされても割らない」
「ではスキルカードをください」
「スキルカード?」
「ドールのスキルカード、カドマツ様がトイレに流してしまったので」
「なんで」
「顔が便器になって紙を流そうとして間違えたそうです」
「……なんで?」
事実です。
「とりあえずスキルカードを下さい、この願いすら叶えられないほどあなたが私にした仕打ちは安くないですよ」
「まぁ、それぐらいで許しを#請__こ__#おうなんて思わないけども。【スキル:ドール カードクリエイト】 ほら」
我ながらどうかと思う作戦ですが、かかるものですね。
「【スキルカード:共感者】」
「――!?」
嘘は言ってないですよ、スキルカードを使うとは言ってませんが。
過去のできごとが映されるこのカード。
騙すぐらいに許していない、いや、何としてでもカドマツ様を生かしたいが正解ですね。
このスキルカードは心を許されていなければ発動できない。
成功するぐらい、には私は#でき__・__#がよかったのでしょうね。




